ウでのドローン製造を検討 ルノー
2025/06/09 (月曜日)
国際ニュース
【AFP=時事】フランスの自動車大手ルノーは8日、政府からウクライナでのドローン製造を検討するよう打診されたことを明らかにした。ただ、決定はまだなされていないとしている。
2025年6月8日、フランスの自動車大手ルノーは、政府からウクライナ領内で無人航空機(ドローン)の現地製造を検討するよう打診を受けたことを発表しました。現在のところ最終決定には至っていないものの、ルノーはこの要請を真剣に受け止め、該当可否や体制構築の可能性を検討中です。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドローンは情報偵察、精密攻撃、後方支援など多様な用途で戦況を左右しています。小型から中型まで様々な機体が活用され、敵陣地の動向把握や物資投下、対戦車ミサイルの誘導など、戦時下における無人機技術の重要性が格段に高まりました。
フランス政府は、ウクライナ支援の一環として、有志連合からの装備供与だけでなく、現地生産体制の確立による即応性向上を目指しています。国内防衛産業との共同プロジェクトを通じて、欧州各国が連携しながら自前のサプライチェーン構築を模索する意図があります。
ルノーは自動車エンジニアリングで培った電動駆動技術や大量生産のノウハウを持ち、精密機械の組み立てラインを短期間で転用できる点が評価されています。部品調達から組み立て、品質管理に至るまで、自動車同等またはそれ以上の生産管理能力をドローン製造へ応用可能です。
第二次世界大戦中、各国の自動車メーカーは戦車や軍用車両の大量生産に参画しました。現代でも同様に、自動車メーカーの生産ラインを原型とし、小型ロボットや無人機の製造にシフトする動きが見られます。技術転用の先例としては、ジェットエンジン部品製造や高性能センサー開発などがあります。
EUは近年、域内企業による防衛技術協力強化を打ち出し、資金支援や法整備を進めています。欧州防衛基金の活用や国境を越えた研究開発プロジェクトへの参加が推奨されており、ルノーの参画はこうした潮流と合致します。
自動車産業がドローン製造に参入することで、フランス国内の工場稼働率向上や新たな付加価値創出が期待されます。防衛関連の受注拡大は産業基盤を支え、中長期的には関連サプライヤーや技術スタートアップの成長にも寄与する可能性があります。
一部の平和団体や野党からは「民生品メーカーが武器製造に関与するのは業種の逸脱」との批判が出ています。一方、政府与党や防衛専門家からは「有事における迅速な装備供給体制強化は国家安全保障上不可欠」との賛意も示されています。
日本では過去に自動車メーカーの日産や三菱重工が装輪装甲車の開発・製造に協力し、軍用車両市場に参入していました。こうした先例を踏まえれば、ルノーのドローン製造も技術転用と新産業創出のモデルケースと位置づけられます。
ウクライナ政府は、現地生産に強い関心を示しており、「自国での装備製造は防衛力の自主性を高める」「兵站上のリスク低減につながる」と要請しています。現地政府や民間企業との合弁会社設立も視野に入れた交渉が進行中です。
ドローン・ミサイル技術は軍事転用の懸念から、輸出管理が厳格に定められています。フランス政府は製造許可に加え、輸出許可手続きや機密保持、安全保障審査を経る必要があるとしています。
ルノーは数か月以内に社内検討結果を政府に報告し、事業化の可否を判断します。正式参画が決まれば初期試作ラインを設置し、年末までに試験飛行を実施する計画です。中長期的には小型偵察ドローンから戦術攻撃型ドローンへの展開も視野に入れています。
ルノーへの打診は、自動車大手が軍事用ドローン製造に関与する初の試みとなる可能性があります。技術・生産力の活用による迅速な供給体制構築は、ウクライナ戦線の支援のみならず、欧州全体の防衛産業強化に新たな道を開く契機となるでしょう。政府・産業界・市民社会が議論を深めながら、平時の技術と有事の需要バランスをどう取るかが問われています。
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