ふるさと納税 2市町を対象除外へ
2025/06/07 (土曜日)
経済ニュース
ふるさと納税、2市町を除外へ 長野・須坂市と岡山・吉備中央町
2025年6月、総務省はふるさと納税制度の適正運用確保を目的に、長野県須坂市と岡山県吉備中央町の2市町を寄付対象から一時除外する方針を固めた。両自治体は過去数年にわたり返礼品率を高めすぎた結果、寄付額が急増し、本来の「地元振興・過疎地支援」という制度趣旨から逸脱していると判断された。除外は寄付額や返礼品の見直しが進むまで継続される見込みで、全国の自治体への波及効果が注目されている。
ふるさと納税制度は2008年度に創設され、納税者が応援したい自治体に寄付できる仕組みとしてスタートした。寄付金額から2千円を引いた残額が所得税・住民税から控除されるほか、返礼品を受け取れる点が特徴で、全国の地域活性化や過疎地支援に一定の成果を上げてきた。
しかし、創設から10年を経過する中で、高額返礼品競争が激化。自治体は寄付額を競うため、返礼品の「地場産品率」や「返礼率(寄付金額に占める品物価格の割合)」を基準以上に引き上げるケースが相次いだ。これにより、寄付金の大半が生産者への支払いに消え、制度の本来目的である「地域づくり支援」に使われない事態が顕在化した。
こうした状況を受け、総務省は2019年にガイドラインを改訂。返礼率を概ね3割以下、地場産品を原則とするなどの基準を明確化し、違反自治体には改善指導や寄付受付停止などの措置を講じることとした。2023年度以降も実態調査を継続し、ガイドライン違反が改善されない自治体に対しては、ふるさと納税サイトへの掲載停止や税控除対象外という強いペナルティを適用している。
総務省は両市町に対し、5月段階で「ガイドラインに抵触している」との行政指導を行ったが、改善が不十分と判断。今後、以下の措置を実施する予定である。
除外は両自治体が返礼率を3割以内に削減し、地場産品の占有率を高めるなど改善策を確実に実施するまで続く見込み。
今回の措置は全国で初めての対象除外となる見込みで、他の基準違反自治体へのけん制効果が大きい。一方、過度な返礼品競争の抑制と地域の実情に応じた柔軟な対応とのバランスをどう取るかが今後の焦点となる。
除外措置を機に、ふるさと納税制度全体の抜本見直しを求める声も高まっている。提言としては以下の点が挙げられる。
また、総務省が2025年度予算において、返礼品評価システムや寄付効果の定量評価ツールを導入するための調査費を計上。今後はAIを活用した寄付先選定支援や、地域の実態に即した柔軟運用を図る方向性が示されている。
長野・須坂市と岡山・吉備中央町の除外措置は、ふるさと納税制度の健全化に向けた画期的な一歩である。返礼品過重競争を抑止し、本来の「地域支援」「地元振興」へと制度を回帰させる狙いがある。一方で、自治体の収入源や地元産業への影響、地方財政とのバランスをどう維持するかが今後の重要課題となる。総務省や自治体は、除外措置を早期に解除するための改革策を着実に実行しつつ、制度全体の持続可能性を高めるための抜本的見直しを進める必要がある。
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