マイクロソフト、営業職数千人削減か AI投資でコスト減、報道
2025/06/19 (木曜日)
事情に詳しい関係者の話として伝えた。削減対象は営業以外の部門も対象になる可能性があると説明し、発表時期は変更される可能性があるとした。
MSは5月、世界の従業員全体の約3%に当たる6千~7千人規模の人員削減をすると明らかにしたばかり。ブルームバーグによると、この際の削減は技術職などが対象で、営業といった顧客対応の職種は影響を受けていなかった。MSの従業員は2024年6月時点で約22万8千人、うち
2025年6月18日付で、マイクロソフト(MS)が世界規模で数千人の営業部門従業員を削減する検討に入ったことが報じられました。今回の人員削減は、先月発表した6,000~7,000人規模の技術職対象レイオフに続く第二弾で、AI(人工知能)関連への巨額投資を背景に、コスト構造の最適化を図る狙いがあります。米国商務長官の承認を要するわけではないものの、主要顧客対応力への影響やパートナー企業との関係維持が課題となりそうです。
ロイター通信は匿名の事情通を引用し、MSが営業・マーケティング部門中心に「数千人」の削減を検討していると報じました。削減時期は同社会計年度末(2025年6月末)以降とされ、発表時期や対象部門の範囲は今後変更される可能性があるとのことです。同社広報は公式コメントを差し控えていますが、先月実施した約6,000人の技術職削減が「AI強化に伴う組織の再構築」と説明されたのと同様、今回は「営業効率化」の一環とみられます。
MSは2025会計年度において、AIサービスを支えるデータセンターや研究開発へ800億ドル(約11兆円)を投じる計画を掲げています。増え続けるクラウド利用需要とAIモデルの運用コストを賄うため、人件費を含む固定費の抑制が喫緊の課題となり、営業組織のスリム化が検討されている模様です。Bloombergは、同社が中小法人向けソフトウェア販売の一部を外部パートナーに委託し、直接営業を減らす戦略転換も進めていると報じています。
MSは近年、大規模レイオフを繰り返しています。2023年1月には約10,000人の裁量的人員を削減し、2024年1,900人のゲーム部門削減、2025年5月に約6,000人の技術職削減を実施しました。今回の営業部門削減を加えると、2023年以降の累計削減人数は約2万を超え、ワークフォース全体の10%近くに相当します。こうした繰り返しのリストラは、同社の「組織のスリム化」と「高収益モデルへの転換」を示す一方、社員の士気や外部パートナーとの信頼関係に影を落とすリスクも指摘されています。
営業担当者は顧客関係の最前線に立ち、製品導入支援や契約更新を担う要となる人材です。数千人規模の削減は、特に中小企業やパートナー企業を通じたチャネル販売に影響を及ぼし得ます。パートナー企業からは「人的タッチが失われることで顧客満足度が低下し、長期契約につながりにくくなる」との懸念が上がっており、MSは代替手段としてAIチャットボットやオンラインサポート体制の強化で対応を図る模様です。
同様にAI導入を進める他の大手テック企業も、顧客対応の効率化を理由に営業部門を縮小する動きが見られます。AmazonやAlphabetも2025年に入り、営業・マーケティング系のチームリストラを発表。IT業界全体で「AIによる自動化で人員削減」というトレンドが加速しており、これに伴う雇用構造の変化に対し、米労働市場は高齢労働者や専門スキル労働者の再就職支援が課題となっています。
MSは今回の削減を通じて、AI投資の余地を財務的に確保すると同時に、営業効率を高めることで収益性を維持する狙いです。ただし、顧客離れやパートナー離脱を防ぐ手立てが今後の焦点となります。市場アナリストは「減らすだけでなく、新たな収益機会を生むAIソリューション営業へ人材を再配置することが成功の鍵」と指摘しており、営業職のスキル転換支援プログラムなどの実施が期待されます。
マイクロソフトの営業部門削減計画は、AI投資強化のためのコスト最適化と組織再編を象徴する事例です。しかし、営業部隊は顧客接点という無形の価値を生む重要部門でもあり、単なる人員削減ではなく、AI活用と人材の再配置による「高付加価値営業モデル」の構築が求められます。MSのみならず、テック業界全体が直面する「AI時代の人材戦略」をどうデザインするかが、次の成長の分かれ道と言えるでしょう。
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