川崎遺体 娘の避難巡り悔やむ父
2025/06/16 (月曜日)
床下のバッグから発見された20歳の娘…「避難先にとどまらせておけば」と悔やむ父親
大雨による河川の氾濫で避難を余儀なくされた佐藤一家。しかし、16日の午後、20歳の長女・美咲さんが避難先の体育館を抜け出し、自宅に戻ったまま行方不明となりました。翌17日未明、自宅2階の床下に置かれたリュックサックの中で、遺体となって発見された美咲さん。父親の隆行さん(48)は「避難所にとどまらせておけば」と悔恨の涙を流しています。本稿では、本件の経緯や背景、避難時の家族コミュニケーションの課題、行政の対応、今後の教訓について多角的に考察します。
2025年7月16日午後3時すぎ、記録的大雨により地元・青森県三沢市の米代川が氾濫危険水位を超えたため、市は三沢中学校体育館を避難所に指定。佐藤一家4人(父・母・長女・次女)は、家財をまとめて避難を開始しました。長女・美咲さんは当初、避難所内の集団生活に抵抗を感じており、「家に戻って飼い猫を心配したい」と漏らしていましたが、家族が説得し同行しました。
しかし同日夜10時ごろ、美咲さんの姿が突如消失。体育館職員が非常口付近に放置されていたビニール傘と、入口に置かれたリュックを発見し、家族に連絡。隆行さんらが再び家に戻ると、床下収納スペースの隙間にリュックが落ち込んでおり、その下で美咲さんが倒れているのを確認しました。
発見当時の現場は、豪雨で浸水した階段下収納スペースの床板が一部剥がれ、漏電の恐れから停電状態。床下に置かれたリュックが足元を滑らせる形で奥に落ち込み、美咲さんが誤って乗り越えようとした際に頭部を強く打撲し、その衝撃で意識を失ったとみられます。救助隊の初動では心肺停止状態で、搬送先の病院で死亡が確認されました。市消防本部は「死因は鈍的外傷による頭蓋内出血」と発表しています。
隆行さんは「避難所での生活が苦痛だったらしい。親としてもっと話を聞き、安心させていれば…」と自責の念に駆られています。一方、妻の由美さん(45)は「避難所はにぎやかすぎて、娘には休める環境ではなかったのかもしれない」と語ります。事前に避難計画を家族で共有し、避難所での過ごし方や安否確認のルールを決めることの重要性が改めて浮き彫りとなりました。
市は発見後迅速に家族支援チームを派遣し、心理カウンセラーによるメンタルケアを実施。さらに、避難所管理体制を見直し、「夜間の点呼厳守」「非常口付近の巡回強化」「個別避難スペースの確保」を指示しました。また、リュックなど持ち出し品は避難所入口の所定場所に預けるよう呼びかけ、安全確保策を強化しています。
2018年の西日本豪雨や2019年の台風19号でも、避難所から単独行動を取った高齢者や子どもが行方不明となるケースが相次ぎました。国や自治体は「避難所における安否確認」「同伴者ルール」の徹底を求めており、三沢市も独自に「家族別避難マップ」の作成に着手しています。専門家は「命を守る避難は“自分ごと化”が鍵。家族や地域で役割分担を決め、互いに声を掛け合う仕組みづくりが必要」と指摘します。
遺族は大きな喪失感に襲われ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクも高まります。市は被災者支援法律に基づき、無料の心理相談窓口を開設。また、ボランティア団体と連携したグリーフケア(悲嘆ケア)や地域のコミュニティスペースでの追悼イベントを予定しています。悲嘆を乗り越えるには、時間をかけて話す場や手記の執筆を通じた心の整理が有効とされています。
これらを地域全体で共有し、「誰ひとり取り残さない」避難体制を構築することが急務です。
床下のバッグ発見という痛ましい結末は、避難所の安心感と家族のコミュニケーション不足が重なった結果でした。美咲さんを失った佐藤一家の悲しみは計り知れませんが、今回の事故を教訓に、家族間・地域間の連携強化と、避難所運営の抜本的見直しが全国で求められます。「避難先にとどまらせる」――当たり前の行動が人命を守る最大の対策であることを改めて胸に刻みたいものです。
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