NATO日本事務所 開設事実上断念
2025/06/25 (水曜日)
【ハーグ共同】北大西洋条約機構(NATO)当局者は24日、日本での連絡事務所開設について「現在はもう協議されていない」と述べ、事実上断念したことを明らかにした。
2025年6月24日、ハーグ発共同通信の配信により、北大西洋条約機構(NATO)当局者が「日本での連絡事務所(リエゾンオフィス)開設は現在協議されておらず、事実上断念した」と述べたことが明らかになりました。日本政府とNATOとの間で注目されていたアジア初の常設リエゾンオフィス構想が立ち消えとなった経緯と背景、そして今後の日欧安全保障協力の展望について、歴史的・比較的視点を交えて詳述します。
日本は1990年代半ばからNATOとの対話協力を開始し、2014年には「グローバルパートナー(Partners Across the Globe)」に正式加入しました。以来、サイバーセキュリティや平和支援活動での協力を強化し、2013年4月の共同政治宣言、2014年5月のテロ対策・海賊対処協定締結などを経て、相互信頼を積み重ねてきました(Wikipedia)
リエゾンオフィス構想は、2023年1月に訪日したイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長と岸田文雄首相との会談で初めて公に議論されました。ICWAの報告によれば、ロシアのウクライナ侵攻が世界的安全保障環境を一変させ、日本も「ウクライナの事態は東アジアでも起こり得る」との認識から、欧州との連携を深化させる方針を強めたことが背景にあります(ICWA)
NATOは既に国連(ニューヨーク)、OSCE(ウィーン)、ジョージア、ウクライナ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、クウェートなど非加盟国にもリエゾンオフィスを設置しています。これらはいずれも上級外交官や軍事専門官による情報交換と政策調整を円滑化する目的で設置されており、東京オフィスも「欧州外縁地域との新たな窓口」として期待されました(ICWA)
2023年7月のヴィリニュスNATOサミットでは、当初「今後も東京リエゾンオフィスについて協議を継続する」との文言がドラフトに残ったものの、最終コミュニケに盛り込まれず、構想は先送りと報じられました。中国が強く反発したことや、一部加盟国(フランスなど)の慎重姿勢が影響したと伝えられています(The Guardian、Nikkei Asia)
リエゾンオフィス構想断念は一時は日本の「安全保障戦略の再定義」とも言われましたが、政府は同日、NATOとは引き続きITPP(個別調整パートナーシッププログラム)などを通じ協力を継続すると発表。2025年1月、東京に「日本政府-北大西洋条約機構外交ミッション」を設置し、政治対話の窓口を強化しています(NATO公式サイト)
ロシアによるウクライナ侵攻、中国の海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発といった地政学的リスクが東アジアを取り巻く中、日本は「多層的抑止力」を追求。米国との同盟関係強化と並行し、欧州・インド太平洋の連携構築に注力しています。
東京リエゾンオフィス構想の事実上の断念は、日欧協力の形を見直す契機となりました。しかし、日本とNATOのパートナーシップは依然堅固であり、技術協力や政策対話を通じて「同じ価値観を共有する国家間の連携」は今後も深化すると見られます。東アジアの安全保障環境が一層厳しさを増す中、日欧米の多層的抑止力構築が引き続き重要な課題となるでしょう。
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