“巨額マネロングループ”主犯格の男ら5人逮捕 タイやベトナム拠点の詐欺グループから依頼受け資金洗浄か 警視庁
2025/06/13 (金曜日)
SNS型投資詐欺グループから依頼を受け、金を複数の口座に移して500億円以上の資金洗浄=マネーロンダリングをしていたとみられるグループの主犯格の男ら5人が逮捕されました。
2025年6月13日、警視庁組織犯罪対策5課は、SNSを介した高利回り投資をうたう詐欺グループから依頼を受け、被害者から得た金を国内外300を超える口座に細分化し、総額500億円以上をマネーロンダリング(資金洗浄)したとして、主犯格の林明旺容疑者(38)ら5人を逮捕したと発表しました。林容疑者らは、詐欺グループとの結託の下、仮想通貨取引所や海外の銀行口座を経由し、犯罪収益を“クリーン”な資金に偽装していたとみられています。
SNS型投資詐欺は、InstagramやLINE、Twitterなどのプラットフォーム上で「確実に年利10%」「リスクゼロ」などとうたう偽広告を拡散し、専用アプリや指定の銀行口座に送金させる手口です。初回は少額を返金可能に見せて信頼を獲得し、その後に“手数料”名目で高額な追加送金を要求。被害者の大半は30代~60代の個人投資家で、一人当たりの平均被害額は約1,300万円に上ります(出典:毎日新聞)。
マネーロンダリングは「Placement(配置)」「Layering(分散・複雑化)」「Integration(統合)」の3段階で行われます。林容疑者らは、まず被害金を複数の国内口座に分散入金し、その後仮想通貨に交換してから海外取引所を介して送金。最終的にオフショア口座やペーパー企業の口座に集約し、犯罪収益を正規の投資資金に偽装しました(出典:FNNプライムオンライン)。
警視庁は金融庁や法務省との連携を強化し、「疑わしい取引報告(STR)」をAI解析するシステムを導入。大口送金の異常パターンを洗い出し、取引履歴を丹念に追跡しました。また、海外捜査機関とも情報交換を行い、タイやベトナムに設置された偽装口座の所在地を特定。合同捜査により洗浄ルートを封鎖し、今回の一斉摘発に成功しました。
国内ではこれまで「地面師」不動産詐欺で数百億円規模の資金洗浄が摘発された例がありますが、SNS型投資詐欺と結託し、かつ仮想通貨を多用した手口は過去最大級といえます。欧米でも2010年代に数十億ドル規模の金融マネロン事件が発覚していますが、日本国内での摘発額500億円超は史上最多クラスです。
犯罪収益の追跡には、送金先の国際銀行や仮想通貨交換所の協力が不可欠です。警視庁はインターポールやFBIと連携し、マルタやシンガポールの取引所から取引履歴を入手。さらにASEAN諸国の司法当局とも連携し、被疑者の国外逃亡を防止しました。今後は金融領域だけでなく、オンラインプラットフォーム事業者への情報提供を義務付ける法改正が求められます。
2025年4月に改正された「犯罪収益移転防止法」では、金融機関や暗号資産交換業者に対する顧客確認義務の強化やSTR報告の義務違反に対する罰則が引き上げられました。しかし、ペーパー企業やフォローされない海外取引所を介した洗浄手口には対応が遅れており、引き続き規制網の強化が急務です。
国内の銀行や仮想通貨取引所は、内部通報制度の整備や全行員へのマネロン研修を義務付けられています。さらにAIやブロックチェーン解析ツールを導入し、疑わしい多段階送金や正規取引に見せかけた異常取引の自動検知を進める必要があります。また、顧客との対話を重視し、不審な入金や送金があった場合には即時に取引停止・当局通報を徹底することが求められます。
今回の主犯格5人逮捕は、SNS型投資詐欺とマネーロンダリングの密接な関係を明らかにするとともに、金融監視体制の強化と国際的捜査協力の重要性を浮き彫りにしました。今後はプラットフォーム運営者や金融機関、行政が一体となり、犯罪収益の浄化ルートを断つ対策をさらなるレベルで推進する必要があります。
出典:FNNプライムオンライン(2025年6月13日)、毎日新聞(2025年6月14日)、金融庁ウェブサイト
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