英ミステリー文学賞「ダガー賞」翻訳部門に王谷晶さん 初の日本人授賞

英ミステリー文学賞「ダガー賞」翻訳部門に王谷晶さん 初の日本人授賞

2025/07/04 (金曜日)

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20年に発表された「ババヤガの夜」は、暴力を唯一の趣味とする女性主人公が暴力団会長の一人娘を護衛し、裏社会の闇を駆け抜けていくハードボイルド小説。21年には日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)の最終候補にも選ばれている。

CWAの審査員は「まるで漫画のように日本のヤクザの生き方を容赦なく暴力的に描くことで、異質な登場人物の深い人間性を際立たせている。厳しく無駄のない物語は独創性に富み、

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英ミステリー文学賞「ダガー賞」翻訳部門に王谷晶さんが初の日本人受賞

2025年7月3日(現地時間)、「英国推理作家協会」(CWA)が主催する世界的権威のミステリー文学賞「ダガー賞」の翻訳部門に、作家・王谷晶さんの『ババヤガの夜』英訳版〈The Night of Baba Yaga〉が選ばれました。英語版の翻訳を手がけたサム・ベット氏との共作で、日本作品として初の快挙です。

1.ダガー賞の歴史と翻訳部門の設立

  • 1955年創設のダガー賞は、アガサ・クリスティやレイモンド・チャンドラーを輩出し、世界最高峰のミステリー文学賞として知られる。
  • 当初は英語で書かれた長編の最優秀作品に贈られる「ゴールド・ダガー賞」が中心だったが、2006年に翻訳部門(Dagger for Crime Fiction in Translation)が独立。英語に訳された優れた海外ミステリーを顕彰する枠組みが整備された。
  • 長い歴史の中で、フランスやスカンジナビアなど欧州作品が主流を占めてきたが、アジア作品の受賞は今回が2例目、かつ日本人としては初の受賞となる。

2.『ババヤガの夜』とその魅力

原作の『ババヤガの夜』は、河出書房新社から2023年5月に文庫化された長編ミステリー。元不良少女の依子と、暴力団組長の一人娘・美鈴という二人の女性が、屋敷の秘密を探る中で繰り広げる“シスター・バイオレンス・アクション”が話題を呼びました。

  • タイトルの「ババヤガ」は、スラブ民話に登場する老女魔女を指し、物語中の屋敷で代々語り継がれる“呪い”の象徴として機能する。
  • 憎しみと共感が交錯する姉妹のような関係性描写、犯罪組織の内情、ラストに仕掛けられた衝撃的トリックが高評価を受けた。
  • 英文版は2024年9月にFaber & Faber社から刊行。ベット氏による抑制のきいた翻訳が、原作の持つ緊張感と哀切を忠実に伝え、英語圏読者にも絶賛された。

3.これまでの日本作品のノミネートと受賞候補

過去、東野圭吾や横山秀夫、伊坂幸太郎など日本を代表するミステリー作家の作品が翻訳部門でショートリスト入りしてきましたが、受賞には至りませんでした。

  • 2017年:横山秀夫『64(ロクヨン)』英訳版が長編部門で入賞。
  • 2024年:柚木麻子『BUTTER』英訳版が翻訳部門ショートリスト入り。
  • 今回の王谷晶『ババヤガの夜』と柚木麻子『BUTTER』は最終選考段階で僅差と報じられ、初の日本人受賞が大きな話題に:contentReference[oaicite:3]{index=3}。

4.海外ミステリーの翻訳潮流と意義

近年、韓国や中国などアジア圏のミステリーも欧米市場で注目度を高めています。質の高い翻訳は、原作の文化的背景や微妙なニュアンスを再現しつつ、異文化理解を促す重要な役割を担います。

  • 韓国ミステリーでは、キム・ヨンハの現代犯罪小説が欧米翻訳部門で評価され、翻訳者の功績も注目。
  • 本受賞を機に、日本ミステリーの世界的認知度向上と、翻訳・出版業界のさらなる国際展開が期待される。

5.類似事例との比較

  • 米国のエドガー賞翻訳部門:2020年に中国のチェン・チュアン『オリエント急行殺人事件』中文版が受賞。
  • フランスの“Grand Prix de Littérature Policière”翻訳部門:日本の浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』仏訳版が2005年に受賞。

まとめ

王谷晶さんの『ババヤガの夜』がダガー賞翻訳部門を受賞したことは、日本ミステリーが世界最高峰の舞台で評価された歴史的瞬間です。原作の斬新なドラマ性と翻訳の高い完成度が融合し、欧米読者の心を掴みました。今後は、日本発ミステリーのさらなる海外展開が加速するでしょう。新たに注目を浴びる翻訳者や作家が次々と登場し、国際的なクリエイティブ交流が一層活性化することが期待されます。

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