ホルムズ海峡封鎖「日本のエネルギー安定供給への影響」「緊張感を持ち注視」 林官房長官
2025/06/23 (月曜日)
イラン、イスラエルからの邦人退避については「今後も必要に応じて陸路での退避を検討していきたい」と説明。空路での退避の可能性も探るとし、中東全域の在留邦人の安全確保に万全を期すと強調した。
2025年6月23日、外務省はイラン国内およびイスラエルからの在留邦人退避について「今後も必要に応じて陸路での退避を検討していきたい」と発表しました。また、空路による退避の可能性も引き続き探るとし、中東全域の在留邦人の安全確保に万全を期すと強調しました。(出典:産経新聞2025年6月23日)
2025年6月中旬、イスラエルとイランの間でミサイル応酬や空爆が激化し、民間人犠牲や誤爆の報告が相次ぎました。特にイランでは地下核施設への攻撃を理由にイスラエルや米軍が先制攻撃を行ったとされ、報復としてミサイル攻撃が全国規模で行われる恐れが指摘されています。これに伴い、在イラン・在イスラエル邦人はテロや紛争巻き込みのリスクが急増し、外務省は情報収集態勢を強化しつつ、退避計画の見直しを迫られました。
過去の退避事例を踏まえ、外務省は有事の際に「緊急事態安全確保業務」を発動し、在留邦人リストの更新、各国大使館・領事館との連絡網強化、民間航空会社や周辺国政府との協議を行ってきました。今回もまず在留届ベースで危険度評価を実施し、陸路ではトルコ、イラク、ヨルダン経由のルートを想定。空路ではドバイ、アンマン、カイロなど第三国を経由するチャーター機運航の可能性を探っています。
1990年のイラクによるクウェート侵攻では、外務省は陸路でトルコ経由の退避ルートを確保し約6,000人の邦人を一時帰国させました。2006年のレバノン・イスラエル紛争ではチャーター機で約2,500人を退避。2011年のエジプト・チュニジアの政変では陸路・空路併用で延べ20,000人超を帰国させた実績があります。これらと比較し、今回は戦闘地域の広域化やテロ・誤爆リスクの増大が特筆され、より多様なルート確保が求められます。
想定ルートはイラン北西部からトルコ東部へ抜ける陸路(タブリーズ→エルズルム)や、南部からイラク北部(アフワズ→アルビール)を経てトルコ・ヨルダンへ至るルートです。しかし、イラク領内も治安不安が継続しており、民兵勢力やIS残党による襲撃リスクが高い点が課題です。さらに、周辺国側でのビザ・通行許可取得やコロナ禍を踏まえた健康証明の整備も必要で、陸路一辺倒では退避成功が難しい状況です。
空港閉鎖やミサイル攻撃の危険性を避けるため、外務省はドバイ国際空港やアンマンのクイーンアリア空港を経由地として想定。チャーター機手配に向けた民間航空会社との協議や、受け入れ国の空港での査証延長・特別対応を打診しています。また、現地在留邦人が一時待避できる大使館・領事館施設の拡充、ホテル手配、医療支援体制の確保も急務です。
日本の外務省設置法や災害対策基本法では、有事における邦人保護の責務が規定されています。今回の退避では、自衛隊海外派遣法や特措法の運用も議論され、自衛隊艦艇による洋上退避や航空自衛隊C-2輸送機の活用も検討対象となっています。また、民間企業や日系NGOとの協力で、在留邦人同士の情報共有アプリやSNSグループの整備、緊急物資の手配と輸送支援が官民連携のキーポイントです。
米国は2025年6月中に在外公館保護のためMC-130輸送機による退避支援を実施。欧州連合も周辺国での一時避難受け入れを表明しています。しかし、米欧は自国民優先の姿勢が強く、日本人は二次的優先度となる可能性が指摘されます。そのため、日本政府は独自ルートを確保しつつ、同盟国との調整で「日米共同退避訓練」など事前協力枠組みの構築が求められます。
中東情勢の長期化・複雑化が予想される中、外務省は常に最新情報を在留邦人に提供し、退避計画を段階的に実行する準備を進める必要があります。陸路・空路の併用、官民連携、自衛隊輸送能力の活用、同盟国との事前協力枠組み構築など、多層的アプローチで邦人保護を徹底すべきです。今後も国際情勢の変化を注視しながら、迅速かつ柔軟な対応体制を維持することが、日本の安全保障外交の重要課題となるでしょう。
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