トラブル相次ぐ中古車店 客は怒り
2025/06/12 (木曜日)
【続報】「購入した車なくなった」トラブル相次ぐ中古車販売店「カーネル」 突然全国一斉閉店で連絡つかず…「怒りしかない」従業員の給料未払いも
2025年6月3日、広島県東広島市の「カーネル」東広島店の駐車場を訪れた購入者Aさんは、3月に契約・前払いした愛車が整備もされず、貼り紙一つで店舗ごと消滅している光景を目の当たりにしました。全国14店舗を展開していた中古車販売チェーン「カーネル」は、同日以降に一斉閉店し、店舗にも本社にも連絡が一切つかなくなりました。購入者Bさんは、購入したマークXが「解体済み」と登録され、スクラップにされていたという衝撃の事実を知りました。さらに、従業員への給与未払いも数か月にわたり発生していたことが告発され、元従業員からは「立替で登録費を賄うほど末期状態だった」との証言が出ています :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
カーネルの運営企業N社は2025年2月ごろより資金繰りが悪化し、整備費や車検代、従業員への給与支払いが滞り始めました。関係者の話によれば、本社からの入金が止まる中、一部店舗は店長判断で営業継続を試みたものの、次第に部品調達や事務処理が不能になり閉店を余儀なくされました。契約者は全国で少なくとも400人以上に上り、前払い金額は数十万から高いケースでは700万円を超えています。一方、従業員側にも給与4か月分以上の未払いがあり、実質的に“ボランティア”状態で車両準備に従事していたという状況が明らかになりました :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
日本の中古車市場では、1970年代以降、店舗の不正や業務放棄による消費者被害が度々報告されてきました。1990年代には、修復歴偽装や走行距離改ざんが社会問題となり、自動車公正取引協議会が設立されました。2000年代に入るとインターネットサイトを介した個人間売買も増え、トラブルも多様化。業者向け保証制度や第三者機関の鑑定制度が導入され、現在では中古車情報の透明化と整備履歴の開示が義務付けられていますが、カーネルのように組織的に事業を放棄し消費者を置き去りにする事例は近年稀と言えます。
中古車取引に関わる主な消費者保護制度には、以下があります:
しかし、カーネル事件では「突然閉店」で店舗責任者が不在となり、これらの制度を活用できない状況が発生しました。消費者センターへの相談や警察への被害届提出が唯一の対応策となるものの、倒産企業相手では債権回収や損害賠償が困難です。
過去に大型バイク販売店チェーンの一斉倒産(2008年、件数約30店舗)や、携帯電話販売代理店の突然閉鎖(2015年、被害約1万人)などが発生していますが、カーネル事件は被害額や規模、トラブルの深刻さで過去事例を上回ります。特に、購入車両がスクラップにされたケースは極めて異例です。
現行法では、営業継続義務や事業停止前の告知義務は明文化されていないため、業者の突然閉店を直接制裁するのは困難です。国会では2025年6月13日に「中古車販売業法改正案」が参考人質疑にかけられ、下記事項が議論されています:
この改正案が成立すれば、カーネルのような一方的閉店による被害防止に一定の歯止めがかかる見込みです。
カーネルの一斉閉店は、地方都市の中古車市場や関連整備業者に大きな打撃となります。未払いの整備費や委託費を抱える整備工場、小規模ディーラーも多額の債権を失い、地域経済全体に波及リスクがあります。また、無在庫販売に振り回された消費者が複数の自治体に相談に訪れ、消費生活センターの業務負担が急増しています。
自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は「中古車販売チェーンの透明性と業者監督の強化が急務」と指摘。金融・保険業界でも「前払金保全措置を保険市場で提供する」ビジネスモデルの検討が始まっています。
「カーネル」事件は、中古車市場の構造的な脆弱性を露呈しました。緊急的には、被害者支援(法的相談や共同訴訟支援)の体制強化が必要です。一方、長期的には法整備による予防策、前払金保全制度の導入、業界ガバナンス強化、地域に根ざした消費者教育の推進が欠かせません。これらの施策が実行されることで、二度と同様の被害が発生しない中古車流通環境の構築が期待されます。
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