「ゾンビドラッグ」米国での現状
2025/07/06 (日曜日)
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2mgで致死量「フェンタニル」中毒者だらけの“ゾンビタウン”とは?在米日本人「処方された薬に入ってる」「警察は見て見ぬフリ」
2mgで致死量「フェンタニル」──“ゾンビタウン”に蔓延する合成麻薬の恐怖
合成麻薬フェンタニルの過剰摂取による中毒者が“ゾンビタウン”と呼ばれる米国各地の都市部にあふれ、わずか2mgで致死量に達するその強烈な毒性が重大な社会問題となっています。在米日本人からは「処方された薬にフェンタニルが混入していた」「警察は見て見ぬフリをしている」といった声も上がり、日本国内への流入懸念も高まっています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
フェンタニルはオピオイド系鎮痛剤の一種で、ヘロインの約50倍、モルヒネの約100倍という極めて高い鎮静・多幸感作用を持つ合成麻薬です。医療用に開発されたものの、依存性が強く、過剰摂取で呼吸抑制を引き起こし、わずか2mg(錠剤一錠以下)で致死量に達します。2016年に人気歌手プリンス氏が過剰摂取で死去した事例や、米CDCによると「2022年に82,000人以上がオピオイド過剰摂取で死亡」と、米国で最も死亡者数の多い薬物クラスとなっています。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
米東部フィラデルフィアのケンジントン地区では、薬物常用者が路上でうつむき動けなくなる様子から「ゾンビタウン」と呼ばれる光景が日常化。現地メディアの取材映像では、中毒者が左右に揺れながら立ち尽くし、支援団体が救護に当たる姿が報じられました。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
西海岸サンフランシスコでも、2024年1月に州非常事態宣言が出され、薬物中毒者支援団体と自治体が連携して緊急対応に追われています。中毒者の女性は「毎日使わないと禁断症状で苦しむ」「一袋10ドル(約1,500円)で簡単に入手できる」と証言しており、路上生活を余儀なくされる例も少なくありません。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
在米日本人によると、「痛み止めとして処方された薬にフェンタニルが含まれていた」「警察に通報しても『個人の問題』として対応せずに閉口した」と語るケースが散見されます。これにより、中毒者の家族が警察や病院に受け入れを拒まれる事態も起きており、治療を受けられず命を落とす例も報告されています。こうした背景から、薬局や医師への規制強化、警察の捜査・救護体制の見直しを求める声が高まっています。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
米国におけるオピオイド危機は1990年代後半の処方薬ブームに端を発し、製薬会社パーデュー・ファーマ(Purdue Pharma)が開発した延長放出型オキシコンチン(OxyContin)が過度に処方されたことが発端です。Sackler一家が経営するパーデュー社は積極的なマーケティングを展開し、処方量を急増させました。これにより依存患者が急増し、やがて違法薬物であるヘロインやフェンタニルへの移行が加速。2021年には年間82,000人のオピオイド関連死を記録し、フェンタニルは第3波として死者を爆発的に増やしました。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
フェンタニルやその前駆物質は主に中国の化学メーカーからメキシコのカルテルに輸出され、米国へ密輸されるケースが多いとされます。2025年初頭、トランプ前大統領は中国からの前駆体輸入に20%関税を課しましたが、中国政府は「実効性が乏しい」と反発。その後、中国は国際麻薬規制条約に基づき原料規制を強化する措置を発表しています。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
カナダでは、英国を経由した通販サイトを通じてフェンタニル類が流入し、2017年以降に過剰摂取死が急増。2022年には1万人以上がオピオイド過剰摂取で死亡し、政府は薬物使用施設(Supervised Consumption Sites)を設置して安全に薬物を使用できる環境整備を進めています。欧州では、ポルトガルが2001年に薬物非犯罪化法を制定し、依存者を医療と社会支援へ誘導する政策が一定の成果を上げています。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
フェンタニルは“史上最悪の麻薬”と称されるほどの過度な鎮痛作用と高い致死性を併せ持ち、米国では過剰摂取死が今年だけで8万人を超える深刻な社会問題となっています。路上で“生きる屍”となる中毒者があふれる“ゾンビタウン”の実態は、国際的な薬物流通の複雑さと治安当局の対応の限界を露呈させています。在米日本人からも「処方薬に混入」「警察が放置」といった声が上がり、日本国内への流入リスクにも警鐘が鳴らされています。
オピオイド危機は1990年代の処方薬市場の拡大に起因し、製薬企業の過度なマーケティングと監督当局の対応遅れが重なって激化しました。現在はフェンタニルが第3波を担い、米国だけでなく欧州やカナダでも類似の事態が進行中です。日本でも名古屋からの国際密輸疑惑が報じられ、薬事・税関の規制強化が急務となっています。
今後は、国内外の連携による薬物流入防止、医療と警察による早期救護体制の構築、依存症治療施設の拡充、そして学校・地域での予防教育の推進が不可欠です。さらに、ヨーロッパのポルトガルやカナダの取り組みを参考に、依存者を犯罪者扱いせず医療・社会的支援へつなぐ包括的政策の導入が求められます。法規制と支援体制の両輪を整備しなければ、この“ゾンビ”の群像は増え続け、次の世代の健康と社会を侵食し続けるでしょう。
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