イラン首都「大規模攻撃」 イスラエル、交戦拡大 80以上の標的を空爆
2025/06/16 (月曜日)
イラン軍報道官は、イスラエルの住民に対して軍事施設などから離れるよう要求した。イスラエルメディアによると、15日夜の攻撃では同国北部ハイファなどで負傷者が出たとみられる。(共同)
2025年6月15日夜、イラン軍報道官は公式声明で、イスラエル国内の一般住民に対し「軍事施設および関連拠点から速やかに離れる」よう要求しました。同日の攻撃では、イスラエル北部のハイファ周辺を中心に、報復ミサイルやドローン攻撃が実施され、民間人にも死傷者が出たと伝えられています。本稿では、今回のイラン・イスラエル間の軍事的緊張の背景、攻撃の経緯と影響、双方の戦略的狙い、国際社会の反応などを多角的に解説します。
イラン軍は6月13日に実施した対イスラエル攻撃に続き、15日夜にも再度ミサイルと無人機部隊を展開しました。イスラエル北部ハイファ市やその周辺地域では、複数のシェルターが稼働し、住民は地下に退避しましたが、直撃弾や破片によって数十名が負傷し、一部建造物にも大きな被害が発生しました。病院関係者によると、深刻な火傷や破片による重傷例も報告されており、被害総数は35人以上に上ると見られています。
イラン軍報道官の声明は、住民保護を名目としつつも、実際にはイスラエル市民の不安を煽り、政府の対応を試す心理戦的要素を含みます。イランは、2023年末から2025年にかけて核施設や軍事拠点への爆撃を繰り返したイスラエルに対し、「正当防衛」として報復を正当化する立場を強調しています。同時に、民間人の避難を促すことで、攻撃後の報道映像に平和的なイメージを作り出し、国際社会の同情を得る狙いも見え隠れします。
イスラエルは多層防空システムを有し、短距離ロケット用の「アイアン・ドーム」、中距離ミサイル用の「デービッド・スリング」、長距離弾道ミサイル対応の「アロー」シリーズを稼働させています。15日夜の攻撃では、迎撃システムが一部機能せず北部で被害が拡大したものの、ハイファ港や市街地への決定的な損害は抑えられました。首相は緊急安保会議を招集し、「攻撃は断固として報復する」と強硬姿勢を示しました。
イラン・イスラエルの対立は1979年のイラン・イスラム革命以降、イラン側のイスラエル否認と、イスラエルの核施設・ミサイル開発阻止策を巡る攻防として展開されています。特に2018年の核合意離脱以降、両国はシリアやイラク内戦、レバノンのヒズボラ支援を通じて間接的に衝突し、2023年後半からはサイバー攻撃や無人機による実際の軍事衝突に発展しています。今回の直接的対峙は、この長期的な代理戦争をエスカレートさせる可能性が高いとされます。
米国やEU、日本など西側諸国は「緊張緩和と対話による解決」を呼びかける一方、イランへの追加制裁や武器供与強化を慎重に調整しています。アラブ湾岸諸国やトルコは中立的な立場を維持しつつ、石油・ガス輸送路の安全確保を優先。ロシア・中国は中東での影響力拡大を狙い、いずれか一方への露骨な支援は自制しています。今後は、以下の3つのシナリオが想定されます。
ハイファやアッコなどの北部都市は港湾施設や製油所を抱え、戦略的要衝です。住民は度重なる警報と攻撃で「いつまた避難が必要になるか分からない」というトラウマを抱えています。心理カウンセラーは、子どもや高齢者に対するストレスケアプログラムの拡充を提唱し、地域コミュニティが連携した避難訓練や支援体制の構築が急務とされています。
イラン軍報道官による「軍事施設から離れるように」という要求は、住民の安全確保を名目にしつつ、戦略的心理戦を含むものでした。15日夜のハイファなどでの被害は重く、イラン・イスラエル間の対立は新たな段階に入ったといえます。多層防空網を持つイスラエルも今回の一部迎撃失敗を受け、防衛体制の見直しを迫られています。今後は国際社会の仲介と地域レベルの市民保護策が、さらなる衝突の拡大を防ぐ鍵となるでしょう。
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