日本郵便 佐川などに集荷委託打診
2025/06/12 (木曜日)
日本郵便、集荷業務を佐川急便や西濃運輸に打診…不適切点呼で国交省の処分を想定
2025年6月12日、読売新聞は、日本郵便が国土交通省による「不適切点呼」を理由とした行政処分(一般貨物自動車運送事業の許可取り消し)を想定し、一部の集荷業務を佐川急便や西濃運輸、6月中に子会社化予定のトナミ運輸など複数の物流会社に委託する方向で打診していると報じました(出典:読売新聞 2025/06/12 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250612-OYT1T50022/)。処分により日本郵便は保有するトラックやワンボックス車約2,500台を運送業務に使用できなくなる可能性があり、サービス維持のための緊急措置です。
「不適切点呼」とは、貨物自動車運送事業法および道路運送車両法施行規則に基づき、運行前後の飲酒確認・健康状態確認・運行可否判断などを記録しなければならない点呼を怠ったり、記録を改ざんしたりする行為を指します。国交省調査では、全国3,188の郵便局のうち約75%にあたる2,391局で一度以上の不適切点呼が確認されました(出典:日本郵便「点呼不備事案に係る調査結果及び再発防止策」2025年4月23日 https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2025/00_honsha/0423_03_02.pdf)。
日本郵便は、都市間幹線輸送で従来から連携のある佐川急便や西濃運輸に加え、トナミ運輸など子会社化先も含め、大口顧客向けの集荷を委託する計画です。これにより、拠点間の荷物引き取りを確保し、顧客サービスの継続を図ります。各社は打診を受けて協力の方向で調整中とされ、佐川急便は在庫管理システム連携を、西濃運輸はルート調整の高速化を検討しています(出典:livedoor News 2025/06/12 https://news.livedoor.com/article/detail/28943765/)。
国土交通省は6月5日、郵便局運営会社に対し貨物自動車運送事業の許可を取り消す方針を通知しました。許可取り消しはトラック約2,500台に及び、5年間にわたり一般貨物自動車運送事業を営む権利を失います。近畿運輸局管内では119局のうち70局以上が法令違反に該当すると判断され、許可取り消し基準を大きく超える違反点数が認定されました(出典:朝日新聞 2025/06/05 https://www.asahi.com/articles/AST647R8YT64UTIL03FM.html)。
郵便事業は2007年の郵政民営化で日本郵便株式会社に移行し、欧米型のサービス競争原理が導入されました。しかし、安全管理の根幹である「点呼」業務がおろそかにされた今回の事態は、コスト削減優先の民営化の負の側面を示す事例とも言えます。国営時代は国交省の直轄監査が厳格でしたが、民営化後は内部モニタリングが中心となり、法令遵守のガバナンスが弱体化したとの指摘が出ています。
海外では、英国郵便(Royal Mail)の2013年改革で、安全管理基準を維持しつつ委託拡大を進めた事例があります。Royal Mailは委託先の運行管理者に対し、ウェアラブル端末による健康モニタリングやAI-driven点呼記録システムを導入し、法令違反ゼロを維持しました。一方、日本郵便は紙ベースの点呼記録簿が主流で、デジタル化の遅れが不適切点呼を誘発した要因とされます。
他社への集荷委託は当面の緊急避難的対応ですが、以下のリスクをはらみます:
日本郵便は「ゆうパック廃止の噂は誤解」と否定していますが、サービス品質維持のためにはガバナンス強化と委託先選定基準の厳格化が急務です(出典:日テレNEWS 2025/06/07 https://news.ntv.co.jp/category/economy/fa12b54aa6f849f0969a0cc0364a0f70)。
再発防止策として、日本郵便は次の取り組みを発表しています(出典:日本郵便プレスリリース 2025/04/23 https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2025/00_honsha/0423_03_02.pdf):
日本郵便の異例の許可取り消しは、国内最大規模の運送事業者での法令違反として物流業界に衝撃を与えています。他の民間物流各社は、以下の点を含めた体制見直しを求められるでしょう:
日本郵便の集荷業務委託打診は、国交省による許可取り消し処分を見据えた緊急対応です。しかし、安全運行管理の根幹である「点呼」の不備は、郵政民営化以降のガバナンス課題を象徴しています。今後はデジタル化による監視体制強化と委託先選定基準の厳格化を図り、物流インフラの信頼回復を急ぐことが、地域社会・顧客・株主・規制当局からの信頼を取り戻す鍵となるでしょう。
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