イラン国営放送に爆撃 生放送中断
2025/06/17 (火曜日)
イスラエル、イランの国営放送爆撃 ニュース番組で爆発の瞬間流れる
2025年6月16日夜、イランの首都テヘランにある国営テレビ局のスタジオが、イスラエル軍による空爆を受け、生放送中のニュース番組で爆発の瞬間がそのまま放映されました。本記事では、攻撃の経緯や背景、歴史的文脈、国際的な反応、そして今後の見通しについて解説します。
6月16日午後18時30分頃、テヘラン中心部の国営放送局「Islamic Republic of Iran Broadcasting(IRIB)」が空爆を受け、スタジオ内で巨大な爆発音とともに煙が立ち込める様子が放映されました。ニュースキャスターとみられる女性が話している最中に爆発が起こり、慌てて席を立つシーンが捉えられています。イスラエル国防省は攻撃を認め、「イラン政権の宣伝機関を標的とした」と正当化しました:contentReference[oaicite:0]{index=0}。テレビ朝日の報道によれば、イスラエル軍機10数機がテヘラン上空を飛行し、事前にSNSや電話で住民に退避を呼びかけたうえで爆撃を実施したといいます:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
イランとイスラエルの関係は、1979年のイラン・イスラム革命以降、敵対関係が続いています。イランはイスラエルを「不正なシオニスト国家」と非難し、度重なるミサイル攻撃や無人機による越境爆撃を行ってきました。一方、イスラエルはイランの核開発計画や中東での代理勢力拡大を封じ込めるため、2018年以降、イラン国内のインフラや軍事施設を空爆・爆破するといった報復行動を活発化させています。朝日新聞は、両国の対立は「中東における宗教・イデオロギーの衝突」「核開発問題」「シリアやレバノンでの代理戦争」の三点が大きな要因と分析しています:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
イスラエル国防相カッツ氏は「イラン政権のプロパガンダ拡散を狙った正当な軍事行動」と説明していますが、国際人道法上、報道機関を攻撃対象とみなせるかどうかには大きな議論があります。ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は、報道機関は民間人と同様に国際人道法で保護されるべきであり、軍事的正当性を示す十分な証拠がない限り違法行為と断定できると指摘しています。また、国連は「メディア施設への攻撃は『戦争犯罪』に該当する可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
イラン政府は今回の攻撃を「露骨な戦争犯罪」と非難し、即時国際司法裁判所への提訴を示唆しています。外務省報道官は「民間人への被害を最小化するために十分な警告を出したという主張は矛盾している」と反発しました。一方、欧州連合(EU)は「暴力の一層の拡大を懸念する」とだけ声明を出し、具体的な非難を避けています。また、アメリカ合衆国は「双方に自制を求める」とのみ述べていますが、親イスラエル派の議員らからは今回の行動を支持する声も上がっています。
国際人権団体は、今回の攻撃を含む一連の空爆が「報道の自由と人権の根幹を揺るがすもの」として強く懸念を表明しており、メディア従事者の安全確保を最優先すべきだと訴えています。
直後の報復として、イランは「史上最大規模のミサイル攻撃」を準備中と報じられています。地域全体の緊張は一段と高まり、中東情勢は新たな局面を迎える可能性があります。石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の安全保障への影響も懸念され、原油価格の乱高下を招く恐れがあります。
また、メディア施設への攻撃が今後他国にも連鎖的に繰り返される危険性が指摘されており、「報道の自由」と「戦略的軍事行動」の境界線をいかに国際社会で再定義するかが問われています。日本政府も自国民保護と国際法順守の観点から動向を注視しており、外務省を通じた情報収集態勢を強化するとみられます。
今回のイスラエルによる国営放送爆撃は、メディアを標的とする軍事行動の合法性や報道の自由を巡る重要な論点を浮き彫りにしました。地域の安定と国際法の尊重を両立させるため、引き続き国際社会の連携が不可欠です。
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