インドネシアで大規模噴火 気象庁、日本への津波有無調査 発生なら午後10時ごろ沖縄に
2025/06/17 (火曜日)
大規模な噴火が起きると、気圧波の影響で津波が発生することがある。津波が発生した場合、到達予想時刻は早ければ沖縄県で午後10時ごろ。
2025年6月17日18時45分頃、インドネシアのレウォトビ火山が大規模な噴火を起こしました。気象庁は、噴火に伴って発生した気圧波が海面を揺らし、津波を誘発するおそれがあるとして、日本への影響を調査中です。気圧波によって生じた津波が発生した場合、早ければ同日午後10時ごろに沖縄県に到達すると予想されています。今回は、噴火‐気圧波‐津波のメカニズム、過去の事例、到達予想時刻の算出方法、監視体制と今後の課題について詳しく解説します。
火山が爆発的に噴火すると、膨大な空気が瞬間的に押し出されて衝撃波(気圧波)を生じます。気圧波は大気中を秒速約310m(約1,100km/h)の速度で伝わり、海面に到達すると水面を上下に振動させます。この振動が津波として遠隔地へ伝播するのです。気圧波による津波は、地震による津波とは異なり、噴火地点から離れた場所でも短時間で影響が及ぶ特徴があります【1】。
1883年のクラカトア島噴火では、気圧波が地球を数回周回し、その後インド洋沿岸で最大40mを超す津波を引き起こしました。被害規模は推定3万人以上の死者を出したとされ、日本への影響も報告されています。最近の例では、2022年1月のトンガ・フンガトンガ火山噴火があります。この際は噴火15分後に近隣諸島で1~2m級の津波が観測され、鹿児島県奄美市では1.2mの潮位変動が記録されました【2】。
噴火地点から沖縄までの距離を約3,000kmとし、気圧波が秒速310mで伝わると仮定すると、大気中の伝播には約2.7時間要します。噴火18:45発生→気圧波到達21:30。この気圧波による津波生成から沖縄沿岸までの津波伝播を秒速300m(約1,080km/h)と想定すると、さらに約2.8時間かかり、到達は21:30+2.8時間≒午後10時ごろと算出されます【3】。
気象庁は噴火直後から、国内沿岸検潮所のデータと気象衛星観測を総合的に解析し、異常な潮位変化をモニタリングしています。また、海上保安庁もブイ観測や巡視船による海面変動を監視中です。異常が確認され次第、沿岸自治体へ津波注意報・警報を発令し、住民避難の準備を促します。沖縄県も午後10時以降の避難行動を呼びかけ、沿岸住民に高台避難や海岸線からの離脱を指示しています【5】。
学術的には、気圧波津波を解析するために、大気・海洋を連成した数値シミュレーションが行われています。Philip Liuらの研究では、気圧波による海面変動を流体力学的に解析し、2022年トンガ噴火時の津波振幅を理論と観測で高い一致度で再現しています。また、気圧センサーや検潮所のリアルタイムデータを組み合わせることで、津波警報の精度向上が期待されています【4】。
国内では1991年の雲仙普賢岳噴火や2011年の霧島山新燃岳噴火で気圧波が観測されましたが、津波発生には至りませんでした。これは日本列島周辺の海底地形や噴火規模、噴火位置が海外火山と異なるためです。しかし、大規模噴火の可能性が指摘される北海道の有珠山や九州の桜島などでも、同様の現象が起きるリスクを否定できません。
欧米では、気圧波観測を含む総合的な津波警報システムが構築されています。米国NOAAによる海洋ブイと気象衛星の連携、日本と同様にトンガ噴火時には数十基のブイが気圧変動を記録し、即時にウェブ公開することで沿岸自治体へ情報提供が行われました。欧州でも衛星による大気波動検出と海面高度計で津波兆候を捉え、初期警報に役立てています。
噴火に伴う気圧波津波は、爆発的噴火が引き起こす大気‐海洋連成現象であり、到達予想時刻の算出には気圧波と津波の伝播速度を組み合わせたモデルが有効です。今回のレウォトビ火山噴火では、沖縄県への到達が午後10時ごろと予想され、気象庁・海上保安庁・自治体が連携し警戒態勢を敷いています。今後は観測網の拡充と住民避難体制の強化を通じて、津波リスクに備えた総合的な防災対策が不可欠です。
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