ポーランドが不法移民の流入を防ぐ入国審査を開始 トゥスク政権、国民の支持取り戻す構え
2025/07/07 (月曜日)
国際ニュース
ドイツとの国境に52カ所、リトアニアとの国境に13カ所の検問所を設置した。審査は8月5日まで実施するが延長の可能性もある。常態化すれば、欧州連合(EU)加盟国を中心に入国審査撤廃を定めたシェンゲン協定が適切に機能しなくなる可能性がある。
ウクライナ侵攻を続けるロシアと同盟関係にあるベラルーシはリトアニアへの不法移民密航を支援しているとされ、ポーランド当局はリトアニア経由の不法入国を阻止したい考え
ポーランド、ドイツ・リトアニア国境に臨時検問所を再設置 ─ シェンゲン協定の揺らぎとベラルーシの「移民ミサイル」
ポーランド政府は2025年7月3日、ドイツ国境に52カ所、リトアニア国境に13カ所の臨時検問所を再設置し、旅客・車両の通行を管理すると発表した。審査期間は当初8月5日までだが、延長の可能性もある。これが常態化すると、EU加盟国間の入国審査撤廃を定めたシェンゲン協定が機能不全に陥る懸念が高まっている。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、北大西洋条約機構(NATO)東方拡大の議論が続く中、「ベラルーシがウクライナ侵攻を支援する代償として、不法移民をリトアニア経由で送り込む『移民ミサイル』政策を展開している」と非難。不法移民の流入阻止を最優先に掲げ、EU域内で唯一国境審査を一時的に再導入する判断を下した。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
シェンゲン協定は、加盟国間の国境検問を原則撤廃し、域内移動の自由を保障するものだ。しかし、協定第23条・第25条は「治安維持のための一時的再導入」を認めており、ポーランドはこれを根拠に「最大90日間」の国境管理を実施している。
①フランス-イタリア国境(2015年)
難民危機を受けてフランスが難民の「中継地」となる南部国境を一時管理。ギリシャ危機と連動し、テロ警戒も口実に約6ヶ月間検問を強化した。
②スウェーデン-デンマーク国境(2016年)
欧州移民危機の影響でスウェーデンが鉄道・道路に検問所を設置し、難民登録と身分確認を徹底。約2年をかけて徐々に緩和した。
ルカシェンコ政権はロシアと連携し、ウクライナ侵攻への欧州の懸念をそらすため、ベラルーシ南部からリトアニア国境へ数千人の「パイロット移民」を送出したとの報道もある。移民らは偽造書類や闇ルートで拉致同然に国境を越え、「バルト三国から西欧へ」の通り道となっている。
臨時検問所ではパスポート・ビザのほか、旅程や経済的裏付けの確認が行われる。だが、要員不足や設備の老朽化、長い待ち時間による通勤・物流への影響が懸念され、市民生活やEU内部市場の円滑な流通が阻害されかねない。
ポーランド政府は「治安が安定すれば検問所を撤廃する」としているが、ベラルーシ情勢やロシアのウクライナ侵攻の長期化次第では、90日以上の延長を含む恒常化リスクが高い。EU内では「加盟国間の信頼」回復に向けた対話と、域外国境管理の強化が喫緊の課題となる。
ドイツ・リトアニア国境への臨時検問所再設置は、EUの移動自由原則に大きな緊張を与えている。ポーランドはベラルーシを通じた不法移民流入の「人質外交」に対抗するためのやむを得ない措置と主張する一方、シェンゲン協定の信頼基盤を揺るがす事態が常態化すれば、域内統合全体が後退しかねない。今後はUE(欧州連合)内での連帯と情報共有、そしてベラルーシ・ロシアが関与する「移民戦略」への包括的対策が、EUの安定と安全を維持する鍵となる。
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