教員断念の氷河期世代 積極採用へ
2025/06/24 (火曜日)
求む、バブル崩壊で教員を断念した40~50歳代…文科省が「就職氷河期世代」の積極採用通知へ
2025年6月24日、文部科学省は「就職氷河期世代」に属し、バブル崩壊(1991年~)期に公立学校教員採用試験を断念した40~50歳代を対象に、地方教育委員会へ積極的採用を促す通知を出す方針を明らかにしました。政府が今月まとめた氷河期世代支援策の一環として、24日午後にも全国の教育委員会宛に発送される見通しです。
「就職氷河期世代」とは、バブル崩壊後の急激な景気後退に伴い、新卒採用が大幅に減少した1990年代初頭~2000年代中頃に社会人となった世代を指します。大学・専門学校卒業後も就職先が見つからず、非正規雇用を余儀なくされた約800万人の労働力層が含まれると推計されています。この世代は教員採用試験でも高倍率と採用抑制が同時進行し、多くがチャレンジを断念しました。
少子化が進行する一方で、都市部と地方の間で教員偏在が深刻化しています。文部科学省によると、2024年度の小中学校教員採用倍率は平均約1.9倍と過去最低水準に低下し、一部地域では1.3倍を割り込みました。少人数学級や特別支援教育の拡充による配置増も重なり、直近10年で約2万人の不足見込みが示されています。
令和2~5年度に実施された「学校教育における外部人材活用事業」では、アスリートや博士号取得者、IT人材ら多様な専門家を特別免許状や非常勤講師制度で学校に招く試みが行われました。授業力やIT活用の向上に一定の成果があったものの、専門教科以外の常勤教員不足解消には至っていない点が今回の通知の背景にあります。
令和4年度まで実施された「リカレント教育プログラム」では、免許状取得者が教職試験対策や模擬授業演習を通じて再挑戦する機会が提供されました。令和5年度に終了したものの、今後は地方委員会と連携し、ICTを活用したオンライン講習や職場OJTを拡充。経験者・社会人目線の指導力向上を図ります。
中央省庁でも2026年度から国家公務員中途採用試験に「就職氷河期世代」枠を導入。地方自治体や防衛省など、教職以外の行政部門でも同世代の即戦力確保が進む中、教員分野の後れを取り戻す狙いです。
英国やオーストラリアでは、教員不足対策として「キャリアチェンジ教員制度」を設置。業界経験者を数週間の集中講習で養成し、即戦力教員として登用するモデルが成果を上げています。日本でも専門職経験を生かす制度設計の参考とされます。
今回の通知は短期的な人材確保策にとどまらず、「令和の日本型学校教育」を目指す中央教育審議会の答申を受け、教員養成・採用・研修の一体的改革の第一歩とも位置付けられます。質・量両面で教師集団のレジリエンスを高めるため、定年延長や副業容認、非常勤講師の処遇改善など多角的施策の連動が求められます。
バブル崩壊という社会的構造変化の犠牲となった就職氷河期世代が、再び教壇を目指す機会を得ることは、本人のキャリア再生のみならず、教育現場の人材不足解消や多様性推進にも寄与します。文科省の積極採用通知を受け、都道府県教育委員会や学校現場が柔軟かつ迅速に対応し、日本の未来を担う児童生徒の学びを支える体制強化を期待したいところです。
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