サハリン2取引の許可延長 米財務省、12月まで 三井物産や三菱商事が参画
2025/06/19 (木曜日)
財務省は昨年11月、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁として、ガス大手ガスプロム系列のガスプロムバンクを含む複数の金融機関の取引を制限すると発表。一方で、ガスプロムバンクが資金決済に関わるサハリン2に関連する取引は、今年6月まで許可するとしていた。(共同)
財務省は2024年11月、ロシアによるウクライナ侵攻への追加制裁として、ガス大手ガスプロム系列のガスプロムバンクを含む複数のロシア金融機関との取引制限を発表しました。しかしガスプロムバンクが資金決済に関わるサハリン2プロジェクト関連の取引については、「日本のエネルギー安全保障を確保する」として2025年6月28日まで例外的に許可されています。本稿では、この制裁措置の背景と経緯、サハリン2における日本の燃料調達の実態、制裁とエネルギー需給のせめぎ合い、許可期限後の対応策などを多角的に解説します。
2022年2月のウクライナ侵攻以降、日米欧の対ロ制裁は段階的に強化されてきました。日本は2024年11月にガスプロムバンクを含む計7行のロシア銀行を制裁リストに追加し、それらとの新規取引を禁止。さらに米国も同時期にガスプロムバンクへの特別制裁を発表し、米金融システムを通じた決済を原則封鎖しました。これによりロシア政府系の資金調達網に重大な打撃を与えようとしています。
サハリン2はロシア極東サハリン島沖の大規模LNG(液化天然ガス)輸出プロジェクトで、日本企業が長期契約を持つ主要供給源です。日本のLNG輸入量の約5%を占め、冬季の電力需給や産業用燃料の安定供給に欠かせません。財務省は制裁一般免除総合許可(General License)により、ガスプロムバンクを介したサハリン2関連決済を2025年6月28日まで認めると明記しました。
大阪ガスやJERAは、ガスプロムバンクを経由せず決済スキームを構築するなど独自のリスク回避策を採用し、制裁前後もLNG調達に影響がないと公表しています。特にJERAはサハリン2から年間約200万トンのLNGを調達し、代替供給先の確保には時間を要するため、例外措置と合わせ綿密な決済手順を運用してきました。
例外措置が終了する6月29日以降、ガスプロムバンク経由の取引は全面禁止となります。日本企業は以下の選択肢を迫られています。
しかし、世界的なガス需給逼迫や長期契約の約定条件を考慮すると、直ちに安価で安定した代替ルートを確保するのは困難です。制裁とエネルギー安全保障のトレードオフが一層鮮明となります。
日本はG7の一員として対ロ制裁を主導しつつ、エネルギー安全保障を維持する難題に直面しています。米国や欧州各国は同様にサハリン2の例外期限を設定しており、制裁と例外措置を組み合わせた「スマート制裁」が今後のモデルとなり得ます。日本は同盟国との間で緊密な情報共有と市場調整を続け、エネルギー価格の急騰や供給不安を回避する努力が求められます。
ロシア制裁の追加としてガスプロムバンク取引規制を導入しつつ、サハリン2関連決済に例外を設けた日本の対応は、制裁の厳格化と国内エネルギー需給の安定維持を両立させる試みです。6月末以降は例外が消失し、本格的に代替ルート開拓と価格変動リスク管理が必須となります。制裁と供給安定のバランスをいかに保ち、国民生活と産業界を支えるかが、今後の日本外交とエネルギー政策の正念場です。
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