山手線駅がクラブに 社長一言から
2025/06/08 (日曜日)
金曜日に「山手線」駅が”クラブ”になる理由…社長の一言、「夜は閑散としないか」から始まった
東京の中心部を環状に結ぶ「山手線」。平日は朝夕の通勤ラッシュ、昼間は買い物客や観光客で賑わいを見せる一方、夜は深夜を除けば閑散とした時間帯があります。そんな「夜の山手線各駅」を、あえて“クラブ”に見立てた新たな街づくりプロジェクトが動き出しました。きっかけは、JR東日本社長の「夜は本当に閑散としてしまう。もっと駅を楽しめないか」という一言でした。この記事では、鉄道駅空間の商業化の歴史、東京のナイトタイムエコノミー(夜間経済)の動向、山手線沿線各駅の特色を活かした開発計画、そして今回の「駅クラブ化」プロジェクトの背景と今後の展望を、2000字以上のボリュームで解説します。
日本で「駅ナカ」といえば1990年代末、JR東日本のエキュートシリーズが先駆けでした。改札内外に飲食店や雑貨店を配置し、乗降客に利便性と付加価値を提供。首都圏の主要ターミナルでは商業施設が駅空間の主役となり、乗客数の増加に伴ってテナント数も拡大しました。さらに2000年代以降は駅直結の商業ビルや高層オフィスビルが次々と誕生し、日中だけでなく朝晩を問わず人々が集まる「駅周辺」の夜間経済が徐々に形づくられてきました。
近年、政府や東京都は「ナイトタイムエコノミー」の振興を掲げ、観光立国や地域創生の一環として夜間の消費・交流を促進。渋谷・新宿・六本木といった繁華街のクラブやライブハウス、深夜営業飲食店が注目される一方、山手線沿線の駅周辺では居住地やビジネス街に偏在し、日没後はスムーズに閉店・人流が途絶えるケースが目立ちました。駅周辺の空き商業スペースや時間貸しスペースを活用し、住民・通勤客・観光客すべてを巻き込んだ「夜も賑わう駅」をどう実現するかが大きな課題となっていました。
2024年秋、JR東日本社長が役員会議の冒頭で放った「本当に夜は閑散としてしまう。どうにか駅をもっと楽しめないか」という一言が全ての始まりでした。担当役員らが改めて駅ごとの乗降データと周辺施設を分析し、山手線全30駅を「週末にちょっと寄り道したくなるクラブ」に変える構想をまとめました。ポイントは以下のとおりです。
駅ごとに異なる人流・街の雰囲気を生かし、イベント企画も多様化します。
駅クラブ化プロジェクトは、夜間の来街者数増加による飲食・小売の売上向上、イベント開催による雇用創出、周辺ホテルの稼働率上昇にもつながります。また観光客への新たなアピールポイントとなり、国外からの訪日客誘致にも寄与。自治体や商店街と協働し、クラブイベントを通じた地域PRや商品開発も進められています。
夜間の賑わい創出には、警備・警察との連携強化や酔客対応、清掃維持が必須。騒音対策やホーム乗降客との動線分離、感染症対策も求められます。さらに、利用者のスマホによるプログラム情報取得・決済が主流となるため、システムの安定運用とサイバーセキュリティの担保も重要です。
プロジェクトは来年度から本格始動予定で、金曜夜を「駅クラブナイト」の固定曜日として定着させる計画です。将来的には地域ごとのサテライト会場を設け、山手線一周の“ナイトツーリズム”を売りに、夜行バスや周遊パスと連携した観光パッケージも検討中。コロナ禍で落ち込んだ夜間需要を刺激する試みとして、国内外の成功例にも引けを取らない新たな都市型ナイトエコノミーモデルの構築が期待されています。
「夜は閑散としてしまう」という社長の一言から生まれた「山手線駅クラブ化」プロジェクトは、駅空間の新たな活用法として注目を集めています。歴史ある駅ナカ商業の延長線上にありながら、夜間経済や観光振興、防災・安全管理といった多面的課題を包括し、東京の「夜の顔」を刷新する挑戦です。金曜夜の山手線各駅に、どれだけの賑わいと創造性が生まれるのか。今後の展開に大きな期待が寄せられています。
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