叩けばおとなしく 元保育士の過ち
2025/06/12 (木曜日)
子どもは「たたけばおとなしくなる」…過ち重ねたベテラン保育士「もう保育には関わらない」
2025年6月11日、愛知県一宮市の乳児院に入所する乳幼児4人をたたく・蹴るなどの暴行を繰り返したとして、元保育士の伊藤旗里子被告(56)に対し、名古屋地裁(村瀬恵裁判官)は同日、懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年)の判決を言い渡しました。伊藤被告は「子どもはたたけばおとなしくなる」と考え、数年間にわたり複数の乳幼児に暴行を加えたとされます(出典:47NEWS「乳幼児4人暴行、元保育士に執行猶予付き判決 名古屋地裁」https://www.47news.jp/12708851.html)。
被告は乳児院での勤務中、2023年から今年にかけて入所中の生後間もない乳幼児4人を叩く、蹴るなどの暴行行為を繰り返しました。警察の取り調べに対し「子どもが泣き止まないから叩いた」と供述したと報じられています。弁護側は「長年の過重労働による精神的疲弊があった」と主張しましたが、裁判所は「保護すべき立場にありながら、行き過ぎた体罰を行った」と判断し、実刑を免れる形で執行猶予付き判決を下しました(出典:読売新聞オンライン https://x.com/Yomiuri_Online/status/1932947071319076882)。
日本では2000年に「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)が成立し、身体的虐待を含む四類型(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)を明確に定義しました。この法律は、乳幼児院の職員も「保護者」と同様に虐待行為を禁じられており、違反時には刑事罰の対象となります(出典:オレンジリボンプロジェクト「児童虐待防止法制度」https://www.orangeribbon.jp/about/child/institution.php)。
2000年の施行後、児童虐待防止法は家庭内・施設内虐待の抑止力を高めるために何度も改正が重ねられてきました。直近では2025年4月に改正児童福祉法が成立し、施設での一時保護や保護者との接触制限など、虐待防止体制が強化されています(出典:こども家庭庁「令和7年4月に成立した改正児童福祉法について」https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/Revised-Child-Welfare-Actr7)。
一方、保育士の過重労働や精神的ストレスが体罰行為につながるケースも指摘されています。政府の調査では、保育現場の職員一人当たりの対応児童数が増加傾向にあり、バーンアウト(燃え尽き症候群)状態に陥る職員も多いと報告されています。また、「子どもの泣き声を短時間で止めたい」「しつけの一環」と誤解した体罰文化が根強いことが問題視されています(出典:講談社「知らないではすまされない!日本で体罰が法律で禁止された理由」https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/childcare/JSJlw)。
国連の「子どもの権利条約」(CRC)は、締約国に対し体罰を含むあらゆる形態の虐待を禁止し、子どもの権利尊重を義務付けています。日本は1994年にCRCを批准し、体罰禁止の立法・施策を進めてきましたが、今回のような施設内暴行事件が後を絶たず、国際基準との整合性を求める声が高まっています(出典:UN Treaty Collection「Convention on the Rights of the Child」https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/TreatyBodyExternal/Treaty.aspx?Treaty=CRC)。
過去には児童養護施設や母子生活支援施設での職員による虐待事件がいくつも報告されており、2006年には東京の児童養護施設で入所児童が職員に殴打され死亡する痛ましい事件も発生しています。こうした事件を契機に、施設職員の採用・研修基準や立入調査権限の強化が図られてきましたが、根本的な解決には至っていません(出典:朝日新聞デジタル「施設内虐待死事件を振り返る」https://www.asahi.com/articles/DA3S15098585.html)。
本件を教訓とし、以下の取り組みが急務です。
これらにより、児童の安全確保と保育の質向上を図り、「体罰ではなく対話と支援」で子どもの健全育成を支える社会を実現しなければなりません。
コメント:0 件
まだコメントはありません。