不良グループが解散式 警察署内で
2025/07/06 (日曜日)
傷害や窃盗などで多数の逮捕者を出してきた名古屋市の不良グループ「ルシファーズ」の解散式が6日、愛知県警熱田署で開かれ、10~50代のメンバー約30人が更生の決意を表明した。「今後一切周りに迷惑をかけ
名古屋不良グループ「ルシファーズ」解散──暴走の歴史と更生への道筋
2025年7月6日、愛知県警熱田署で名古屋市を拠点に暴行・窃盗などを繰り返してきた不良グループ「ルシファーズ」の解散式が行われ、10~50代の元メンバー約30人が「今後一切周りに迷惑をかけない」と更生の決意を表明した。鈴木正樹署長も「それぞれの道で仕事や勉学に精進してほしい」と激励した:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
「ルシファーズ」は1996年ごろ、名古屋市内の十代少年たちによって結成された。構成員は一時500人超に達し、市内各地で傷害事件や恐喝、窃盗を繰り返した。2010年代には愛知県警の重点取り締まりを受けて一度は衰退したものの、最近また活動を活発化。2024年以降、他グループとの抗争や深夜の暴走行為で約25人が逮捕され、2024年12月にリーダー小田切大作被告(47)が正式に解散届を提出した:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
警察署内で開かれた解散式は、「地域を震撼させた存在」から「社会に復帰する一歩」を象徴する。愛知県警は組織的反社会勢力の解体を推進しており、式には刑事部門だけでなく少年課や生活安全課の担当者が参加。署長による激励の言葉は、単なる式典ではなく〈地域治安回復〉を住民に内外に示す意味合いを持つ:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
元メンバーらは式典後、とび職や建設業、小売業などへの就職や学業継続を宣誓した。とはいえ、前科を抱える者の再就職の壁は依然高い。法務省の再犯防止プログラムやハローワークの職業相談、地元NPOによる若者更生支援など公的・民間支援はあるものの、定着率や長期的フォローは不十分との指摘がある。
過去には全国で数多くの若年グループ暴走事件が発生し、2012年の神戸・横浜の暴走族一斉摘発や、2000年代前半に渋谷ハチ公前を拠点とした暴走族「東京ヤンチャ会」の壊滅的摘発が知られる。いずれも警察主導でリーダーの逮捕・不起訴と組織解散を図ったが、その後の元構成員の再非行や引きこもり問題が社会課題となった。名古屋の「ルシファーズ」も同様に〈解散=更生〉までの道筋が問われる。
名古屋市街地では1990年代から深夜に若年層の暴走車両や集団喧嘩が常態化し、2000年代には大須など繁華街での通行妨害事案が増加。警察は地域パトロール、ネズミ取り、暴走族撲滅キャンペーンを繰り返し実施してきた。当時の熱田署も重点署の一つに指定され、地域住民と連携した「街頭少年相談所」の設置など先進的な取り組みが行われた経緯がある。
刑法や青少年健全育成条例による少年非行対策に加え、2019年改正少年法では「保護処分の幅拡大」と「地域支援体制の強化」が盛り込まれた。自治体は「子ども家庭支援センター」や「スクールソーシャルワーカー」を配置する一方、警察署内の更生啓発室が元グループ員へのフォローアップを担う事例もある。しかし、地元企業・商店街・PTAなどと連携した受け皿づくりは一部に留まるのが実情だ。
専門家は更生にあたり、「安定した雇用」「健全な居住環境」「家族の理解」の三つを重視する。特に地元企業の受け入れ姿勢や、ボランティアによる居住支援が不可欠とされる。家族支援では、カウンセリングや家族会の立ち上げが有効例となっており、名古屋市内でもNPO「リスタート名古屋」が既に活動を開始している。
「ルシファーズ」の解散式は、名古屋市における不良グループとの長年の闘いに一区切りをつけるものだ。しかし、解散はスタートラインであり、真の勝負は更生と社会復帰にある。歴史的に暴走族や不良集団の解散後も再非行を招いた例は少なくない。愛知県警をはじめ行政、地域、家族、企業、NPOが一体となって更生支援の体制を強化し、元メンバーが〈犯罪者〉ではなく〈一員〉として社会に受け入れられる仕組みをつくることが急務だ。
名古屋の街が再び安心して歩ける場となるためには、解散式で誓われた「迷惑をかけない」という言葉を地域全体で支え、見守り、成長を助ける共助のネットワークを築く必要がある。これこそが、平成から令和に続く名古屋の治安と市民生活を守るための新たな挑戦である。
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