iPhoneにマイナ搭載可 下旬にも
2025/06/06 (金曜日)
iPhoneにマイナンバーカード機能が搭載可能に 今月下旬にも 政府とアップル社が最終調整
マイナンバーカードの機能が今月下旬にもiPhoneに搭載可能となる方向で、政府とアップル社が最終調整を行っていることがわかりました。
マイナンバーカードは現在、一部の機能がグーグルの「アンドロイド」端末には搭載され、オンラインの本人確認などで利用することが可能です。
去年5月、岸田前総理とアップル社のティム・クックCEOが電話で会談し、マイナンバーカード機能をiPhoneに搭載することで合意していました。
複数の関係者によりますと、今月下旬にも搭載可能となる方向で最終調整が行われているということです。
アップル社は当時、「iPhoneの身分証明書機能をアメリカ以外で展開するのは日本が初めて」と発表していました。
マイナンバーカードの機能が、これまで一部のAndroid端末で利用可能でしたが、2025年6月、AppleのiPhoneにも対応する方向で最終調整が行われていることが報じられました。昨年5月、当時の岸田文雄首相とアップル社ティム・クックCEOの電話会談で合意に至り、日本はiPhoneにマイナンバーカード機能を搭載する初めての国になる見通しです。iPhoneへの対応開始は今月下旬を予定しており、オンライン本人確認や行政サービスの利便性が一層高まることが期待されています。本稿では、マイナンバーカードの背景・歴史、スマートフォン対応の経緯、政府とAppleの交渉過程、技術的仕組み、メリットと課題について詳しく解説します。
マイナンバーカードは、2015年(平成27年)に導入された日本の社会保障・税・災害対策の共通番号制度(マイナンバー制度)に基づく公的個人認証ICカードです。個人に一意の12桁の番号を付与し、行政手続きや社会保障、税の情報を効率的に管理・提供することを目的としました。住民票のあるすべての国民に割り当てられ、カードの取得は任意ですが、2016年以降、マイナンバーカードの普及促進策として各種サービスへの活用が進められてきました。地方自治体の窓口での申請、オンライン申請、スマートフォンを使った申請手続きなど、カード取得ルートも徐々に多様化しました。
導入当初から、マイナンバーカードは住民票・印鑑登録証明書のコンビニ交付、確定申告の電子申請(e-Tax)、健康保険証としての利用、運転免許証との一体化(マイナ保険証)、年金情報の確認など、多岐にわたる機能追加が検討されてきました。これにより、全国民の行政サービス利用をスマート化・効率化し、行政コストの削減やペーパーレス化を進める狙いがありました。また、災害時には被災者情報の迅速把握に役立つことも期待されていました。
マイナンバーカードはこれまで、専用ICカードリーダーを用いたPCでの認証や、コンビニの証明サービス利用が主流でした。しかし、市民の利便性向上を図るため、スマートフォンでのマイナンバーカード読み取りおよびオンライン認証機能の実装が早くから課題とされてきました。2020年3月には、総務省と内閣官房を中心に「マイナンバーカードのスマートフォン対応実現プロジェクト」が立ち上がり、対応アプリの開発や仕様策定が進められました。
その結果、2021年末頃からはAndroid OSの一部端末でマイナンバーカードをNFC(近距離無線通信)で読み取り、コンビニ交付サービスやe-Taxの電子署名などが利用可能になりました。具体的には、Android 9以降を搭載したスマートフォンに対応し、政府提供の「マイナポータルAP」アプリをインストールすることで、マイナンバーカードのICチップに保存された本人認証用電子証明書をスマートフォンで読み取り、オンライン手続きを行えるようになりました。
しかし、Android端末のうち対応端末は限定的で、通信事業者や機種によりNFCチップの仕様が異なることから、すべてのAndroidスマートフォンで利用できるわけではありませんでした。また、iPhoneはiOSの仕様上、Android向けのマイナポータルAPが動作しないため、iPhone利用者は外部のICカードリーダーとPCを組み合わせるか、コンビニ端末を使うしか選択肢がありませんでした。結果として、スマートフォンでのマイナンバーカード利用はAndroidユーザー限定の状況が続いていました。
スマートフォン全体の国内シェアを見ると、AndroidとiOS(iPhone)の利用率はほぼ半数ずつを占めており、特に都市部を中心にiPhoneユーザーが多く存在します。2024年時点では、iPhoneを含むiOS端末のシェアは約45~50%とされ、マイナンバーカードのスマホ対応においてiPhone非対応は多くの利用者にとって大きな不便要因となっていました。
行政手続きのオンライン化、ワンストップサービス化を目指す政府にとって、iPhone対応は待ったなしの課題でした。特に、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」機能の利用拡大を図るためには、iPhone対応が不可避でした。医療機関での保険証提示がスムーズに行えるようになれば、窓口負担の軽減、感染症流行時の非接触化など、医療現場や患者にとって多くのメリットがあります。
