海外マネー流入 路線価上昇の支え
2025/07/02 (水曜日)
雷門近くのビル、中国人が5億円で購入「金は捨ててもいい」 海外マネー押し上げる路線価 侵食
東京都台東区・浅草のシンボル「雷門」から徒歩数分の商業ビルが、海外投資家によって約5億円で買収された。売買成立時の路線価は周辺相場を大きく上回り、地価上昇要因として外国資本が大きくクローズアップされている。
2025年6月、浅草駅至近の4階建て商業ビル(延床面積約1,000㎡)が不動産業者を介して中国人実業家A氏に売却された。A氏は「日本の文化的価値を保全しつつ、テナント収益を重視する」とコメント。物件価格は約5億2千万円で、路線価評価額(1億8千万円)を2.9倍も上回った。
路線価は、各都市の基準路線(幹線道路沿い)に設定される公示地価の約80%を示す評価額で、相続税・贈与税の算定基準となる。国税庁が毎年公表し、地価動向の主要指標だが、実勢価格との乖離(かいり)が拡大しており、近年は特に都心部で実際の取引価格を下回るケースが増加している。
円安進行と中国国内の資本規制緩和を背景に、富裕層が東京不動産市場へシフト。特に浅草・銀座・赤坂など歴史的観光地や高級住宅地の一等地がターゲットとなり、日中間の資本移動が活発化している。A氏は「今後の賃料収益とキャピタルゲインを見込む」と投資目的を明かす。
海外マネーの流入は供給不足に拍車をかけ、地価・賃料とも高騰を招く。一方で、投資回収のため高額家賃設定が常態化し、地元企業や中小店舗は移転や廃業に追い込まれやすい。観光客向け短期賃貸や民泊事業が増え、地域の生活環境が変質するリスクも指摘される。
同様に外国資本の影響が大きいロンドンやパリ、ニューヨークでは、地価高騰を抑制するため高額外資規制・追加税導入などの措置が導入された。例えばロンドンは「空き家税」を課し、民泊規制を強化。パリでは外国人投資家向けに住宅購入時の追加手数料を設定し、不動産投機を抑制している。
浅草は東京23区内でも観光需要で安定した集客力を持つ反面、用地が限られるため土地の希少性が高い。近年は訪日客の回復を受けホテル開発が相次ぎ、周辺地価は5年で約30%上昇。路線価ベースでも、2025年は前年から約8%の伸びを示した。
地価高騰による地域コミュニティ解体を防ぐため、地方自治体は次の対応を検討している:
浅草・雷門近くのビル購入事例は、海外マネーが押し上げる地価上昇の象徴である。円安と中国富裕層の投資意欲が相まって投機的な取引が増大し、路線価と実勢価格の乖離が拡大。地元商店や住民の生活環境を守りつつ、持続可能な地域経済を実現するためには、行政が外資規制や地元優先の活用支援を一体的に進める必要がある。今後は国内外の成功例を参考に、バランスの取れた土地利用ルールの整備・運用が求められるだろう。
コメント:0 件
まだコメントはありません。