米トランプ政権の入国制限、36カ国追加か エジプトなど 移民取り締まり推進
2025/06/16 (月曜日)
トランプ大統領は4日、イランなど12カ国からの入国を禁じる布告に署名。同紙は今回の追加検討に関し、強硬な移民取り締まり政策をさらに進めるものだと指摘した。(共同)
2025年7月4日(現地時間)、ドナルド・トランプ米大統領はイランを含む12か国からの入国を一時的に禁止する大統領布告に署名しました。対象国にはイランのほか、テロ指導者や過激派組織の拠点を抱える中東・アフリカの国々が含まれており、これまでの“移民・難民制限”措置をさらに強化する狙いとみられています。布告は即日発効し、同紙(共同通信配信記事)は「強硬な移民取り締まり政策をさらに推進するものだ」と政治的意図を指摘しました。
今回の布告では、イラン、ソマリア、シリア、イエメン、リビア、スーダンのほか、アフガニスタン、イラク、ナイジェリア、エチオピア、エリトリア、コンゴ民主共和国を対象とし、これら国籍を有する外国人の新規ビザ発給停止および既存ビザの一時無効化が行われます。商用・外交・軍事ビザは例外措置とされるものの、観光や就労ビザ、学生ビザには厳格な審査が求められます。
大統領布告は1952年移民国籍法(Immigration and Nationality Act)第212条に基づき、大統領が国家安全保障上の理由で入国を制限できる権限を定めたものです。法廷闘争を避けるため、トランプ政権は「テロ関連情報の評価」「難民受け入れの安全審査の強化」などを根拠に挙げ、できる限り裁判所の介入を回避する方針を示しています。
トランプ政権は就任直後の2017年に“ムスリム禁止令”とも呼ばれる大統領布告を発出し、中東・アフリカの7か国からの入国を90日停止、難民受け入れを120日停止しました。その後、連邦裁判所で法的な争いを経て対象国を一部変更。今回の追加措置は、その延長・拡充版と位置づけられ、過去の政策から継続性を強調しています。
共和党内では「国家安全保障の強化」として支持する声が根強く、特に中西部や南部州で高い支持を得ています。一方、民主党や一部の共和党穏健派からは「宗教・人種差別的である」「米国の国際的イメージを損なう」との批判が噴出。議会ではトランプ布告の制限に動く超党派の法案が検討されています。
欧州連合(EU)や日本、カナダをはじめ各国政府は、「移民政策は慎重かつ人道的に行うべき」と牽制。イラン外務省は即座に報復措置を示唆し、在米イラン人学生の安全確保を訴えました。また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「保護が必要な難民の人道的受け入れを妨げる」と懸念を表明しています。
対象国出身の労働者や研究者、観光客の入国停止は、米国のIT企業や大学研究機関、農業・建設現場などで人手不足を深刻化させる恐れがあります。スタンフォード大学の調査では、2024年時点で対象国出身の学生・研究者が年間約1万人に上り、イノベーション促進や学術交流に与える影響が懸念されています。
過去の禁止令では複数の州・企業が連邦裁判所に提訴し、一部差し止め命令を勝ち取りました。今回は対象が12か国に拡大されたため、さらに多くの訴訟が予想されます。連邦最高裁は2025年秋にも最終判断を示す可能性があり、行政権限の範囲と司法審査のあり方が焦点となります。
トランプ政権は、入国禁止措置を実効性のあるものとするため、大使館・領事館での審査体制強化や入国管理局(ICE)とのデータ共有を進める方針です。一方、議会や州政府、市民社会は、包括的移民改革の必要性を訴えており、超党派の移民支援法案が秋の国会で審議入りする見込みです。
イランなど12か国からの入国禁止布告は、トランプ政権の「強硬移民政策」の最新形ですが、国家安全保障と人権保護のバランスが問われる重大政策でもあります。国内外の反発と法的挑戦を見据えながら、大統領と議会がどのような折衝を行い、最終的にどのような形で実施されるか、今後の動向が注目されます。
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