2024年5月、岸田文雄首相は訪問先の米国からティム・クック氏(Apple CEO)と電話会談を行い、マイナンバーカード機能をiPhoneに搭載することで合意しました。この会談にはデジタル庁や総務省、外務省が事前に調整を行い、通商問題やプライバシー保護、技術的要件などについて議論が行われたとされています。
会談の主な論点は以下の通りです。
会談の後、総務省とデジタル庁、経済産業省などの官庁横断チームがApple側との技術調整に入り、2024年下半期からiOS向けのマイナポータルAP開発に着手しました。AppleはiOSのセキュリティフレームワークに合わせた認証モジュールを開発し、政府はマイナンバー総合フレームワークの改修を行うことで、両者の技術的要求を擦り合わせてきました。
iPhoneへのマイナンバーカード機能実装は、主に以下の技術的要素で構成されます。
これらの仕組みが連係することで、iPhoneユーザーはカードを直接持ち歩く必要がなく、外出先でもアプリを通じて安全に行政サービスを利用できるようになります。本人確認としては、暗証番号入力(4桁または6桁)や生体認証を併用するため、不正利用のリスクを抑制できます。
iPhoneでマイナンバーカード機能を利用可能にするメリットは多岐にわたります。
iPhone対応には多くのメリットがありますが、以下の課題やリスクも指摘されています。
日本のマイナンバー制度に近い制度としては、韓国の「住民登録番号」や北欧諸国の「電子ID」などがあります。特にエストニアは「e-Residency」プログラムを通じ、スマートフォンと連動した電子IDを国際的に展開し、電子政府サービスの先進国として知られています。Estoniaの電子IDはEU圏を超えてスタートアップ企業や投資家に活用されており、日本もiPhone対応を契機に同様の「電子IDプラットフォーム」構築を目指す動きが活発化しています。
また、欧州連合(EU)は2021年に「eIDAS規則」を改定し、電子IDの相互認証を進めています。これにより、加盟国間での電子身分証明書の相互利用が可能となり、EU内の国境を超えたデジタルサービス利用が促進されています。日本もこれに倣い、国内だけでなく将来的にはASEAN諸国やアジア太平洋地域との電子ID連携を視野に入れた国際的枠組みを議論する必要があります。
iPhoneへのマイナンバーカード機能実装が実現すれば、日本は世界初のiOS端末対応国となり、デジタル行政の先進事例として注目されるでしょう。これにより行政手続きのオンライン化が一段と加速し、地方自治体でも自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むことが期待されます。
特に地方では、高齢化による窓口負担が深刻化しており、iPhone対応により遠隔地に住む高齢者でもオンライン申請や医療保険証の提示が容易になります。これに伴い、地方自治体では窓口業務の省力化や市民サービス向上のためのIT人材育成が急務となります。また、IT人材不足を補うため、民間ITベンダーとの連携やデジタル人材の地方移住促進策も喫緊の課題となるでしょう。
一方、iPhone対応をきっかけにマイナンバーカードの普及率はさらに加速すると見られます。カード取得者が増えれば、健康保険証や年金手帳のデジタル利用、住民票・戸籍謄本のオンライン請求など、利便性の高い行政サービスを幅広く展開できるようになります。結果として、行政コストの削減やペーパーレスによる環境負荷の低減、地方創生への好循環が生まれる可能性があります。
ただし、情報セキュリティやプライバシー保護、機種依存問題、デジタルデバイド(IT格差)など課題も多く、官民連携のもとで総合的な対策を講じることが求められます。政府は内閣官房IT総合戦略室やデジタル庁を中心に、自治体や金融機関、医療機関、教育機関など多様なステークホルダーと協力し、iPhone対応を含むマイナンバー制度の改革・拡充を進める必要があります。
アップルiPhoneにマイナンバーカード機能を搭載することで、マイナンバー制度は大きく前進し、行政手続きのオンライン化が一層進むことが期待されます。Android端末向けの対応に続き、iPhone対応が実現すれば、国内のスマートフォンユーザーの約半数がマイナンバーカードを活用できるようになります。これにより、コンビニ交付やe-Tax、マイナ保険証の利用がさらに手軽になり、ITリテラシー向上と行政コスト削減につながるでしょう。
しかし、セキュリティやプライバシー保護、デジタルデバイド、自治体システムの標準化など、課題は依然として残ります。政府はiPhone対応に伴う制度改正や技術基盤の整備を進めるだけでなく、地域や世代間でのITリテラシー格差を縮小し、誰もが安心してデジタル行政を利用できる環境を整えることが不可欠です。今後も官民連携を強化し、マイナンバー制度を「国民の利便性向上と行政効率化の切り札」として発展させる取り組みが求められます。
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