アスリート盗撮 法の不備埋まるか

アスリート盗撮 法の不備埋まるか

2025/07/06 (日曜日)

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『アスリート盗撮』の行方 スポーツ基本法改正の影響は…選手が苦しめられた「法の不備」埋まるのか

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アスリート盗撮問題に法の網は及ぶか──スポーツ基本法改正で “空白”は埋まるのか

競技中のユニフォーム姿を狙った「アスリート盗撮」が後を絶たず、そのたびに被害者は迷惑防止条例や名誉毀損、著作権侵害といった既存の法制度を駆使して対抗してきました。しかし、2023年7月13日に施行された性的姿態等撮影罪(撮影罪)適用の要件には「下着や性器などを対象に撮影すること」が定められ、ユニフォーム越しの盗撮は対象外のまま。一律の刑事罰化にも関わらず、アスリート盗撮には手が届かない法の隙間が存在します。

歴史的背景:盗撮立法の変遷

①従来の迷惑防止条例
各都道府県の迷惑防止条例は、公衆の面前で卑わいな言動を行う行為を処罰しますが、条例の文言や運用は自治体ごとに異なり、「性的部位を撮影した」明確な要件が必要とされるため、ユニフォーム越しの盗撮はしばしば対象外とされてきました。

②性的姿態等撮影罪(撮影罪)
2023年7月13日施行の「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に関する法律」(性的姿態撮影等処罰法)で新設された撮影罪は、下着や性器、わいせつ行為を撮影した場合に3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科します。しかし、競技用ユニフォームは “下着” とみなされず、アスリート盗撮はしばしば罰則の網からこぼれ落ちる状況が続いています:contentReference[oaicite:0]{index=0}。

法の隙間が招いた長期化事例

ある陸上選手が競技中に股間を執拗に盗撮された事件では、被害者団体が“勝訴的和解”を得るまでに2年を要しました。調停では名誉毀損・不法行為責任を根拠とする和解金支払いが決まりましたが、「性的撮影罪ではなく条例違反でもない」という法の隙間が被害者を苦しめたと団体は指摘しています。

スポーツ基本法改正と第29条の意義

2025年6月13日、参院本会議で成立した改正スポーツ基本法は、新設第29条で国と地方公共団体に対し「暴力、ハラスメント、性的な言動、インターネット上の誹謗中傷を防止するため必要な措置を講じなければならない」と明記しました。この規定は、アスリート盗撮を含む“性的な言動”への行政的対応義務を初めて法文に書き込んだ点で画期的です:contentReference[oaicite:1]{index=1}。

識者は、同条文が「措置を講じる努力」ではなく義務化したことに意義を認めつつも、具体的措置の内容や罰則規定の付与が欠如しているため、法的実効性に疑問を呈しています。運用面では、違反者への罰則を含む条例改正や、スポーツ団体の自主規制強化などが必要とされます:contentReference[oaicite:2]{index=2}。

海外の法制度と比較

  • 米国(連邦法)
    Title 18 U.S.C. § 1801 は、住居や更衣室など私的空間での盗撮を「Voyeurism」として規定し、最大3年の懲役を科します。公の競技会場は対象外ですが、州法で幅広く適用例があり、スポーツイベントでも抑止効果が報告されています。
  • イギリス(Sexual Offences Act 2003)
    同法では「Voyeurism offence」として公共・私的空間を問わず、他人のプライバシーを侵害する撮影行為を広く禁止。違反者には2年以下の懲役が科せられ、競技場内外の盗撮にも対応可能です。

類似事例:SNS誹謗中傷と芸能人盗撮

スポーツ界では、SNS上で選手の私生活を不適切に拡散する誹謗中傷も深刻化。2019年のパリ五輪予選選手への中傷では、多くの選手が精神的苦痛を訴え、名誉毀損訴訟に発展しました。芸能界でも、舞台裏での盗撮映像がネット上に拡散し、撮影罪・著作権侵害で摘発されたケースがあり、業界横断的な対策強化が求められています。

今後の課題と提言

  • 都道府県迷惑防止条例の改正:スポーツ会場での「性的撮影行為」を明示的に禁止する条項を追加する。
  • スポーツ基本法の施行令・規則整備:行政の具体的措置(警備強化、通報窓口設置、違反者名簿公表など)を規定し、罰則付与を検討する。
  • スポーツ団体のガイドライン強化:試合会場での盗撮抑止策(バッグ検査、撮影機材持ち込み制限)を標準化し、国内外のベストプラクティスを導入。
  • 教育・啓発活動の展開:観客や関係者への侵害行為の理解促進と、盗撮行為の倫理的・法的問題を周知するキャンペーンを実施。

まとめ

アスリート盗撮は、ユニフォーム越しの撮影が「撮影罪」の対象外となる法の隙間に起因し、被害者が長期の裁判・調停を強いられてきました。2025年6月のスポーツ基本法改正(第29条)で行政的予防措置が義務化されたものの、具体的な罰則の整備や運用ルールが未整備のままです。今後は、迷惑防止条例の改正やスポーツ団体ガイドラインの法制的裏付け、海外の厳格なVoyeurism規制を参考にした刑事罰の適用拡大など、多層的な対策が不可欠です。こうした法制度の拡充と運用強化を通じて、選手が安心して競技に臨める環境を早急に整備し、法の乱れた隙間を埋めることで“競技の安全”と“人権尊重”を両立させることが求められます。

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