干渉なしに指導者選択を 米、チベットで中国けん制 ダライ・ラマ14世、90歳に

干渉なしに指導者選択を 米、チベットで中国けん制 ダライ・ラマ14世、90歳に

2025/07/06 (日曜日)

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国際 中国ニュース

声明は、ダライ・ラマが団結や平和、思いやりを体現し、人々に希望を与え続けているとたたえた。チベットの人々の人権や自由を推進していく米国の取り組みは揺るがないと強調した。(共同)

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米国務省声明が示すチベット問題の現状と国際的意義

2025年7月5日、米国務省はティベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の90歳誕生日を前に声明を発表し、「団結や平和、思いやりを体現し、人々に希望を与え続けている」と称賛するとともに、「チベットの人々が干渉なしに宗教指導者を自由に選び、崇拝することを支援する」と述べ、チベットの人権や自由を推進していく米国の取り組みは揺るがないと強調しました(出典:ワシントン共同)。

チベットとダライ・ラマの歴史的背景

チベットは1950年の中国人民解放軍による侵攻以来、中華人民共和国により一貫して中央集権的統治下に置かれてきました。1959年のチベット蜂起を受け、当時の最高指導者ダライ・ラマ14世はインドに亡命し、以後亡命政府を樹立してチベットの文化・宗教・人権状況を国際社会に訴えてきました。ダライ・ラマは平和的自決を主張しノーベル平和賞も受賞するなど、チベット問題の象徴的存在として広く知られています。

声明の主なポイントと意図

米国務省声明の核心は二つあります。一つは「宗教指導者を干渉なしに選べる権利」を明言したこと。中国政府が後継指導者を任命する手続きを通じた統制を強めるなか、米国はチベット仏教の自主性を支持する姿勢を鮮明にしました。二つ目は、ダライ・ラマの「団結・平和・思いやり」という価値観を評価し、チベットの人権と自由を引き続き支援する意志を示したことです(出典:ワシントン共同 )。

米中関係におけるチベットカードの役割

近年、米中は貿易・技術・地政学的競争を深める一方で、人権問題を巡る対立も激化しています。ウイグル自治区や香港と並んでチベット問題は米国が中国を批判する主要な論点の一つであり、米政府は定期的に年次報告書や制裁リストで中国当局者を名指しすることで、対中抑止力を維持しようとしています。声明は、軍事や経済以外の「価値外交」の一環として位置づけられ、国内外での支持を狙ったものともいえます。

国際社会の反応と類似事例

欧州連合(EU)やカナダ議会なども近年、チベット人権を巡る決議や声明を採択しています。2023年には欧州議会が「チベットにおける宗教・文化的抑圧の即時停止」を求める決議を全会一致で可決し、欧州対外行動局(EEAS)は中国当局に対し宗教指導者の選挙干渉を非難しました。また、インド政府も亡命チベット人コミュニティに一定の自治権を認めており、チベット問題は米中以外でも各国の政策課題となっています。

中国側の強硬姿勢と対応

中国政府は声明に対し「内政干渉」「テロリストの擁護」として非難を表明し、外交ルートを通じて米国に抗議しました。中国国務院台湾事務弁公室や外務省報道官は、ダライ・ラマを「分裂主義者」と位置付け、米国の人権外交を批判。チベット自治区内では僧院の警備強化や情報統制の一層の強化が報告されており、緊張緩和の糸口は依然として見えにくい状況です。

チベット人権運動の現状と課題

亡命チベット人社会では、国連や国際人権団体との連携強化、若手リーダー育成などが進められています。米国議会上院の超党派議員グループは、年次報告書でチベットの宗教・教育・言語権の保護を求める条項を盛り込み、国外避難先支援予算の拡充を図っています。しかし、資金面や現地情報の制約、国際世論の関心の薄れといった課題もあり、運動は長期戦の様相を呈しています。

歴史的教訓と比較:南アフリカ・アパルトヘイト後の和解

人権抑圧に対する国際制裁と対話の重要性は、南アフリカのアパルトヘイト体制終焉後の真実和解委員会(TRC)設立にも示されています。国際社会による制裁圧力と被抑圧民族のリーダーが対話に臨むことで、和平と制度改革が進んだ事例は、チベット問題解決へのヒントにもなり得ます。

今後の展望と戦略的示唆

  • 米国による追加制裁措置の可能性:人権問題での強硬策継続
  • 多国間協調の深化:EU、カナダ、日本など同盟国との共同声明
  • 技術的支援:情報公開・暗号化通信支援による亡命コミュニティ支援
  • 対話の再開:中国との非公式チャネル構築による緊張緩和の模索

まとめ

今回の米国務省声明は、ダライ・ラマ14世の「団結・平和・思いやり」という普遍的価値を称賛すると同時に、チベットの人々が「干渉なしに宗教指導者を選ぶ自由」を明確に支持するものでした。チベット問題は、単なる宗教・人権問題にとどまらず、米中の戦略的競合や国際社会の価値観対立を映し出す鏡でもあります。

歴史的に見れば、南アフリカや東欧の例が示すように、国際的制裁と当事者間の対話が並行して進められることで、被抑圧民族の権利回復と平和的解決の道が開かれる可能性があります。しかし、現状では中国側の強硬姿勢が続き、チベット自治区内での宗教・文化的抑圧は依然深刻です。

今後は、米国が追加制裁や多国間協調を通じて圧力を維持しつつ、非公式チャネルでの対話の可能性を探る二軸戦略が求められます。同時に、情報技術支援や亡命コミュニティの能力強化を進めることで、チベット人権運動の持続可能性を高めることが重要です。こうした取り組みを通じて、ダライ・ラマ14世の誕生日を機に高まった国際的関心を、実効性のある人権改善と平和構築への推進力に転換していく必要があります。

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