企業の奨学金代理返還 全国で拡大
2025/06/24 (火曜日)
企業の“奨学金代理返還”全国で10倍に拡大…新卒社員「決め手の一つになった」 “全社員”対象の企業も
2025年6月24日、西日本新聞は、企業が社員の奨学金返還を代行して支払う「奨学金代理返還制度」を導入する企業数が、2021年比で約10倍に拡大したと報じました。2021年には約20社だった導入企業は、2025年には約200社に達し、新卒採用の決め手とする例も増えています。(出典:西日本新聞2025年6月24日)
奨学金代理返還制度は、社員が日本学生支援機構(JASSO)などから借りた奨学金の返還金を、企業が本人に代わって直接JASSOに支払う仕組みです。返還残額の一部または全額を企業が負担することで、社員の経済的負担を軽減し、定着率向上や採用競争力の強化を図ります。
採用面接で「奨学金返還を支援するから安心して働ける」とアピールすると、 新卒応募者の選考辞退率が約15%減少した企業もあります。実際に「返還制度が入社の決め手になった」と語る新卒社員が多数を占め、採用広報の有力な武器となっています。
少子化による採用難や若年層の奨学金残高増加(平均約350万円)が相まって、経済的支援を条件に優秀学生を確保したい企業のニーズが急速に高まりました。加えて、デジタル人材や理工系人材の獲得競争が激化し、手厚い福利厚生が差別化要因となっています。
とくに首都圏企業では導入率が30%超に達し、関西圏でも20%前後と高い水準です。地方企業でも導入機運が高まり、従来の給与・賞与以外の「教育投資」という新たな切り口で人材獲得競争が進んでいます。
企業が奨学金返還を支援する費用は損金算入が認められ、給与課税対象外となる場合があります(法人税法上の寄付金・福利厚生費扱い)。この税制優遇により、年間数百万円の支援コストを抑制しつつ実行できる点も拡大を後押ししています。
日本学生支援機構(JASSO)の「奨学金返還支援(代理返還)制度」は、企業とJASSO間で返還管理を一元化。支援企業はJASSOへ直接送金し、返還者(社員)への手続きを簡素化できます。
米国では数千社が「学生ローン返済支援」を福利厚生に取り入れ、年間数十億ドル規模の市場に成長しています。欧州では「学費無償化」政策が先行する一方、ドイツやフランスの企業でも独自の返還支援を導入し始めています。日本の代理返還拡大は後追いながら、世界的トレンドへの対応とも言えます。
奨学金負担軽減により、社員は初期キャリアでの生活安定を図りやすくなり、短期離職率が平均5ポイント改善した企業もあります。住宅ローンや子育て費用への資金充当余力が生まれ、結果的にライフステージに合わせた定着・育児との両立が進んでいます。
「金融支援」は従来の教育研修や福利厚生と並ぶ第4の柱と位置付けられ、人事部門の予算配分でも重要度が急上昇。2026年度以降は、人材開発投資額全体の10%を奨学金支援に充てる企業計画も散見されます。
奨学金代理返還制度は、教育負担軽減と人材確保を両立させる新たな福利厚生として全国的に普及しつつあります。今後は企業間での成功事例共有や行政・業界団体の支援策強化により、持続可能な「人材への長期投資モデル」へと進化が期待されます。
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