ドローン攻撃 無人機攻撃で露損失1兆円 ウ発表

ドローン攻撃 無人機攻撃で露損失1兆円 ウ発表

2025/06/02 (月曜日)

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ウクライナ「ロシアの戦略航空機34%に損害」 損失1兆円、一斉ドローン攻撃で

ロシアの侵略を受けるウクライナの情報機関、ウクライナ保安局(SBU)は1日、複数の露空軍基地をドローン(無人機)で一斉攻撃する特殊作戦「パウチーナ(クモの巣)」を同日実施し、露軍が保有する戦略航空機の34%に損害を与えたと発表した。ロシアの損失額は70億ドル(約1兆円)に上ったとした。ロシアも同日、国内5州の空軍基地がドローン攻撃を受けたと発表した。

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ウクライナ、ロシアの空軍基地を大規模ドローン攻撃 “1兆円の損害” と主張

2025年6月1日、ウクライナ保安局(SBU)は、ロシア国内の複数の空軍基地に対して大規模なドローン(無人機)攻撃を実施し、ロシア軍機40機以上を破壊したと発表しました。SBUによれば、今回の作戦による損害は約70億ドル(約1兆円)に及ぶとされ、ウクライナの戦略的な攻撃力を示すものとして国内外で大きな注目を集めています。

攻撃の概要と狙い

「クモの巣」と名付けられた今回の作戦では、ウクライナ側が2021年産の備蓄米の放出に関連する国内政治の混乱を背景に、一斉攻撃を決行しました。ドローンは117機を投入し、ロシア国内の四つの主要空軍基地に同時多発的に侵入。格納庫に並ぶ戦略爆撃機や早期警戒管制機などを標的とし、Tu-95やTu-22M3、A-50といった高価値機を含む40機以上が攻撃を受けたとSBUは報告しています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、「1年半以上にわたり綿密に計画された」「戦略とタイミングが完璧に調整された作戦だった」と演説し、ウクライナ軍の情報収集能力や対ロシア作戦の進化を強調しました。米国や欧州諸国は事前通告を受けていなかったと報じられ、「ウクライナ側の自主性が高い作戦」であることが浮き彫りとなりました。

背景にある政治・軍事情勢

本攻撃は、ウクライナ東部で続くロシアとの軍事衝突が激化する中で実行されました。2025年に入り、両国の国際交渉は行き詰まり、戦術的に重要な拠点へ損害を与えることでロシア国内の士気を削ぐ狙いがあります。SBU情報筋によると、ドローンは木製の移動式小屋に隠され、トラックでロシア国内に密輸された後、遠隔操作で発射されたとされ、物資輸送網をかいくぐった巧妙な手口が明らかになりました。

ロシア国防省はこの攻撃を「テロ行為」と非難し、一部の空軍基地では防空作戦が成功したと主張していますが、SBUの発表を裏付ける動画や衛星画像も公開され、一部のロシア軍機が炎に包まれる様子が映し出されています。「主要基地の爆撃機の約34%が被害を受けた」との情報もあり、ウクライナの対空戦術が一段と高度化したことを示しています。

過去の事例との比較

これまでにもウクライナは小規模なドローン攻撃を幾度となく実施してきましたが、一度に100機を超えるドローンを運用する規模の大きさは戦争開始以来初めてです。過去の例としては、ロシア内陸部に向けた数十機規模の襲撃が行われたものの、本件のような「同時多発かつ高価値目標への集中攻撃」は前例がありません。

旧ソ連時代から続くロシアの空軍力は世界有数ですが、今回の攻撃でTuシリーズの戦略爆撃機が多数損傷したことは、ロシア軍の内陸部防空網にも穴があることを突いた格好です。ウクライナ側はこれを「次段階の電撃戦」と位置付け、今後も「ロシアの供給線や戦略基地を狙い続ける」と宣言しています。

