即退職する新入社員 企業の対策は
2025/06/11 (水曜日)
「話が違う!」と即退職する新卒入社社員…身勝手対応に法的問題は?企業の対策は?
近年、入社初日や数日後に「研修がない」「仕事内容が説明と違う」などを理由に新卒社員が即日または数日以内に退職を申し出るケースが増えています。この現象は「ミスマッチ退職」と呼ばれ、入社前の説明と実際の業務内容や労働環境との乖離が主な要因です。企業側の「伝え方」の問題と、学生側の「期待値管理」が両輪となって起きており、離職率の増加や採用コスト増大を招いています。
労働基準法の規定により、期間の定めのない雇用契約は労働者がいつでも解約を申し入れることができ、申し入れから2週間後に契約が終了します。ただし、就業規則で退職予告日数を定めている場合にはその規則に従う必要があり、多くの企業では30日前の申し出を推奨しています。新卒社員でも例外なく退職は認められる一方、預かった教育費用や引き継ぎの不備が企業側に損害を与えた場合には、信義則や損害賠償を問う余地が理論上はありますが、実務上はほとんど適用されていません。
「退職代行サービス」を利用し、新卒社員が弁護士や専門業者を介して退職通知を出すケースも増えています。企業は直属の上司と面談する機会を失い、業務引き継ぎができないまま人材が流出。結果、残された現場社員の負担が増加し、チーム全体の士気低下や生産性の低落につながります。
ミスマッチを防ぐ取り組みとして、企業は通常の採用説明会に加え、ジョブ説明会や1dayインターン、長期インターンシップなど、実際の業務を体験する機会を増やしています。これにより学生は入社前に社風や仕事の現実を理解でき、採用側も適性や意欲を見極めやすくなります。また、採用広報では「働くリアル」動画や社員インタビューを活用し、期待値の調整に努める企業が増えています。
入社後の早期離職を防ぐため、企業は以下のようなフォロー体制を導入しています。
厚生労働省の調査によれば、2023年度の新卒者における3カ月以内離職率は約10%、1年以内離職率は約30%と過去10年で増加傾向にあります。離職理由として「仕事内容が合わない」「教育・研修が不十分」「職場の雰囲気になじめない」などが上位を占め、企業側の事前・入社後のフォロー不足が浮き彫りになっています。
欧米ではジョブ型採用が一般化しており、職務内容を明確にした上での採用情報提供が標準化しています。入社前に契約職務を詳細に示し、業務内容ごとの期待値をすり合わせることでミスマッチを低減。また、米国企業では入社後90日間を「オンボーディング期間」と定め、専任のオンボーディングマネージャーが新入社員をサポートする取り組みも多く見られます。
企業が考慮すべき対応策は以下です。
「話が違う!」と即退職する新卒社員問題は、企業の採用・育成プロセス全体における情報共有とフォロー体制の不備が主因です。法的には退職の自由が認められているものの、早期離職は企業コストや組織の活力を削ぐリスク要因となります。採用から入社後フォローまで一貫したミスマッチ防止策を構築し、採用の質と定着率の向上を図ることが、企業競争力の維持に不可欠です。
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