クック諸島が中国接近 NZ不快感
2025/06/19 (木曜日)
【シドニー共同】ニュージーランド政府は、南太平洋の島しょ国クック諸島への資金援助を打ち切った。ピーターズ外相の報道官が19日に声明を出した。クック政府が、財政や外交、防衛を支えるニュージーランドと事
2025年6月初旬、ニュージーランド政府は南太平洋の島しょ国クック諸島への2025–26年度財政支援(約1,820万ニュージーランドドル)を凍結すると発表しました。ピーターズ外相の報道官によると、この決定は「高い信頼に基づく特別な関係」が損なわれたと判断されたためで、同諸島政府が中国との協定締結について十分な協議を行わなかったことが理由とされています。中国との深まる協力を巡る懸念が背景にあります。
6月19日、ピーターズ外相の報道官は「クック諸島政府がニュージーランドとの事前協議を怠った」と声明を発表し、「関係修復と信頼回復に向けた具体的措置が示されるまで新規支援は見送り、既存資金支払いも停止する」と明言しました。この措置は自由連合協定に基づく防衛・外交協力義務を巡る規定に照らしたもので、同様の理由でミクロネシアのキリバスへの資金援助も凍結されたケースに続く動きです。
クック諸島は1965年にニュージーランドとの自由連合を成立させ、同国が外交・防衛、通貨発行などを担う一方で、首相や議会は自主的な立法権を保持しています。過去3年間でニュージーランドは総額約1億9,400万NZドルの開発援助を実施し、教育、保健、インフラ整備などを支えてきました。その「特別な関係」は、域内他国でも類を見ない政治・経済協力のモデルとされてきました。
今年2月、クック諸島は中国と経済協力協定を締結し、貿易拡大、観光振興、再生可能エネルギー分野への投資、教育奨学金提供などを盛り込みました。しかし、これらは安全保障協力を含まないため、金融面での中国資本流入拡大が懸念されます。ニュージーランド側は「戦略的影響力の拡大を防ぎ、自由連合の枠組みを尊重するため、事前通報と協議を担保すべきだ」と警戒しています。
ニュージーランド国内では、与野党を問わず中国の南太平洋進出に対する懸念が強まり、今回の資金凍結は「主権尊重と安全保障確保の表明」と評価されています。一方、クック諸島首相マーク・ブラウンは「中国との協力はニュージーランドとの関係を補完するものであり、両国関係は揺るがない」と表明し、対立の激化を避けようとしています。
南太平洋地域では、米国・オーストラリア・ニュージーランドが伝統的に影響力を行使してきましたが、ここ数年で中国の経済・インフラ投資が急増しています。港湾や道路、通信施設建設などを通じた「一帯一路」的プロジェクトにより、中国のプレゼンス拡大が進んでおり、各国は経済安全保障の観点から警戒を強めています。資金凍結は、自由連合の枠組みを守るための最後の手段とも言え、域内諸国の外交選択に大きな影響を与えています。
ニュージーランドは資金凍結の解除条件として「具体的な協議再開と透明性確保」を掲げ、クック諸島政府に対応を促します。両政府は年内にも協議を再開し、自由連合協定の枠組みを如何に維持・発展させるかが焦点となります。中国側も援助プログラムの拡充を通じて影響力を強める戦略を続けるため、太平洋地域全体の調整機構強化が急務です。
クック諸島への資金援助凍結は、自由連合関係の見直しと大国間競合の狭間で揺れる南太平洋の縮図と言えます。ニュージーランドとクック諸島は、伝統的な保護・支援関係を守りつつ、中国を含む多様なパートナーシップをいかに調和させるかが、今後の地域安定の鍵となるでしょう。
コメント:0 件
まだコメントはありません。