中国、イランと「蜜月」にあらず 「頼りにできぬ盟友」本気で助けず、米介入の泥沼化期待
2025/07/01 (火曜日)
イラン情勢を巡り、ルビオ米国務長官は6月22日、米FOXニュースの番組で、中東産原油の主要輸送ルートであるホルムズ海峡を封鎖しないよう、中国にイランへの働きかけを要請したと明らかにした。ルビオ氏は「中国はホルムズ海峡の石油輸送に大きく依存しているからだ」と要請の理由を説明した。自分の石油の輸送路は自分で守れ、という趣旨なら理解できるが、イランが中国の言うことなら聞くと考えたのであれば、過大評価だろ
2025年6月22日、ルビオ米国務長官は米FOXニュース番組内で、中国政府に対し「イランにホルムズ海峡を封鎖しないよう強く促す」よう要請したと明らかにした。ルビオ氏は「中国はホルムズ海峡を通じた原油輸送に大きく依存している。もし封鎖されれば、自国のエネルギー安全保障に甚大な影響を及ぼす」と語り、イランに対する自制を中国に託した背景を説明した。
ホルムズ海峡はオマーン湾とペルシャ湾を結ぶ最狭部で幅約34キロ。世界の原油・LNG輸送量の約20%が通過するとされる戦略的要衝で、日米中を含む主要消費国のエネルギー供給源となっている。過去にも湾岸戦争(1990年)や米・イラン緊張時に海峡閉鎖が懸念され、原油価格急騰を招いた歴史がある :contentReference[oaicite:0]{index=0}。
イラン国会は6月中旬、アメリカによる核施設攻撃への報復として「ホルムズ海峡封鎖」法案を可決。実効決定権は最高国家安全保障会議にあるものの、議会の決定は強い威嚇手段と受け止められた。米国は即座にイランへの攻撃を行い、3か所の核関連施設を空爆。これを受けてルビオ氏は「封鎖されたら大規模軍事的エスカレーションにつながる」と警告し、中国に抑止を要請した :contentReference[oaicite:1]{index=1}。
2025年上半期、中国はイランから日量約140万バレルの原油・コンデンセートを輸入し、世界最大の購入国となった。輸入全体に占める割合は約13.6%に達し、ホルムズ海峡経由での海上輸送に依存していることが数字からも裏付けられる :contentReference[oaicite:2]{index=2}。一方、2021年に締結した「中イ包括的戦略パートナーシップ」により両国関係は深化し、中国はイランの最大の経済協力国の一つだが、米国の強い要請にどこまで応えられるかは不透明である :contentReference[oaicite:3]{index=3}。
イランは米国の二次制裁を避けるため、小規模精製所「ティーポット」や「ダーク・フリート」タンカーを活用し、中国向け輸出を増大させてきた。これに対し中国は、人民元決済の拡大や海上シーレーンの多角化を図り、制裁リスクの分散を進めている。だが、もし海峡封鎖が実行されれば、代替ルートは陸路のパイプラインや北極航路など限られ、コスト・時間の面で大打撃となる。
米国は同盟国とともに「封鎖は国際法違反かつ海洋安全保障への重大な脅威」と非難。G7外相声明でも協調的対応を約束した。欧州連合や日本も「自由航行の原則を守る」立場を表明し、中国の仲介努力を支持している。中東諸国ではオマーンやアラブ首長国連邦が「海峡閉鎖は地域経済に壊滅的影響を及ぼす」と中国に懸念を伝えた。
1990年のイラクによるクウェート侵攻時、ホルムズ海峡閉鎖の可能性が原油価格を一時70%上昇させた。2008年のイラン核開発問題では、抑止的声明により実際の封鎖は回避された。これらは「言葉による威嚇」と「実行コストの高さ」が封鎖回避に働いた例であり、ルビオ氏の要請も同様の抑止効果を狙ったものと考えられる。
ルビオ米国務長官による中国への要請は、ホルムズ海峡封鎖が直ちに中国自身に跳ね返る「自殺行為」であるとの現実認識に基づく外交戦術である。中国はイランとの戦略的パートナーを維持しつつも、世界最大の原油輸入国として自国のエネルギー安全保障を最優先に考えざるを得ない。今後、中国がどのようにイランと米欧のバランスを取り、ホルムズ海峡の自由航行を守るかが、中東情勢の安定と世界経済への影響を大きく左右するだろう。
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