潮目変わった万博 黒字化に現実味
2025/06/08 (日曜日)
武井保之ライター, 編集者6/8(日) 7:10来場者数が伸び続ける大阪・関西万博の会場の様子(筆者撮影)大阪・関西万博の来場者数が5月に入ってから伸びている。その推移を見ると、GW以降は右肩上がりで伸び続け、SNSでは来場者によるポジティブな声が溢れている。開幕前から開幕直後の4月中こそネガティブな報道しかなかった万博だが、GWを境に潮目が変わった。ここ最近ではすっかり追い風に変わっている。
2025年5月以降、大阪・関西万博の来場者数が驚異的に伸び続けています。ゴールデンウィーク明けからは1日あたりの入場者が右肩上がりに増加し、4月中の開幕直後にはほとんど見られなかった好意的なSNS投稿も急増。開催前から開幕直後にかけては開催費用や施設の混雑状況、万博パビリオンの質をめぐるネガティブ報道が目立ちましたが、GWを境に状況は一変しました。本稿では、万博の歴史的意義や今回の開催概要を振り返りつつ、来場者数推移の背景、ポジティブな評判の要因、地域経済への影響、今後の課題と展望までを詳しく解説します。
万国博覧会は19世紀中頃のロンドン・クリスタルパレス博覧会(1851年)が嚆矢とされ、以後、技術革新や文化交流の象徴として世界各地で開催されてきました。日本では1970年に大阪万博が初めて開催され、7,641万人という当時として驚異的な入場者数を記録。高度経済成長期の日本の姿を世界に示し、「人類の進歩と調和」をテーマに最先端技術と建築の粋を集めたことが高く評価されました。
「いのち」がキーワードとなり、医療・健康、食・農業、エネルギー、都市開発、未来の交通など、SDGsに直結する最先端技術の実証展示が多彩に展開されています。
開幕前から会場アクセス(臨海エリアゆえの交通インフラ未整備)、施設建設コストの増大、チケット価格の高さへの批判が相次ぎました。4月に入ってからは初日の大混雑や人気パビリオンへの長蛇の列がSNSで拡散され、「炎天下で5時間待ち」「入場規制で入れなかった」といった苦情も多数投稿されました。これらがネガティブキャンペーンとして報じられ、開催自体への不安が広がっていたのが事実です。
ゴールデンウィーク明けの5月中旬以降、1日あたりの来場者数は開幕時のピークを上回る勢いで回復・増加。5月下旬には平日でも動員目標の8万人超が常態化し、6月初旬には10万人を突破する日も出現しました。この伸びを支えた要因として以下が挙げられます。
以下はSNS上で目立った好意的コメントの一例です。
万博成功の鍵は、初期段階で生じた問題点をいかに迅速に改善し、来場者体験をアップデートしたかにあります。運営側が来場データやSNSの投稿動向をリアルタイムで分析し、イベント投入や動線見直し、気象に合わせたプログラム編成を行ったことが大きな要素。また、企業・自治体・文化団体などによるサテライトイベントを大阪市内各地に展開し、「万博だけで終わらない体験」の提供が人々の興味を継続的に引きつけています。
日本政府と大阪府の試算によれば、2025年万博の直接・間接効果は総額約3兆円規模に達する見込みです。周辺地域の宿泊稼働率はGW前の60%台からGW後に90%超へ急上昇。飲食・小売・交通・観光業が活況を呈し、特に夢洲周辺のベイエリア開発やインフラ整備の加速が地域経済の底上げに貢献しています。
万博開催後も施設とインフラを有効活用し、夢洲を含む大阪湾岸エリアを次世代のイノベーション拠点として定着させる必要があります。会場の一部をコンベンションセンターやリサーチパークとして転用し、スタートアップ支援や大学連携プロジェクトを誘致。また、交通改善の延長線上で公共交通ネットワークの強化とスマートシティ化を図り、「万博のレガシーを地域活性化に繋げる」取り組みが求められます。
大阪・関西万博は、当初のネガティブイメージを逆手にとり、運営側の迅速な改善策と新規プログラム投入により、GW以降の来場者動員を加速させました。技術展示や文化体験の質の高さ、SNSを通じたポジティブな口コミ、そして周辺地域の経済波及効果を鑑みると、テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現しつつあると言えます。今後は、開催後の施設活用と地域振興策を両輪で推進し、万博が遺すべき持続可能なレガシーの構築が重要な課題となります。
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