日米豪印 都市鉱山の活用で連携へ

日米豪印 都市鉱山の活用で連携へ

2025/07/02 (水曜日)

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日米豪印、「都市鉱山」活用など技術支援で連携へ…レアアース供給網で中国依存を低減

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日米豪印(クアッド)、「都市鉱山」活用など技術支援で連携へ──レアアース供給網からの中国依存低減に向けた新戦略

2025年7月2日、日米豪印4カ国外相会合の共同声明で、いわゆる「クアッド」(Quad)のメンバー国がレアアースや希少金属の供給網強化に向け、都市鉱山(都市部の廃電子機器からレアアースを再回収する技術)活用をはじめとする技術支援で連携を深める方針を打ち出した。従来、中国が世界生産の約80%を占めてきたレアアース市場からの脱却を目指し、脱中国依存を具体的に進める初の枠組みとなる 。

1.レアアースの重要性と中国依存の実態

レアアースはハイブリッド車のモーター、風力発電機、スマートフォンのディスプレイや磁石など、ハイテク製品の基盤素材だ。国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、2050年に向けて風力・電気自動車の需要増加に伴い、レアアースの需要は現在の約4倍に拡大する見通しである。しかし世界生産の大半を中国が占め、鉱石から製品への加工技術も中国が主導してきたことから、需給緊張や政治リスクが深刻化している。

2.都市鉱山技術とは何か

都市鉱山とは、使用済み電子機器(スマートフォン、パソコン、希少金属を含む磁石など)を「鉱山」と見立て、再資源化する技術の総称だ。これまで廃棄されていたレアアース含有部材から化学的手法やバイオリーチング(水溶液抽出)などで効率的に回収し、再び精製・加工できる。この技術の商用化に成功すれば、国内資源での自給が可能となり、輸入依存の緩和に大きく寄与する。

3.クアッド「Critical Minerals Initiative」の狙い

4カ国は、先の外相会合で「Quad Critical Minerals Initiative」を共同で立ち上げることで合意した。これにより:

  • 都市鉱山技術の共同研究開発と知的財産共有
  • 稼働済み研究施設やパイロットプラントの相互利用
  • 回収・再生プロセスの国際標準化と安全・環境基準の策定
  • 廃電子機器バリューチェーン整備に向けた投資・インセンティブ設計

などを進めることで、レアアースの安定供給とコスト競争力の確保をめざす。

4.各国の強みと取り組み事例

  • 日本:素材加工・精製技術に強み。これまで国産レアアース鉱山が枯渇したため、廃石膏や産業副産物からの抽出パイロットプラントを稼働中。
  • 米国:テキサス州でバイオリーチング技術の実証実験を実施。Lynasとの連携で都市鉱山由来原料の初期製品化に成功。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
  • オーストラリア:電子廃棄物リサイクル企業と産学協同プロジェクトを展開。世界最大級の「都市鉱山」プラント建設を計画。
  • インド:国内大手エレクトロニクスメーカーと連携し、ムンバイ近郊で廃携帯電話からの都市鉱山回収実証実験を進める。

5.既存サプライチェーンの多元化策

都市鉱山の本格導入と並行し、鉱山開発が可能な第三国(アフリカ、中南米)の資源開発支援も強化する。例えば、

  • 米国国際開発金融公社(DFC)や日本の国際協力機構(JICA)による鉱山開発・環境管理支援
  • オーストラリアの輸出金融機関による現地精製プラントへの融資
  • インドの国営企業が運営する鉱山開発プロジェクトへの参加

といった施策を通じて、原料の採掘から加工まで多国間で連携し、中国依存度を大幅に低減する。

6.持続可能性と環境・社会ガバナンス(ESG)の視点

都市鉱山回収や新規鉱山開発は環境負荷が大きいため、クアッドは共同で厳格なESG基準を策定する。特に、電子廃棄物輸送のトレーサビリティ確保、公害防止措置、労働者保護などを盛り込み、持続可能な資源循環モデルを構築することで、国際社会の信頼を得る狙いがある。

7.今後の展望と課題

都市鉱山技術の実用化には、回収率向上、コスト削減、法規制整備など克服すべき技術的・制度的課題が残る。また、廃棄物を巡る国境を越えた規制や輸出入手続きの煩雑さも障壁となる。しかし、クアッドの4カ国が協力して標準化とガバナンス強化を進めれば、日本をはじめとする先進国がレアアースのサプライチェーンで主導権を取り戻し、中国依存から脱却する契機となる。

まとめ

日米豪印による「Quad Critical Minerals Initiative」は、単なる声明を超え、都市鉱山技術の共同開発と第三国資源開発支援を通じて、レアアースの安定供給とサプライチェーン多元化を追求する初の多国間枠組みである。中国が長年占めてきた供給網を解体し、新たな「資源の民主化」を実現するため、4カ国が技術・資金・ガバナンスの面で緊密に連携することが不可欠だ。環境・社会への責任を果たしつつ、先端産業の成長を支える持続可能な鉱山モデルを確立できれば、インド太平洋地域の経済安全保障は飛躍的に強化されるだろう。

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