青森の障害者施設 日常的に虐待か
2025/07/01 (火曜日)
地域ニュース
青森県五所川原市の障害者支援施設「栄幸園」の職員が入所者に虐待行為をした疑いがあることが、毎日新聞の取材で判明した。虐待行為は日常的に繰り返されている可能性があり、同市は事実関係の確認を進めている。
2025年6月30日、毎日新聞の取材で、青森県五所川原市の障害者支援施設「栄幸園」の職員が入所者に対し身体的虐待を繰り返していた疑いが明らかになった。車いす利用者を長机で囲んで移動できなくする拘束や、殴打などの行為が日常的に行われていたといい、市は現在、事実関係の確認を進めている 。
2012年に施行された「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」では、障害者福祉施設従事者による虐待を禁止し、都道府県・市町村に通報義務を課している。令和4年度には全国で約4,000件の相談・通報が寄せられ、そのうち施設従事者による判断事例は約600件に上った 。大阪府でも令和5年度に117件の判断事例が報告され、身体的虐待が最多となっている 。
同様の事例として、2019年に千葉県内の知的障害者支援施設で職員による殴打や長時間立たせる拘束が発覚し、法人に対し厚労省からの指導勧告と補助金返還が命じられた例がある。また、グループホームでのネグレクト事案では家族からの民事訴訟に発展し、損害賠償が認められたケースも報告されている。
UNの「障害者権利条約」(2007年批准)では、障害者の尊厳尊重と自由な意思決定支援を求めている。しかし日本では「身体拘束ゼロ」を目標としつつも、現場では法令遵守が徹底されていない。欧州主要国では定期的な第三者監査や権利擁護専門職の配置が義務付けられているのに対し、日本は自治体任せの監査にとどまり、抜け穴が多い。
五所川原市「栄幸園」の虐待疑惑は、障害者支援施設における人手不足、監督体制の弱さ、通報制度の未整備といった、日本全体の構造的課題を浮き彫りにした。被害を受けた入所者の人権回復と安全確保が最優先であり、市は速やかな調査と厳正な処分を行うべきだ。加えて、国は法令・運用ルールの抜本的強化を図り、第三者監査や匿名通報制度の義務化を進める必要がある。これらの施策を通じて、身体拘束ゼロを目指し、障害者が安心して暮らせる支援体制を早急に実現しなければならない。
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