「仮装身分捜査」で初摘発 警視庁

「仮装身分捜査」で初摘発 警視庁

2025/06/09 (月曜日)

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警視庁が「仮装身分捜査」実施 全国初 詐欺未遂の容疑者を摘発

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はじめに

2025年5月、警視庁は詐欺未遂容疑者を摘発するため、警察官が偽の身分を名乗って犯罪グループに接触する「仮装身分捜査」を全国で初めて実施しました。特殊詐欺グループがインターネット上で「高収入闇バイト」を募集していた事案に対し、捜査員が応募者を装い、実行前の準備段階で証拠を押さえ現行犯逮捕に至ったものです。本稿では、この新手法の狙いと手法、法的根拠、過去の潜入捜査との違い、国内外の事例、それに伴う課題と今後への展望について詳しく解説します。

事件の概要

摘発対象となったのは、被害者宅を訪れ現金やキャッシュカードを強奪しようとする特殊詐欺未遂事件です。捜査を開始した警視庁組織犯罪対策部は、まずインターネット掲示板やSNSでの闇バイト募集投稿を監視。グループの実態を把握したうえで、捜査員を応募者に見せかけ、オンライン面接や現地集合場所で直接やりとりを行うことで、組織の構成員や犯行計画の詳細を内部から確認しました。そして、実行予定日の前日に集合場所で身柄を確保し、未遂の段階で摘発を成功させました。

仮装身分捜査の手法と特徴

仮装身分捜査とは、捜査員があらかじめ作成した偽のプロフィールや身分証明書を使い、犯罪組織の募集活動や関係者と接触する手法です。従来のおとり捜査と異なる点は、相手側が用意した犯罪シナリオに捜査員が自然に加わることで、組織内部の全貌を把握しやすい点にあります。これにより、指示系統の解明や上層部の関与、広域な詐欺ネットワークの実態を迅速に押さえることが可能になります。また、捜査員自身が犯罪を仕掛けるのではなく、相手の計画に乗る形を取るため、犯罪誘発のリスクを抑制できるのも特徴です。

法的背景と正当性の論点

日本の刑事訴訟法では、捜査手法が被疑者の人格権や財産権を制限する場合、法的根拠と比例性が求められます。仮装身分捜査では、偽造した身分証明書の使用や相手との密接な接触が問題となるため、組織犯罪対策特別捜査要綱に基づく厳格な手続きと上級管理職の許可が必須です。警察庁は、「捜査員が犯罪行為を主導しない」「あくまで相手の計画を追跡し、重大犯罪の前段階で阻止する」「偽証や拷問的取調べを行わない」という三原則の遵守を明文化し、正当業務行為として違法性を阻却する立場を示しています。

おとり捜査との比較

おとり捜査は被疑者を誘導して犯罪行為を発生させる方法であり、犯罪の誘発や立証困難性といった問題が指摘されてきました。これに対し仮装身分捜査は、あくまで相手が進める犯罪計画の追跡に専念し、犯罪が自発的に準備される状況を利用して証拠を収集する点が異なります。そのため、立件の確実性と捜査の倫理性が向上すると期待されています。

潜入捜査の歴史的経緯

日本における潜入・変装捜査の起源は、1980年代の暴力団対策強化にさかのぼります。暴力団員に偽の客として接近し、組織図や資金流用の証拠を押さえる手法が発展。2000年代以降は犯罪の多様化に伴い、サイバー空間にも潜入捜査が拡大しました。2024年には警察庁がガイドラインを策定し、今回の摘発はその運用開始後初の適用例です。

海外の事例との比較

アメリカ連邦捜査局(FBI)やイギリス警察では長年にわたり“undercover operations”が行われ、麻薬取引やテロリズム対策に活用されています。これらは厳格な内部監査と法廷審査を経て運用されるため、透明性や被疑者権利保護の仕組みが充実している点が日本との共通点です。一方で、欧州連合(EU)諸国ではプライバシー権を重視し、潜入捜査に対して立法監視が厳しい傾向があります。

課題と今後の展望

仮装身分捜査の導入により、巧妙化する特殊詐欺グループへの攻撃力は高まりましたが、捜査の適正性やプライバシーへの配慮、誤認逮捕の防止など、新たな課題も浮上しています。今後は第三者委員会による定期的な運用レビューや、捜査員の法教育強化、デジタル証拠保全技術の導入が求められます。また、立法機関との連携による明文化された法律整備が、捜査の透明性と社会的信頼を確保する鍵となるでしょう。

まとめ

警視庁による仮装身分捜査の全国初適用は、特殊詐欺対策における大きな変革点です。組織内部に潜入し、未遂段階で阻止する強力な手段となる一方、適法性や倫理性を担保するための仕組み整備が不可欠です。今後は捜査の透明化を図りつつ、犯罪抑止力を持続的に強化するための運用ルール整備と技術革新が期待されます。

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