北朝鮮、イスラエル批判 外務省談話で「断固糾弾」 イランは反米で結束する友好国
2025/06/19 (木曜日)
北朝鮮とイランは反米で結束する友好国。一方、北朝鮮の国内向け主要メディアである朝鮮労働党機関紙、労働新聞にこの談話は掲載されず、深入りは避けたい姿勢もにじませた。(共同)
2025年6月4日、北朝鮮とイランが共同で反米姿勢を強調する談話を発表しました。両国はかねてから「米国こそが最大の敵」として結びつきを深め、武器取引や技術協力を通じて国際的孤立を逆手に取る戦略を推進してきました。しかし、北朝鮮の主要国内向け機関紙である労働新聞には、この談話が一切掲載されず、深入りを避けたい姿勢がうかがえます。本稿では、北朝鮮とイランの結びつきの歴史的背景と現在の実態、さらになぜ国内報道が沈黙したのか、その理由を解き明かします。
イラン・イスラム革命(1979年)成立後、革命政府はソビエトや西側諸国と距離を置き、対米強硬路線を鮮明にしました。一方、北朝鮮も朝鮮戦争終結後の米軍駐留を「侵略」とみなし、主体思想(チュチェ)を掲げて独自路線を推進。両者は1980年代、イラン・イラク戦争を背景に武器取引を通じて結びつきを強化し、北朝鮮は短距離弾道ミサイルや小火器を供給、イランは原油や資金を提供しました。
2000年代以降、両国は国連安保理の武器禁輸決議をかいくぐる形でミサイル技術や核開発の情報交換を拡大しました。米国議会調査局の報告では、北朝鮮がイランの核計画に助言を行い、イランが北朝鮮の弾道ミサイル性能向上を支援したとされます。また近年では、ロシア経由の密輸ルートを通じて部品や試験データが共有される動きも確認されています。
「二度の“悪の枢軸”指定」(2002年)以降、両国は米国を念頭に「自国の安全は自国で守る」姿勢を強調。国際社会の制裁は結果として国内結束を高める効果を生み、両政府は国内向けに「我々は外敵と闘う正義の同盟国だ」と宣伝しています。特にイランの国営IRNAや北朝鮮の朝鮮中央通信は、欧米の動きを鋭く批判し、対抗措置を誇示することで、国民のナショナリズムを煽っています。
にもかかわらず、北朝鮮の労働新聞は今回の両国談話に触れませんでした。理由の一つは、国内向けには「米国との緊張緩和」や「対日・対韓外交改善」をアピールし始めた現在の金正恩体制との整合性を保つためです。実際、ここ数年、北朝鮮は限定的ながら韓国や日本との通信チャネルを開設し、観光など「経済制裁緩和」の予兆を演出しています。反米路線の一貫性を国内で強調しつつ、同時に「一歩の歩み寄り」を匂わせたい政府の思惑が、談話の国内報道を封印させたと考えられます。
北朝鮮とイランの軍事協力は、米国の中東・アジア両フロンティア戦略にとって深刻な挑戦となっています。両国の連携が深まれば、中東のシリア、イエメン紛争や朝鮮半島有事の際、情報共有や経済制裁の回避策が一層高度化する恐れがあります。一方で、北朝鮮が経済制裁緩和を目指すのであれば、イランとの“全面協力”を表立って進めにくいジレンマも抱えています。
北朝鮮とイランは表面的に「反米同盟」を謳いつつ、国内報道ではあえて距離を置く複雑な戦略を展開しています。両国の関係は純粋なイデオロギー一致ではなく、制裁下での生存戦略としての「リアルポリティクス」によるものです。今後、米国の圧力や国際情勢の変化が、両国の協調をさらに深化させるのか、あるいは国内向けプロパガンダと現実政策の乖離を生むのか、継続的な注視が必要です。
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