「頂き女子」詐取金収受公判、ホスト店元責任者に2審も有罪 名古屋高裁
2025/06/26 (木曜日)
地域ニュース
弁護側は控訴審で、1審判決には事実誤認や法令適用の誤りなどがあると主張していた。
1審判決によると、責任者だった東京・歌舞伎町のホストクラブで、元店員の男(28)=有罪確定=と共謀し、客の渡辺真衣受刑者(27)がだまし取った金と知りながら飲食代として計2850万円を受け取った。
2025年6月26日に産経新聞が報じたところによれば、歌舞伎町のホストクラブ店長を務めていた28歳の男性が、元店員の男(28)=有罪確定=と共謀し、客の渡辺真衣受刑者(27)が詐欺でだまし取った金を知りながら飲食代として計2,850万円を受領したとして、控訴審でも1審判決の事実誤認や法令適用の誤りを指摘して争っています(出典:産経新聞)。
この事件の背景には、2021~22年にかけて「頂き女子りりちゃん」を名乗る渡辺真衣被告がSNSを通じてホストクラブへの“ツケ払い”を誘導し、複数の客から総額約1億5,500万円をだまし取ったとされる大規模詐欺事件があります。渡辺被告は2024年に懲役9年の実刑判決を受け、同時に被害弁済のための追徴金も命じられました。1審の東京地裁は、店長の男性について、客からだまし取った金を“飲食代”として受け取った業務上横領罪および詐欺幇助罪で懲役3年(執行猶予5年)、追徴金1079万円を科す判決を言い渡しました。
弁護側は控訴審で、店長が受領した2,850万円について「客が詐欺で得た金とは認識していなかった」と主張し、1審判決の事実認定を争点としています。また、法令適用についても、詐欺幇助罪ではなく単なる収得罪(刑法252条)にとどまるべきとの見解を示し、追徴金の取消しと執行猶予への変更を求めています。これに対し検察側は、ホストクラブでの高額飲食代請求の不自然さや、被告が売上金の管理を担う立場であった点を重視し、詐欺幇助罪の成立を主張しています。
ホストクラブ業界では利用客に対し高額な“ツケ払い”を促し、店側が売上金を後日回収する慣行があります。本来は信用取引の一環ですが、渡辺被告のように詐欺行為で得た金をツケ払いに充てるケースが問題化しています。業界内では、客となる女性がSNS等で高額な飲食代を自慢し合う文化がある一方、返済不能に陥るとホストクラブから催促や法的措置が行われ、さらなる人間関係トラブルや債務問題を招くケースが後を絶ちません。
名古屋高裁で2025年3月に判決があった「頂き女子りりちゃん」事件でも、担当ホストが詐欺被害金を受け取ったとして追徴金の可否が争われました。名古屋高裁は「共犯者が被害者に賠償金を支払った事実」を考慮し、1審判決を破棄して追徴金を課さない判断を下しています(出典:名古屋テレビ :contentReference[oaicite:0]{index=0})。今回の東京高裁控訴審でも、同様の事情認定の相違が審理の焦点となる可能性があります。
控訴審では、(1)被告が受領金の出所を認識していたか、(2)店長としての善意取得の有無、(3)詐欺幇助罪の成立要件と刑の相当性、(4)追徴金の算定方法と返済状況──などが審理されます。特に被害弁済が進んでいることを理由に追徴金を減額または免除する事例もあり、実際に上告審に至る前に高裁判決で方向性が示される見込みです。
本件は、SNS時代の消費文化や若年層の資金調達手段、風俗産業の収益構造に深く根ざした事件でもあります。高額ツケ払いを利用する若者の背後には、経済格差や消費欲求の高まり、労働環境の不安定化があり、司法の判断のみならず社会全体で再発防止策を講じる必要があります。政府や自治体は、消費者教育の強化や風俗営業法の見直し、SNS利用のガイドライン策定など、多面的な対策を求められます。
東京高裁で審理中のホストクラブ店長の控訴審は、1審判決の事実誤認や法令適用の誤りに加え、ツケ払い文化を巡る業界慣行への問題提起が重層的に絡む難しい裁判です。判決は、詐欺被害金の収得行為とホストクラブというサービス業の特殊性をどう評価するかが焦点となります。6月末または7月上旬に判決言い渡しが予想され、被害者弁済の進捗も含めた社会的影響にも注目が集まります。
出典:産経新聞「[刑事]東京高裁控訴審 歌舞伎町ホストクラブ店長、詐欺被害金2,850万円受領控訴審で事実認定争う」(2025年6月26日)
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