米国のイラン核施設攻撃に謝意と称賛 NATOのルッテ事務総長「安全にしてくれた」
2025/06/25 (水曜日)
NATO当局者は、メッセージがルッテ氏本人から24日に送られたものだと認めた。ルッテ氏はイラン攻撃を「紛れもなく非凡なことで、誰もあえてやろうとしなかったことだ」と評価した。
NATOは25日までの首脳会議で、米側の要求に沿った防衛支出増大で合意する見通し。ルッテ氏は、加盟国を説得するのは「簡単なことではなかった」と振り返りつつも「あなたの勝利となる」と、トランプ氏の圧力が奏功したと持ち上げた。
2025年6月24日、オランダ・ハーグで開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に先立ち、NATO当局者は「米大統領ドナルド・トランプ氏への祝賀と支持を表明するメッセージは、事務総長マーク・ルッテ氏本人から6月24日に送信されたものだ」と公式に認めました。ルッテ氏はメッセージの中で、米軍がイラン軍基地を急襲した行動について「紛れもなく非凡なことで、誰もあえてやろうとしなかったことだ」と高く評価し、「あなたの勝利となる」とトランプ氏を持ち上げました。
2025年6月23日未明、米国防総省はホルムズ海峡付近のイラン軍基地に対し精密誘導ミサイルを投入し、複数の標的を破壊しました。同措置は、イラン側が民間船舶への攻撃準備を進めているとの情報を受けたものと説明されました。報道機関によると、イランも翌日に米軍施設を狙った報復ミサイルを発射し、中東情勢は一気に緊張が高まっていました。その直後、ルッテ氏が「歴史的瞬間」と呼んで称賛したことで、NATO内部では是非を巡る議論が巻き起こりました。
マーク・ルッテ氏は2024年10月に第14代NATO事務総長に就任。オランダ首相として史上最多14年間在任し、欧州連合(EU)内での調整力に定評があります。事務総長としては「欧州の防衛自主性」を掲げつつも、米国との同盟維持を重視。今回のメッセージは、トランプ政権からの防衛支出引き上げ要請を円滑に受け入れるための“政治的賛辞”と重ね合わせた戦略的発言とみられています。
従来、NATO加盟国には「GDP比2%以上」の防衛支出目標が課されていましたが、ハーグ会議では「2035年までに5%以上」への大幅引き上げが提案されました。これには、欧州諸国が社会福祉や教育予算を削ってまで防衛費を増やす必要性が出てくるため、各国の財政負担増は避けられません。ドイツやフランスなどでは「脅威評価の過剰適用」「国内改革の遅れ」といった批判も起こっており、議会での承認手続きが難航する懸念があります。
冷戦期のNATOはソ連包囲網として軍事連携を強化し、加盟各国は高い軍事支出を維持していました。1991年のソ連崩壊後、一時は「平和配分」が進み防衛費は減少傾向にありました。しかし、2014年のウクライナ危機や2022年のさらなるロシア侵攻を経て対露抑止力が再び重視され、2025年の“5%目標”は当時の緊張感を上回るものです。
東欧諸国は「米国の強力な後押し」を歓迎し、防衛費増額に積極的です。一方、北欧や地中海沿岸諸国では「社会保障の削減に不安」との声が根強く、折衝は難航しています。NATOは今後、個別国ごとのタイムラインを設定し、段階的に支出を積み増す「多層的アプローチ」を導入すると発表。2026年以降は年次レビューで進捗を確認し、達成度に応じた支援策を講じる計画です。
ルッテ氏はメッセージの中で「中東対応が欧州の安全保障強化につながる」と述べましたが、NATOとしてはインド太平洋諸国との連携強化にも関心を示しています。日米豪印クアッドやASEANとの対話枠組みとは別軸で、欧州からの安保支援や技術協力を深める狙いです。ただし、アジア地域は米中対立が激化しており、NATOがどの程度踏み込んだ行動をとるかは慎重な調整が必要です。
ハーグ首脳会議は25日まで続き、防衛支出5%目標は最終的に「合意文書」に盛り込まれる見込みです。ルッテ事務総長の“トランプ支持”発言は賛否両論を呼び、同盟内の意思統一を図る難しさを浮き彫りにしました。今後は、各国の議会承認や国内調整が焦点となりますが、欧州の安全保障構造は大きな転換点を迎えています。加盟国は「相互防衛」の原則を守りつつ、社会的合意形成と持続可能な予算配分を両立させる必要があります。
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