フランスで北斎展開幕 1か月先まで前売り券完売 欧州人の心をつかむ「生命」への執念
2025/07/06 (日曜日)
国際ニュース
ナントの北斎展では、長野県小布施町の美術館、「北斎館」所蔵の浮世絵、肉筆画など約160点以上が展示されている。多くは海外初公開。「水と波」が中心テーマで、北斎が80代で手掛けた天井絵「男浪(おなみ)図」など、川や滝、波を描いた作品に焦点をあてた。米欧で「Big Wave(大浪)」として知られる「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」もある。
歴史博物館のベルトラン・ギエ館長は「北斎の名前は知らなくても、『
フランス・ナント歴史博物館で開催中「小布施 北斎の傑作展」──海外初公開多数、生命を描く「水と波」の世界
フランス西部ナント歴史博物館(ブルターニュ大公城)では2025年6月28日から9月7日まで、長野県小布施町の北斎館所蔵の浮世絵・肉筆画など約160点以上を集めた大規模展「小布施 北斎の傑作展」を開催中です。約160点のうち多くが海外初公開となり、開催初日の前売り券は開幕1か月先まで完売するなど注目を集めています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
展覧会は北斎晩年の代表作を揃え、小布施で描かれた肉筆画や肉筆美人画、版画の数々を一堂に展示。中でも天井画「男浪(おなみ)図」は北斎80代にして手掛けた豪快な大浪モチーフの肉筆作品で、屋外の祭屋台に描かれた原寸天井絵を間近で鑑賞できる貴重な機会です。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
本展の中心テーマは「水と波」。川・滝・海など、多彩な水の表情を表現し続けた北斎の創意が感じられます。代表作『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏(Big Wave)』も出品され、日本国外では「Big Wave」の名で愛される大浪の迫力を間近に体験できます。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
ナント歴史博物館のベルトラン・ギエ館長は「北斎の名前は知られなくとも、その画面から伝わる生命への執念が観客の心をつかむ」と評しています。欧州では19世紀末のジャポニスム以降、浮世絵が広く愛好されてきましたが、本展では改めて「水」と「生命」を巡る北斎の芸術的実験に注目が集まっています。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
北斎館は2026年に創立50周年を迎えるのを前に、小布施の静かな町から世界へ北斎の魅力を発信する国際交流事業を強化。本展では北斎館が作品の保管・修復・輸送を全面協力し、小布施町との連携が深化しています。帰国後の2026年秋には小布施で凱旋展も予定され、日仏文化交流の機会がさらに広がります。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
過去にも欧米各地で北斎展は開催されましたが、いずれも版画中心の編成が多く、小布施館蔵の肉筆画や天井画原寸大展示は本展が初の試みです。また、2001年の英国ヴィクトリア&アルバート博物館展では約100点の版画が公開されましたが、本展の160点超という規模は欧州最大級です。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
約160点の絵画や版画を欧州へ移送するには、厳密な温湿度管理、緩衝梱包、通関手続きが不可欠でした。特に肉筆画は顔料や紙地がデリケートで、北斎館の修復担当者が現地で保存状態をモニタリング。美術館同士の連携体制の構築が成功の鍵となりました。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
葛飾北斎(1760–1849)は晩年、天明の飢饉後の小布施で画業に没頭。天井絵や肉筆画、版本挿絵などを制作し、当地の豪農・高井鴻山に招かれて創作の自由を得ました。本展では小布施で生まれた代表作を通じ、北斎が「江戸の画壇」を離れ自然と向き合った豊穣の時期を解説しています。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
「小布施 北斎の傑作展」は9月7日まで開催。すでに公式サイトではチケット完売が続き、日本からもリピーターの渡航が相次いでいます。帰国後の凱旋展ではナント版とは異なる構成や新資料展示も予定され、北斎研究の新たな知見が期待されます。各地での関連講演やワークショップも充実し、小布施町を含む日仏共同プロジェクトとして長期的な文化交流を促進します。:contentReference[oaicite:8]{index=8}
フランス・ナントでの北斎展は、多くが海外初公開の北斎館所蔵作品約160点を通じて、北斎晩年の創造力と「水と波」への執念を欧州に鮮烈に示す機会となりました。展覧会は19世紀のジャポニスムに始まる浮世絵人気の新たなステージを開くとともに、小布施町と北斎館が国内外の美術館と築いた協力体制の成果でもあります。帰国後の凱旋展を含め、日本美術の国際発信がさらに加速することが期待されるでしょう。
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