マスク氏が新党「アメリカ党」設立と投稿 トランプ氏の減税法を批判、対抗姿勢示す
2025/07/06 (日曜日)
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、マスク氏は新党設立の書類手続きを5日時点で終えていない。別の投稿では来年から活動すると言及した。来年11月の中間選挙を視野に活動を展開する可能性がある。
トランプ氏の強い影響力のもとで、共和党が巨額赤字を積み増す内容の減税・歳出法案を賛成多数で可決した。マスク氏は、同法が「無駄や汚職で国を破綻させる」として、「われわれは民主主義ではなく、一党体制のも
マスク氏が「アメリカ党」設立を宣言──トランプ氏の大型減税法案批判から浮かぶ新党攻勢の狙い
2025年7月5日、実業家イーロン・マスク氏はSNS「X」でフォロワーを対象としたアンケート結果を受け、「自由を取り戻すために新党『アメリカ党』を結成した」と投稿しました。これに先立ち、マスク氏はドナルド・トランプ米大統領肝いりの大型減税・歳出法案を「財政破綻を招く」と厳しく批判しており、トランプ氏への公然たる対抗姿勢を鮮明にしています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
マスク氏は2024年の大統領選挙で巨額を投じてトランプ氏を支援し、その後「政府効率化省(DOGE)」の事実上のトップとして政権に参画しました。しかし、DOGEが財政赤字削減の名の下で予算・人員を大幅にカットすると、マスク氏個人やその率いる企業への反発が強まりました。その最たるものが、7月4日に成立した大型減税・歳出法案です。この法案は財政赤字を2.5兆ドルにまで拡大させる恐れがあるとマスク氏は指摘し、政府効率化の努力を一挙に無にすると断じました。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
マスク氏は7月4日未明、Xで「二大政党制から独立したいか」とのアンケートを実施し、約120万件の回答のうち65%が賛成を示しました。これを受けて同5日に「アメリカ党」設立を宣言。マスク氏自身は「無駄遣いや汚職が国を破産させることについて、私たちは民主主義ではなく一党制に生きている」と強調し、共和・民主両党に依存しない新たな選択肢の創出を訴えています。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
米国政治は、歴史的に民主党・共和党の二大政党が支配的地位を保っており、新党が躍進するのは極めて困難です。1912年にセオドア・ルーズベルトが結成した進歩党(通称ブルームース党)ですら、大統領選で27%の票を獲得し二大政党を上回ったものの、その後短期間で勢力を失いました。新党が国政レベルで持続的に地歩を築くには、州内での登録要件、選挙資金規制、勝者総取り型選挙区制といった数々の障壁を乗り越える必要があります。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
歴史上、第三政党は時として既存二党を揺さぶりました。1912年の進歩党、1968年のジョージ・ウォレス率いるアメリカ独立党、1992年と1996年にロス・ペローが結成した改革党などが例に挙げられます。いずれも大統領選で一定の票を獲得し、勝者総取り制の中で勝負の行方に影響を与えましたが、選挙後の組織維持と議席獲得は困難を極め、長期的な政党基盤の確立には至りませんでした。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
トランプ政権が「大きく美しい法案」と称賛するこの大型減税・歳出法案は、個人・法人減税に加え電気自動車向け補助金の継続も盛り込まれています。しかし、財政赤字を拡大し債務残高を悪化させるとの懸念から、マスク氏は「国が破産する」と断じました。さらに自身の企業であるテスラへの補助金削減も視野に入っており、政策的利害の衝突が対立を決定的にした面もあります。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
マスク氏は新党を通じ、2026年中間選挙で「上院2~3議席、下院8~10議席」を獲得し、重要法案での決定票として機能する狙いを示しています。億万長者としての潤沢な資金を投じ、トランプ氏を支持する共和党議員の落選を仕掛ける可能性も示唆しており、二大政党の勢力バランスに揺さぶりをかける構えです。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
ビジネス界のリーダーが政治に直接介入する例は欧州でも見られ、イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相やブラジルのジャイール・ボルソナーロ元大統領などが起業家出身でした。ただし、長期政権維持や国民からの信頼を得るには、企業運営と政党運営の方法論が大きく異なる点が課題となります。マスク氏の場合も、SNS上のアンケートで基盤づくりを図る手法が有効かは未知数です。
ニューヨーク・タイムズは「億万長者の新たな政治影響力を試す挑戦的な動き」と報じ、主流メディアや専門家からは「現実離れ」「泡沫政党に終わる」との懐疑論が根強くあります。一方で、従来の二大政党に不満を抱く有権者からは「既成政党を揺さぶる役割を期待する声」も上がっており、マスク氏の動きが今後どのように受け止められるか注目されます。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
イーロン・マスク氏による新党「アメリカ党」設立の宣言は、トランプ政権肝いりの大型減税・歳出法案をめぐる政策対立を契機とした政治的挑戦です。2024年大統領選で一度は政権内部に迎えられたマスク氏が、わずか数カ月で決裂し公然と対抗姿勢を示した背景には、財政赤字悪化への懸念や電気自動車補助金の削減など、自身のビジネス利害と政策の交錯があります。
しかし、米国二大政党制における第三政党の歴史は厳しく、1912年のブルームース党や1990年代の改革党のように一定のインパクトを残しながらも長期的な勢力化に失敗してきました。マスク氏の「アメリカ党」も同様の苦戦が予想される中、彼が掲げる「自由の取り戻し」が単なるスローガンに終わるのか、それとも少数党ながら決定票を握る“キープレイヤー”として二大政党を翻弄するのか、米政界と有権者は注視を続けるでしょう。
今後、マスク氏が実際にどこまで資金を投入し、地方選挙や上下両院選挙で候補者擁立に成功するかが最大の焦点となります。仮に新党が議席を獲得すれば、米議会の勢力構造に微妙な影響を与え、今後の減税・歳出を巡る攻防に“異端の一票”が加わる可能性があります。さらに、二大政党の支持率低下や無党派層の増加を背景に、第三政党への関心が高まれば、米国政治における議会制民主主義の在り方そのものを揺るがす新たな潮流が生まれるかもしれません。
結論として、マスク氏の「アメリカ党」設立はビジネスリーダーによる政治介入のさらに新しい局面を示すものです。政策的にも組織的にも未成熟な新党が今後どこまで有効なプレーヤーになり得るのかは未知数ですが、政策論争を深化させる引き金としての意義は小さくありません。二大政党の既存枠組みを揺さぶり続けてきたマスク氏の動きは、2026年中間選挙、さらには2028年大統領選挙への布石ともなり得るでしょう。その成否が米国政治の「三極化」構造を生むのか、「泡沫政党の消失」に終わるのか――注目は尽きません。
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