米ディズニーなど AI企業を提訴
2025/06/12 (木曜日)
ディズニーとユニバーサル、AI企業を提訴 有名キャラクターを“無断使用”
2025年6月12日、ウォルト・ディズニーとNBCユニバーサルは、画像生成AIサービス「Midjourney(ミッドジャーニー)」を提供する米新興企業をロサンゼルス連邦地方裁判所に提訴しました。訴状によれば、Midjourneyが「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーや「怪盗グルー」シリーズのミニオンといったディズニーおよびユニバーサルの著作権保護対象キャラクターを無断で学習データに使用し、ユーザーがそれらを再現・配布できる画像を生成した事実が問題とされています。
両社は「これこそが典型的な著作権の悪用であり、無限に盗作を拡大する底なしの沼だ」と主張し、生成画像の仮差し止めと損害賠償を求めています。ハリウッド大手が生成AI企業を著作権侵害で訴えたのは初めてのケースです :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
近年の生成AIは、大量のインターネット画像を学習し、新規画像を自動生成できる技術として急速に普及しています。しかし、その“ブラックボックス”化された学習過程では、著作権で保護された作品の無断取り込みが常態化しており、アーティストや版権ホルダーからの反発が強まっていました。
2023年には画家ジェームズ・ジャン氏がMidjourneyを開発した企業を提訴し、学習データの出典を開示させる裁判が米カリフォルニア州で係属しています。この先例では、裁判所が学習データの詳細を開示命令する動きが出ており、今回のディズニー・ユニバーサル訴訟でも同様の開示要求が争点となる可能性があります。
ハリウッド大手は伝統的に著作権保護を重視し、1990年代には海賊版ソフトやビデオテープ販売への訴訟を多く手がけました。近年では、YouTube上での無断配信やストリーミングサービスへの埋め込み動画の権利侵害を巡っても各社が訴訟を起こし、多数の削除命令や損害賠償を勝ち取ってきました。
生成AIに対しては「Fair Use(フェアユース)」を巡る議論もありますが、ディズニーは「キャラクターの独自性を毀損し、ブランド価値を損ねる」として、フェアユース適用を否定する方針です。一方、AI企業側は「創作物を学習させること自体は違法ではなく、生成された画像はオリジナル作品と異なる」と反論する見込みです。
映像・ゲーム・アニメ・音楽などのコンテンツ業界では、生成AI技術の導入と著作権保護の両立が喫緊の課題となっています。訴訟の帰趨次第では、学習データの取り扱いやライセンス契約の方式が大きく変わり、クリエイターがAI開発企業に対して使用許諾料を徴収する新たな市場モデルが生まれる可能性があります。
また、国内のアニメ業界では、2024年の著作権法改正で生成AI利用のガイドライン整備が始まっており、今回のハリウッド訴訟は日本でも「二次利用の適正範囲」を再検討する契機となるでしょう。コンテンツ制作会社やクリエイターが安心してAI技術を活用できる環境整備が急務です。
欧州連合はAIアクタ規制(AI Act)で、人権や知的財産権への影響を考慮したリスク分類を導入。生成AIは「高リスク」または「制限的利用」対象となる可能性が高く、EU域内での商用サービスには厳しい審査が必要になります。米国でも、2025年初頭に議会で「AI著作権侵害防止法案」が提出され、著作権保護団体やプラットフォーム事業者が意見陳述を行っています。
ディズニー・ユニバーサル訴訟では、主に以下の論点が焦点となるでしょう:
両社は仮差し止め申請を同時に行う見込みで、画像生成サービスの一部停止が求められる可能性があります。裁判所がどのように「著作権」と「創作支援技術」のバランスを取るかが注目されます。
ウォルト・ディズニーとユニバーサルによるAI企業提訴は、コンテンツビジネスにおける著作権保護の最前線です。生成AIの技術革新に伴い、創作物の権利処理は複雑化しています。今回の訴訟結果により、AI学習と著作権の適切な共存モデルが示され、世界中のクリエイターとプラットフォーム事業者にとってベンチマークとなるでしょう。
コメント:0 件
まだコメントはありません。