コメ適正価格は3000円 生産者団体
2025/06/07 (土曜日)
経済ニュース
コメの価格高騰が続くなか、生産者団体の会長は、3000円が適正価格との考えを示しました。
2024年産米の流通価格が急騰するなか、生産者団体「日本農業法人協会」の齋藤一志会長は、コメの適正価格として「60kgあたり3,000円程度」が望ましいとの見解を示しました。過度に高い価格設定が続くと、コメの輸入が増加し、国内生産者の競争力が損なわれると懸念しています。本稿では、コメ価格高騰の背景と要因、歴史的な価格変動の推移、流通構造による価格形成メカニズム、他国の米政策との比較、そして今後の展望について詳細に解説します。
近年、異常気象による長雨や干ばつが各地で発生し、作柄への影響が深刻化しました。特に東北地方では春先の低温が続き、田植えの遅れや苗の生育不良が発生。これにより2023~2024年の生産量は前年比で5%程度の減少となり、市場供給量が不足したことが価格高騰の一因となりました。
国際的なエネルギー価格上昇や、化学肥料原料である天然ガス価格の高騰に伴い、農家の生産コストが大幅に上昇しました。トラクターや田植え機の燃料代、化学肥料・農薬の調達コスト増が、農産物の原価を押し上げています。
2025年に入ってからは、スポット市場価格が急上昇し、60kgあたり5万円を超える銘柄米も散見されました。一方、契約市場では価格上昇の影響がやや緩和されるものの、2024年産米の契約更新時期には多くの業者が値上げを要求し、消費者価格への転嫁圧力が強まりました。
稲作から収穫、乾燥、精米、検査、物流、仲卸、小売までの各フェーズでコストが上乗せされます。特に精米・検査段階での人件費上昇、物流会社の輸送費値上げ、卸売市場での手数料引き上げが、最終消費者価格を押し上げる要因となっています。
戦後の米価は、公定価格制度や減反政策など政府による需給管理で比較的安定してきました。しかし1980年代以降、自由化の流れで流通の効率化が進む一方、2010年代以降は円安や国際コメ相場の影響が国内価格に波及しやすくなりました。
アメリカではコメは輸出用が主体で、国防備蓄など政府買い入れは限定的。農家への直接補助金と保険プログラムで所得保障を行い、市場価格は概ね需給バランスで決定されます。
EU域内では共通農業政策(CAP)により、一定の支払い制度と生産制限で市場安定を図ります。国内消費は小麦やトウモロコシが主体で、コメの生産量は相対的に少ないものの、価格は補助金によって下支えされています。
タイやベトナムはコメ輸出大国として政府が備蓄や輸出枠を管理。柔軟な輸出管理で国際価格に対応しつつ、国内消費者価格を抑えるための補助策が常態化しています。
「60kgあたり3,000円」という適正価格は、農家の生産コストを最低限カバーしつつ、価格上昇による消費者負担の過度な増大を防ぐ水準です。齋藤会長は「3500円を超える価格で流通が続くと輸入米が大量に流入し、国内生産基盤が揺らぐ」と警鐘を鳴らし、政府と業界に対して流通過程の透明化調査と、適正価格の維持に向けた協調を要請しました。
小泉大臣は生産者のアンケート結果を受け、「価格高騰の要因解明のために流通段階ごとのマージンや在庫量、卸売市場での取引状況を詳細に調査してほしい」と関係各所に依頼しました。今後、調査結果に基づく政策対応や業界ガイドライン策定が期待されます。
コメの価格高騰は天候不順やコスト上昇、流通構造の複雑化が重層的に影響した結果です。齋藤会長が示した「60kgあたり3,000円」という適正価格は、生産者の持続可能性と消費者負担のバランスを考慮した提案であり、政府・業界が協調して実現すべき目安と言えるでしょう。今後、流通プロセスの透明化や支援策の拡充を通じて、安定したコメ供給と価格安定が図られることが期待されます。
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