車部品大手マレリ 米破産法を申請
2025/06/11 (水曜日)
【速報】自動車部品大手のマレリホールディングス、米国連邦破産法第11条(チャプター11)を申請
世界有数の自動車部品メーカーであるマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ、マグネティ・マレリ)は、米国時間2025年6月11日、連邦破産法第11条(チャプター11)をデラウェア州で申請しました。これにより債務の早期再編と事業継続を図る「債務者自己管理下再建手続き」が開始され、同社はおよそ11億ドル(約1,550億円)のデビタ―インポゼッション融資を確保。主要債権者の約80%が新たな再建計画を支持しており、全担保債務は再建手続き完了時に削減される見通しです。
マレリは2019年のカルソニックカンセイとマグネティ・マレリの合併により誕生し、以後、膨大な買収関連負債を抱えてきました。新型コロナ禍以降、日産自動車やステランティスなど主要顧客の販売低迷が直撃し、2022年には最初の大規模債務再編を実施。しかし、世界的な電動化シフトに対応する追加投資やサプライチェーンの混乱が重なり、資金繰りは依然として逼迫。今回、米国市場での再建手続きを選択したのは、米国での製造拠点運営継続と投資家の信頼回復を優先させた結果とみられます。
連邦破産法11条は、企業が経営を続けながら債務を再編できる制度です。通常の破産手続きとは異なり、経営陣が引き続き業務運営を担い、「債務者自己管理」を原則とします。マレリの場合、裁判所の監督下でスポンサー契約を締結し、再建計画を45日間のオーバービッド期間中に確定。最終的には債権者による投票を経て承認されれば、保全された事業資産を維持したまま再出発します。
11億ドルのデビタ―インポゼッション融資は、戦略的価値投資ファンドSVP(Strategic Value Partners)を中心に組成。SVPは再建後の新オーナー候補として優先交渉権を持ち、オーバービッドで競合するサムバルダナ・モサンソン・グループ(インド)らを抑えつつ最終的な支配権を獲得する見込みです。これにより、既存のKKR主体の株主構成は一変し、債権者主導の支配構造に移行すると予想されます。
マレリは日産やホンダ、トヨタといった国内主要自動車メーカーのサプライチェーンを支える中核企業です。チャプター11申請後も「操業停止は発生せず、部品供給に影響はない」と表明していますが、取引先各社は代替手配や在庫調整を余儀なくされる可能性があります。経済産業省は9日付で「重要部品の在庫管理と代替供給網構築を速やかに進める」との事務連絡を出し、サプライチェーンの安定化に向けた対策を指示しました。
国内外で自動車部品大手の経営破綻例は稀ですが、2009年の米国ゼネラルモーターズの破綻時には子会社のACデラコールが影響を受け、再建後に事業売却が断行されました。今回のマレリも国内外の事業を整理再編し、収益構造を見直す必要があります。日本では2007年にケーヒン(現ホンダ系)が財務悪化を受けて再編を行った例があり、サプライヤー再編の先例として参考にされます。
チャプター11手続き中は、米国での債権者保護のため新規契約や訴訟行為が制限されます。一方で日本側では連結決算への影響や、財務諸表表示の見直し、税務上の資産評価減・繰延税金資産の取崩しなどが発生します。企業グループ全体でのガバナンス確保と、海外子会社の現地法対応が最大の法務課題となるでしょう。
マレリはチャプター11申請後45日以内に入札プロセスを完了し、再建計画案を裁判所へ提出する予定です。承認を得た上で年内に再建を完了し、2026年初頭から新体制での事業再開を目指します。顧客各社や従業員に対しては「オペレーションの継続性と雇用維持」を最優先課題とし、信頼回復に努める見込みです。
マレリホールディングスの米国チャプター11申請は、グローバルな自動車部品市場の構造変化と再編の象徴的出来事です。膨大な買収負債と顧客需要の潮流変化に対応するため、債務再編と事業再構築を同時に進める選択を迫られました。今後の再建プロセス次第では、自動車産業のサプライチェーン全体に新たな安定化モデルを示す可能性があり、業界関係者の注目を集めています。
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