外国人に「当分の間」認められた生活保護、問われるも…政府は詳細把握せず「見直さない」
2025/06/17 (火曜日)
「外国人は年金などの納付率が低く、国会でも国民健康保険未払いが追及された。生活保護を受ける外国人の子供たちへの支援など、教育現場も大変だ」
1950年に制定された生活保護法は、受給対象を「生活に困窮する『国民』」に限る。だが、54年に厚生省社会局長(当時)の名前で出された「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」という通知を根拠に、あくまで国の政策(いわば行政サービス)として生活に困
「外国人は年金などの納付率が低く、国会でも国民健康保険未払いが追及された。生活保護を受ける外国人の子供たちへの支援など、教育現場も大変だ」──こうした指摘が参議院予算委員会で飛び交う一方、1950年制定の生活保護法は給付対象を「生活に困窮する国民」に限ります。しかし1954年5月8日付の厚生省社会局長通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」を根拠に、在留資格を有する外国人への給付が各自治体で運用されてきました。本稿では、国保・年金の外国人納付状況、生活保護法制の歴史的経緯、最高裁判決の影響、教育現場の課題を総合的に解説します。
厚生労働省の2024年度調査によれば、外国人世帯の国民健康保険料収納率は約63%と、日本人を含む全体平均の約93%を大きく下回ります。また、20~59歳の在留外国人の国民年金納付率も70%前後にとどまり、日本人(約80%)に比して低調です。自治体側は多言語リーフレットの配布や相談窓口の設置で周知を図るものの、手続きの複雑さや日本語運用能力の壁が依然として大きな障害となっています。
生活保護法(1950年公布)は第1条で給付対象を「生活に困窮する国民」に限ると定めています。しかし同法施行後の1954年5月8日、厚生省社会局長が全国の都道府県知事宛に発出した通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」により、「外国人にも一般国民と同様の要件で保護を行う」運用が開始されました。この通知は法令ではないものの、実務上は各自治体に従うべき指針とされてきました。
2014年に最高裁が審理した永住外国人の生活保護申請訴訟では、「外国人は生活保護法上の受給権者ではないものの、行政通達に基づき事実上の給付対象となり得る」と判断し、1954年通知に基づく自治体の運用を司法的に追認しました。これにより、全国的な運用差の是正も進んでいます。
生活保護世帯の子どもには、給食費・修学旅行積立金の免除など「教育扶助」が適用されますが、外国人子弟の場合はさらに日本語指導や生活相談支援が必要となり、教員やスクールカウンセラーの負担が増大しています。特に離島や過疎地では多文化支援員が不足し、ICT教材や多言語連絡網の整備など、自治体教育委員会の対応が急務です。
2025年5月の政府答弁書では「1954年通知は見直す状況にない」と明言しつつ、「生活に困窮する外国人は一定数存在するため継続適用する」としました。一方、自民党内では「行政通達による運用では法的安定性に欠く」として、生活保護法に外国人給付要件を明文化する改正案が検討されています。秋の臨時国会での法案提出を目指す動きが進行中です。
外国人の公的保険未納問題と生活保護適用の慣行的運用は、制度の公平性と地域負担感を巡る重大課題です。1954年通知の法的位置づけを明確化し、司法判断を踏まえた安定的運用と、多文化共生社会を支える包括的な福祉・教育施策の再構築が求められています。
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