天心が判定勝利 世界初挑戦へ前進
2025/06/08 (日曜日)
【ボクシング】那須川天心が10回判定勝利、11月世界初挑戦へ大前進「課題の多さが収穫」
6月8日、東京・有明コロシアムで行われたプロボクシング・バンタム級10回戦において、WBA世界バンタム級1位の那須川天心が同級6位ビクトル・サンティリャンとのノンタイトルマッチで3-0の判定勝利を収めた。2023年4月にボクシング転向後7戦目となる世界ランカー対決を制し、今年11月に首都圏で予定される世界タイトル初挑戦への切符を確実に手中にした。
スコアはジャッジ3者ともに那須川が99-91および100-90のフルマークを獲得し、圧倒的な内容で勝利を飾った。序盤から右ジャブを軸としたプレッシャーで主導権を握り、接近戦でも鮮やかなカウンターを放った。特に6回には相手の盲点を突く“カエルパンチ”とも称される強烈なアッパーをヒットさせるなど、多彩な攻撃を披露した。
1回、互いにサウスポー同士の右ジャブで探り合いを見せる中、那須川が軽快なフットワークからジャブを的確にヒット。2~4回は左ボディフックや左ストレートで間合いを詰めつつ、偶発的なバッティングで左眉上をカットされた場面もあったが、身をそらして打ち返す強靭さを見せた。5回にはボディへの連打で相手にクリンチを強いるなど、着実にポイントを積み重ねた。
6回、大胆に深く沈み込んだ直後にジャンプして放った左アッパーがクリーンヒットし、観客を沸かせた。7回以降も終始攻勢を緩めず、左ストレートやカウンターフックでサンティリャンを圧倒。終盤10回は最後まで倒しに行く姿勢を崩さず、フィニッシュを狙い続けた。
試合後のインタビューで那須川は「勝ちは嬉しいが、倒したかった。幅を見せられる場面もあった」と自己分析。世界前哨戦を通じて感じた課題の多さを収穫と表現し、「次で大きなことを言おうとは考えていない。一歩一歩をしっかり踏みしめたい」と冷静に展望を語った。
千葉・松戸出身の那須川は5歳で空手を始め、小学5年でジュニア世界大会優勝。2014年7月にプロキックボクサーデビューし、RIZINやRISEで無敗記録を重ね、連勝数は40戦以上。パンチと蹴りの技術を融合させた独自スタイルで“神童”の異名を取り、キック界を席巻した。
2023年4月に帝拳ジムからプロボクシング転向して以来、これまでに7戦6勝1分無敗の戦績を残し、24年10月にはWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座を獲得。世界ランカーとの対戦を通じて実戦経験を積み、鍛錬を続けてきた。
日本人バンタム級の世界王者は辰吉丈一郎や山中慎介、井上尚弥(スーパー・バンタム級)など数多くの名選手が輩出され、「黄金のバンタム級」と称される伝統の階級。那須川の挑戦は異種格闘技出身者による快挙として注目を集め、格闘技ファンのみならず日本ボクシング界全体に新たな活力をもたらす。
10回判定勝利で世界初挑戦へ大きく前進した那須川天心。課題を口にしつつも、本番のリングで倒しに行く姿勢を崩さない精神力と技術力は、11月の世界戦に向けて大きな期待を呼び起こす。今後も那須川がどのように「那須川天心という生き方」を見せるか、世界王座奪取の瞬間をファンは固唾をのんで見守るだろう。
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