インドに次世代新幹線導入 合意へ
2025/06/21 (土曜日)
インドに次世代新幹線導入で合意へ モディ首相が8月末に訪日で調整
2025年6月21日、日印両政府はインドのナレンドラ・モディ首相が8月末にも訪日し、石破茂首相と会談する方向で調整に入ったと発表しました。その会談では、日本独自の新幹線方式を採用したインド初の高速鉄道計画に、JR東日本が開発中の次世代新幹線車両「E10系」を日本国内とほぼ同時期の2030年代初頭に導入することで合意する見通しです。2030年の運行開始を目指すこのプロジェクトは、日印間の戦略的パートナーシップ強化とインドの輸送インフラ近代化のシンボルとなるものです。(出典:朝日新聞 2025年6月21日)
E10系は、JR東日本が2025年3月に発表した最新の高速鉄道車両です。東北新幹線向けの実験車両「ALFA―X」で培った空力設計と地震対策技術を継承し、10両編成で最高速度360km/hを想定。従来のE2系・E5系の後継として、車体の軽量化や回生ブレーキの高効率化、地震時の脱線防止設備などを大幅に強化しています。車内はLED間接照明と大型窓を備え、快適性向上も図られています。(出典:Wikipedia「E10 Series Shinkansen」)
インド初の高速鉄道は、ムンバイ―アーメダバード間(約508km)を結ぶ「ムンバイ―アーメダバード高速鉄道計画」です。プロジェクトは2017年9月、当時の安倍晋三首相とモディ首相の会談で合意され、日本政府が約1兆7000億円の円借款を供与。日本側は車両・技術・設計のほか、安全規格や運行管理システムも提供し、インド鉄道公社と共同で整備を進めてきました。最初の試運転は2021年に開始され、2027年末の部分開業、2030年の全線開業を目指しています。(出典:Wikipedia「Mumbai–Ahmedabad High-Speed Rail Corridor」)(出典:Reuters)
当初は従来型のE5系を導入する計画でしたが、高温多湿や粉塵の多いインド気候への適応性を考慮し、より最新鋭のE10系を選択。インド現地での製造拠点を整備し、車体の防熱コーティングやフィルター装置の強化を進めることで、運行コスト低減と保守体制の効率化を図ります。インド政府の「メイク・イン・インディア」政策とも連動し、主要部品を現地調達することで雇用創出と技術移転を促進します。(出典:The Economic Times)
インド西部は夏季に気温50℃近くまで上昇し、粉塵も多いため、E10系では空調能力の強化と車体冷却システムの最適化が必須です。導入前には現地の検測車両で連続試験を実施し、高温環境下での性能やブレーキ冷却性能、電力消費量をデータ収集。これに基づきブレーキ材の改良や空調負荷の制御アルゴリズムを調整します。また、新設区間の橋梁・トンネルでは振動解析を行い、最高速度320km/h運行時の走行安定性を検証します。(出典:Kyodo News)
モディ首相の8月訪日は、広島で開催されるG7サミットに合わせたもので、日印首脳会談は約2年3カ月ぶり。クアッド(QUAD)戦略対話の前に開催することで、インド太平洋地域における安全保障協力と経済連携の両輪を強調。新幹線導入合意は、日印関係を象徴する大型案件として、軍事協力に次ぐ信頼関係の深化を示します。(出典:朝日新聞 2025年6月21日)
・2027年末:ムンバイ―アーメダバード区間の部分開業(E5系改良型)
・2030年度:E10系による全線開業
・2030年代中盤:第二期区間(デリー―バンガロール等)への拡張検討
課題としては、土地収用の遅延、資金融資条件の見直し、現地技術者の育成不足が挙げられます。また、ダイヤの維持・定時運行のためのインド鉄道公社との運行管理体制構築、乗客需要の予測精度向上も必要です。(出典:Wikipedia「High-speed rail in India」)
次世代新幹線E10系のインド導入合意は、日印両国が技術連携と経済協力を深化させる象徴的プロジェクトです。2030年代の運行開始を期し、技術移転と現地適応試験を通じて持続可能な高速鉄道網を構築し、インドの輸送インフラ近代化と産業発展に貢献することが期待されます。今後は、政治的安定と多国間協調の下で計画を着実に進めることが、両国の繁栄と地域の安定に資するでしょう。
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