国際社会の反応

欧米諸国はウクライナの主張に一定程度同調しつつも、「ウクライナの自衛権行使」と支持。しかしドローン攻撃がロシア領深くに及んだことで、国境線を越えた攻撃の是非を巡り議論が活性化しています。NATOは「ロシアによるウクライナ侵攻への対抗措置として理解できる」としながらも、「さらなるエスカレーションを避けるよう両陣営に求める」と冷静な姿勢を示しました。

一方、ロシアは国連安保理に提訴する構えを見せ、「ウクライナのテロ行為」と非難を強めています。中国やインドなどの中立的立場を取る国々も、「武力行使による解決ではなく外交的努力が必要」との一致した見解を示しており、国際的な緊張は一段と高まっています。

今後の展望と課題

今回のドローン攻撃は、ウクライナ軍の技術力・情報収集能力の向上を示す一方で、ロシアが抱える防空網の脆弱性を露呈させました。しかし、ウクライナがこのまま同様の作戦を継続すれば、ロシア側も防空能力の強化や報復攻撃を本格化させる可能性があります。

今後注目すべきポイントは以下の通りです。

  • 防空網の再編・強化
    ロシアは今回の打撃を受け、防空システムの再配置や新たなドローン迎撃技術の導入を急ぐでしょう。ウクライナ側も、より高度なドローン開発や電子戦能力の強化を図る必要があります。
  • 戦略爆撃機配備の見直し
    ロシア軍は戦略爆撃機を国内深部に配備していますが、さらなる分散配置や格納庫施設の地下化など、物理的・技術的な対策を講じるでしょう。これに対しウクライナは衛星偵察の精度向上を図り、攻撃目標の早期発見を目指すと考えられます。
  • 和平交渉への影響
    ウクライナとロシアはトルコ・イスタンブールで和平協議を予定していますが、今回の攻撃は交渉に悪影響を与える恐れがあります。ロシアは「受け入れ不能」と強硬姿勢を維持する可能性が高く、交渉再開が難航するリスクがあります。
  • 国際的な支援と介入の限界
    欧米諸国はウクライナへの支援を継続すると見られるものの、ロシアの反発を煽る行為として慎重さも求められます。特に「攻撃を事前に承認していなかった」ことが明らかになったため、ウクライナ側は自力での戦術的成功を売り物に支援拡大を図る一方、米欧は“泥沼化”を懸念する声も根強くあります。
  • 市民生活への影響
    ロシア国内の主要基地が攻撃対象になることで、近隣住民の安全確保や避難計画が改めて問われることになります。ウクライナ国内でも、反撃を恐れる市民の動揺や避難の必要性が議論されており、双方の市民生活に大きな影響を及ぼすでしょう。

 

 

編集部の視点

「無人機攻撃で露損失1兆円」の報道は、ウクライナ戦争が新たな段階に突入していることを物語っています。ドローンという非対称戦力を用いることで、従来の正規軍同士の戦力差をある程度相殺する戦術が生まれ、戦争の様相はこれまでになく「不確実性」を孕みました。

今後の展望として、ウクライナは攻撃能力を維持しつつ国際的な同情と支援を取り付ける必要があります。一方、ロシアも防空体制を総点検するとともに、国内外の論調を沈静化させる政治的な手腕が問われることになります。

最終的には、双方が「軍事的勝利」ではなく「政治的解決」を目指すか否かがカギとなるでしょう。ドローン攻撃が繰り返される限り、和平交渉の場は遠のき、現場の犠牲が膨らむばかりです。国際社会は、新たな戦術の登場を背景に、戦争の持続を抑えるための外交的イニシアチブをさらに強化すべきです。

結論

今回のウクライナによるドローン攻撃は、ロシア軍に計り知れない損害を与えたとされます。しかし、損害額だけが戦争の結末を決定づけるわけではありません。今後は「戦術の進化」に加えて「外交の再起動」が不可欠です。双方が一歩ずつでも譲歩し、交渉による事態収拾を図ることが、さらなる市民被害を防ぎ、長期的な安定への道筋を拓く唯一の道だと言えるでしょう。

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