一家死傷事故10年 唯一生存の少女
2025/06/08 (日曜日)
砂川・一家5人死傷事故10年 唯一生存の次女を「そっと見守って」
北海道砂川市の国道12号交差点で、2015年6月6日に発生した飲酒運転ひき逃げ事故から10年が経ちました。この事故では、新聞販売所を営む永桶弘一さん(当時44歳)とその妻・文恵さん(当時44歳)、長女・恵さん(17歳)、長男・昇太さん(16歳)の4人が即死し、当時12歳だった次女一人が重傷を負いました。次女は奇跡的に一命を取り留めましたが、重度の障害が残り、家族と地域に深い傷を刻みました。本稿では、事故の経過と司法判断、被害者遺族の現在、飲酒運転対策の進展と課題、地域の防止活動の取り組みなどを詳しく解説します。
事故当日午後10時35分頃、永桶家のワゴン車は青信号で交差点に進入しました。そこへ時速100km超で赤信号を無視したRV車2台が突入。飲酒運転をしていたドライバー2名は、飲食店をはしごしながら車同士で速度を競っていたとされます。防犯カメラの映像には高速度で交差点に進入する様子が鮮明に映っており、ワゴン車は青信号を確認した直後に激しく衝突されました。現場周辺には飲酒運転の温床となっていた飲食街の駐車場があり、事故後に一般利用が禁止されるなど地域全体に衝撃が広がりました。
事故を起こした2名は「危険運転致傷」と「ひき逃げ」の罪で起訴され、懲役23年の実刑判決を受けました。裁判では、一部で過失否認や責任の所在を争う主張があったものの、映像や現場証拠、複数の証言により飲酒・速度超過が明確になり、厳しい処分が下されました。被告側は控訴しましたが、高裁・最高裁ともに一審判決が支持され、刑が確定しました。
永桶家の祖父・弘さん(82歳)は、事故から毎年6月6日に墓前を訪れ、孫娘たちが好きだったカーネーションの鉢植えに水をやりながら「そっと見守って」きました。長期にわたり重度障害を負った次女は、特別支援学校を卒業後もリハビリと家族の介護を受けながら暮らしています。両親を失ったその姿に、地域住民は「一人でも残ってくれてありがとう」と温かい声をかけ続けています。一方で、遺族は10年を経ても「なぜ?」という怒りと悲しみを拭うことはできず、裁判後も被告の更生状況や社会的責任を追及し続けています。
事故後、道内では飲酒運転根絶を目指す立法と取り締まり強化が進められました。北海道警は取締り件数を10年間で11117件に上ると発表し、飲酒運転撲滅のための街頭検問や路上スクリーニングを常時実施。国も2019年に「道路交通法」を改正し、一定量以上の飲酒運転に対して即時免許取り消しと罰則強化を導入しました。また、飲食店向けに「飲酒運転防止コンプライアンス研修」を義務化し、帰宅手段の周知や代行運転の斡旋を義務付ける自治体も増えています。
事故現場近くの商店街では、防犯カメラ設置台数を事故前から数台増やし、夜間のパトロールを強化。飲酒運転を防止するための「飲んだら乗らない」啓発看板を街灯に掲示し、飲食店協会がドライバーへの呼びかけ運動を展開しています。砂川社交飲食協会の石田会長は「万が一でもハンドルを握ろうとする客には声をかけ、代行運転を手配する」と述べ、悲劇の再発防止に全力を尽くしています。
砂川・一家5人死傷事故から10年。法規制と取り締まりは強化されてきた一方、飲酒運転は依然として後を絶たず、被害者遺族の傷は癒えません。遺族や地域住民が「そっと見守る」意味は、事故を風化させず、同じ悲劇を繰り返さない社会を築くことにほかなりません。これからも行政・警察・地域が一体となり、飲酒運転根絶に向けた取り組みを継続し、命を守る社会の実現を目指す必要があります。
コメント:0 件
まだコメントはありません。