「軍人恩給」受給者 1000人下回る

「軍人恩給」受給者 1000人下回る

2025/07/03 (木曜日)

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「軍人恩給」受給者が1000人下回る…ピークの139万人から半世紀、証言さらに貴重に

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「軍人恩給」受給者が1000人下回る──ピーク139万人から半世紀、証言の価値高まる

総務省の最新調査によると、2025年3月時点で「軍人恩給」を受給している元兵士はわずか792人となり、初めて1000人を下回った。第二次世界大戦(太平洋戦争)終結期には最高約139万人が受給していたことから、半世紀で99.9%超が消失した計算だ。戦場を知る生存者の証言は、歴史理解や平和教育の観点からますます貴重性を増している:contentReference[oaicite:0]{index=0}。

1. 軍人恩給制度の歴史

  • 大正〜昭和初期:1900年代初頭、日本は日清・日露戦争の戦傷兵に対し「恩給法」を整備。軍務により負傷・病気を負った将兵や遺族への年金支給を開始。
  • 戦間期の拡充:1930年代には日中戦争、1941年以降の太平洋戦争で動員規模が拡大し、戦後も恩給対象者(高齢者含む)が増大。1947年の改正で照会権や加算給付が充実。
  • 戦後見直し:1960〜70年代、高度経済成長下で財政負担が顕在化し、支給水準や対象範囲の見直しが進む。1985年の年金改革では民間年金制度との統合も検討された。

2. 受給者の減少要因

  1. 高齢化と自然減:終戦時20歳前後だった元兵士は現在90歳前後。毎年数十人から百人単位で死去し、受給者数は減少を続ける。
  2. 申請手続きの簡略化:かつては複雑だった恩給請求手続きが簡素化されたものの、高齢者の行政手続き負担は大きく、未申請で権利を行使していないケースもある。
  3. 支給対象者の縮小:戦傷者手帳保有者や、厚生年金受給開始以降に生活保護を受けた者は恩給対象外となるなど、後発の制度改正で受給資格が厳格化。

3. 元受給者の証言から見える戦争の実像

残るごく少数の元兵士は、当時の消耗戦や激戦地での経験を生々しく語り継いできた。たとえば、南太平洋でのジャングル戦、硫黄島や沖縄戦での市街戦、多数の兵員が補給不足で飢えと病に倒れた事実などは、教科書だけでは伝わりにくい現場の実情を示す。

滋賀県在住の90代男性は「ほかの戦友はほとんど戦後すぐに亡くなった。残っているわれわれの証言が消えたら戦争の恐ろしさを伝えられなくなる」と危機感を語る。一方で、聞き書き活動やドキュメンタリー映像化といった取り組みも各地で始まっており、消えゆく記憶の収集・保存が急務だ。

4. 関連制度・諸外国の比較

  • 米国退役軍人年金(VA):現役退役軍人向け医療・年金支給制度が手厚く、約200万人が受給。支給対象者の定義や遺族給付も充実している点で日本と対照的。
  • 英国退役軍人援護(SSAFA):慈善団体中心の支援が主で、政府支給は限定的。民間支援と公的支援の役割分担が明確。
  • ドイツ連邦軍功労者年金:ナチス時代の軍人恩給見直しの歴史を経て、現役兵と退役兵への社会復帰支援が重点化されている。

5. 今後の課題と展望

  1. 証言保存の継続性:語り部が減少する中、音声・映像のライブラリ化やVR技術による仮想体験プログラム開発が期待される。
  2. 次世代教育への活用:学校教育での戦争体験学習を深化させるため、地元自治体と博物館、NPOによる連携が必要。
  3. 福祉制度の再編:高齢元兵士の健康・生活支援と義務年金との併給調整、認知症ケアなど福祉分野での専門対応策が求められる。

まとめ

「軍人恩給」受給者が1000人を下回った事実は、戦後80年を経て戦争経験者が消えゆく現実を象徴している。ピークの139万人からわずか数百人への減少は、戦争を生き抜いた証言が急速に失われつつあることを示す。今こそ、元兵士の語りを記録・保存し、平和の尊さを次世代へ継承する取り組みが喫緊の課題だ。本記事が、証言収集や教育プログラムの推進に向けた議論の一助となれば幸いである。

(出典:読売新聞オンライン)

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