TDR運営 チケット価格見直しも
2025/06/06 (金曜日)
ココがポイント変動価格制のチケットについての見直しとは何ですか?
東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランドの高橋渉社長(67)は6日、報道陣の取材に応じ、パークチケットの価格について「見直すことも考えている」と述べた。物価高で消費者に節約志向が広がっていることが背景にあり、需要予測に応じて変動する価格の幅などを検討する。
【イメージ】オリエンタルランドが発表したテーマパークのエリア刷新のイメージ
パークチケットは曜日や時期によって価格が異なり、例えば大人1人の1日券は7900~1万900円だ。値下げをしたり、最高値と最安値の差を変更したりすることを検討するとみられる。
オリエンタルランドは2035年度までの長期経営戦略で、テーマパークのエリア刷新などの大規模開発を検討している。
2025年6月6日、東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドの高橋渉社長は、パークチケットの「変動価格制」について「見直すことも考えている」と明言しました。背景には、原材料費や人件費などの上昇に伴う物価高があり、消費者の節約志向が強まっている点があります。現在、TDRの1デーパスポート(大人)は平日や閑散期で7,900円、ピークシーズンで10,900円と、曜日や時期によって価格が変わる仕組みです。今回の“見直し”では、最安値と最高値の幅や、値下げの検討などを含め、需要予測に応じた価格変動の方法を改めて検討するとしています。
東京ディズニーリゾートがチケット料金の変動価格制を導入したのは2019年10月のことです。それ以前は、曜日や時期ごとにあらかじめ決められた定価のみが用いられていましたが、来場者数の増減や経営効率の向上を図るため、新たに「オフピーク」「レギュラー」「ピーク」といった3段階に分け、需要が低い日には安く、需要が高い日には高くする仕組みを採用しました。この背景には、パークの混雑緩和やチケット販売による収益最大化を目指す目的がありました。
導入当初は「高く感じる」「急に値段が変わると計画が立てにくい」といった声がありましたが、徐々に利用者も慣れ、ピーク日の混雑はある程度抑制される一方、閑散期の集客向上にもつながっていました。
2022~2023年にかけて、日本国内ではエネルギーコストの高騰や雇用コストの増加が続き、全体的に物価が上昇しました。飲食店の外食価格、光熱費、交通費などあらゆる消費が値上がりするなか、消費者の「節約志向」は一層強まっています。特にテーマパークのように家族やグループで訪れる場合、チケット代は家計にとって大きな支出であり、価格変動制によって平日や閑散期でもなお割高と感じる人も少なくありません。
また、コロナ禍前後でパーク運営のコスト構造も変化しました。従来の定価設定では運営費を十分に賄えないケースも増え、変動価格制でターゲットとなる平日や閑散期の更なる値下げが望まれる一方、需要がピークの日においては過度な値上げが入場抑制につながりかねないというジレンマがあります。
要素 | 内容 |
---|---|
価格区分 | 「オフピーク」「レギュラー」「ピーク」など、日程に応じて3~4段階で設定 |
価格例(大人1日券) | オフピーク:7,900円、レギュラー:8,700円、ピーク:10,900円 |
設定基準 | 過去来場実績、休日・連休・学校の長期休暇期間、土日祝日、イベント実施日などを複合的に判断 |
メリット | 閑散期の集客促進、平日来場への誘導、収益の最大化、混雑緩和 |
デメリット | 利用者の計画が立てにくい、値上がり日に行きづらい、価格設定への不満 |
課題 | 物価高の中で、オフピーク価格でも経済的負担が大きいと感じる世帯が増加 |
特に「ピーク日」とされるゴールデンウィークや夏休み、年末年始は10,900円と高額になります。ファミリー層にとっては1人あたりの負担が大きく、4人家族で訪れると冷静計算でも4万3,600円と予算を大きく圧迫します。そのため、コロナ後の遠出自粛が緩和されたタイミングでも、来場を見送るケースが根強く残っています。
高橋社長は「需要予測に応じて変動する価格の幅を検討する」と述べており、以下のような具体策が想定されます。
これらを組み合わせることで、コスト増に苦しむファミリー層や若年層にも来場しやすいスキームを提供しつつ、需要が高い日程では収益を確保するバランスを取ることが狙いです。
USJでは2015年に段階的な価格制度を導入し、「スタジオ・パス」を閑散期~ピーク期で価格差を設定しています。TDR同様に需要に応じて値段が変わり、特にハロウィンやクリスマスなどイベント期間中は大人1デーパスが9,800円~10,800円まで上昇する場合があります。一方、閑散期には6,900円程度とTDRよりも安価に抑えられている日程もあり、価格差の幅を大きく取ることで平日客の取り込みに成功しています。
米国ディズニーランドでは、「ダイナミックプライシング」をさらに細分化し、1デーチケットを曜日ごとに最大で15種類以上に分けています。さらに、年パスも数種類のランクを用意し、利用時間帯や来場可能日を制限することで、混雑管理・収益最大化を図っています。TDRも同様の考え方を参考にし、価格細分化のさらなる拡大が検討される可能性があります。
他国内遊園地(富士急ハイランド、ナガシマスパーランドなど)でも、平日料金と休日料金を分け、夏休みや年末年始に設定を高める手法が定着しています。ただし、TDRのように10,000円を超える高価格帯を設定する例は少なく、一般的には3,000円~6,000円程度で上限が抑えられています。そのため、TDRの価格設定は国内水準としては非常に高額であり、物価高・節約志向が強まる現在の状況では再考の余地が大きいと言えます。
SNSやレビューサイトでは、以下のような意見が散見されます。
ファンコミュニティでは「価格を固定に戻してほしい」「もう少し透明な日程基準を示してほしい」といった要望も根強く、TDR側は「いつどれだけの客が来るか分からない日もある」としつつも、長期的には来場者満足度を維持するための調整が欠かせません。
オリエンタルランドは2035年度までの長期経営戦略で、テーマパークの大規模開発や新エリア展開を予定しており、その投資資金を賄うためにも収益性の確保が急務です。見直しの検討によって平日・閑散期の集客を一層促進し、年間パーク運営全体の稼働率を底上げすると同時に、ピーク日の収入を安定化させることで、開発コストを吸収する計画を描いています。
また、デジタル技術を活用した入場予約システムやスマートフォンアプリ経由のリアルタイム価格表示なども強化し、「来場者が直感的に安い日を検索しやすい機能」を整備する考えがあります。これにより、来場者が少しでも価格を抑えて来やすい環境をつくりつつ、TDRとしても混雑や売上を予測しやすい運営管理を実現する狙いです。
東京ディズニーリゾートにおける変動価格制チケットの見直しは、物価高と消費者の節約志向が強まる中で、「来場者にとっての価格の敷居を下げつつ、パーク運営の収益を維持・向上する」という二重の課題に対応する取り組みです。具体的には、オフピーク価格の引き下げや価格帯の細分化、早期購入割引の拡充などを通じ、来場者が選びやすい価格設定を模索することが検討されています。
同時に、USJや海外ディズニーなど他テーマパークの事例と比較しながら、TDRならではのブランド価値を損なわないようにしつつ、新たな仕組みを取り入れていく必要があります。長期経営戦略におけるエリア刷新・大規模開発の投資を支えるためにも、安定した収益構造を確立しつつ、来場者満足度を高める価格施策の検討が今後ますます重要となるでしょう。
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