ガザの死者数 5万5千人超える
2025/06/11 (水曜日)
ガザの死者数、5万5千人超える 食料配給拠点の周辺で攻撃相次ぐ
2025年6月11日、ガザ地区を管轄するパレスチナ保健省は、20カ月に及ぶイスラエル・ハマス紛争による死者数が5万5千人を超えたと発表しました(出典:AP)。同日には、米国支援の人道援助拠点周辺で多数の民間人が銃撃や空爆に巻き込まれ、死傷者が急増。飢餓寸前の市民が支援を求める食料配給所近辺での攻撃が相次ぎ、「飢えた命を狙う兵火」と非難が高まっています(出典:ロイター)。本稿では、最新状況の詳細と、その背景にある歴史、国際人道法の視点からの論点、世界の支援体制、今後の展望を解説します。
ハマスによる2023年10月7日の攻撃をきっかけに始まった紛争は、イスラエル側の大規模空爆・砲撃、入植地周辺からの地上戦を伴い、ガザ全域を焦土化しました。4月の国連決議にも関わらず戦闘は止まず、最大多数の犠牲者を出す結果となりました。特に6月上旬からは、USe支援の人道組織「ガザ人道財団(GHF)」が運営する配給拠点で連日銃撃や砲撃が発生、6月10日には少なくとも41人の死者が確認されました(出典:ロイター)。
5万5千人超の死者には民間人が半数以上を占め、女性・子どもの割合が顕著です。2024年末から医療インフラは壊滅的打撃を受け、治療不能の負傷者が増加しました。国連報告書によれば、累計127,000人以上が負傷し、病院の7割が機能停止、救急搬送すら叶わないケースが多発しています(出典:AP)。
封鎖と輸送路寸断で食料・医薬品の流通が著しく制限され、食料価格は約400%上昇。国際赤十字は「ガザは世界最悪の人道危機」と警告し、2014年以降最大の飢餓リスクを指摘しています。配給所周辺での攻撃が続くため、市民は安全に食料を受け取れず、感染症や栄養失調も蔓延しています。
戦時における民間人保護はジュネーブ条約で定められ、攻撃対象から除外される「非戦闘員」に対する武力行使は厳禁です。国連人権理事会は6月初旬、国際刑事裁判所(ICC)への調査要請を決議。米国やEUも「配給所攻撃は許されない」と非難声明を発表しています。一方、イスラエルは「敵戦闘員隠匿の恐れ」を理由に砲撃継続を正当化し、法解釈を巡る対立が深刻です。
国連WFPや赤十字、NGO各団体は増援を試みるものの、空爆下での配給活動は困難を極めます。米国支援のGHFは2週間で163人の死者を出し、1,000人超の負傷者を記録。援助物資は「安全なルート」が保障されず、救援車列やドローン輸送、沿岸シーリフトなど多様な方法が模索されていますが、いずれも局地的進展に留まっています(出典:Reuters)。
過去20年で最大規模の都市封鎖・爆撃作戦は、2014年の同地区紛争や1990年代のバルカン紛争などがありますが、戦闘の長期化と封鎖の複合は未曾有です。これらでは「人道回廊」を巡る交渉が焦点となりましたが、現在は回廊自体が安全保障の争点化し、民間物資の通過がほぼ停止しています。
エジプトやカタールが仲介する停戦交渉は断続的に行われるものの、ハマスの拘束者解放やイスラエル軍撤退を巡る溝は埋まらず停滞。国際社会は「一時停戦」と「包括的解決策」を模索中ですが、双方指導部の国内支持基盤と選挙情勢が障害となり、合意時期は不透明です。
ガザ地区での5万5千人超の死者と配給所周辺の連続攻撃は、戦闘行為と人道援助の矛盾を浮き彫りにしています。国際人道法の遵守と物資輸送の安全確保を同時に達成するため、停戦交渉の突破口と多国間支援ルートの設置が急務です。国連や各国政府、支援団体は、ガザ市民の命を守るため、即時かつ持続的な人道支援体制の構築に全力を尽くす必要があります。
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