「レンタル家族」不倫謝罪も同席
2025/07/02 (水曜日)
「レンタル家族」。それは親族を巡る都合の良い仮想現実を作り上げるサービスだ。人生の糧とするか、成長の妨げにしてしまうのかは、その人次第である――。
「レンタル家族」とは、俳優やモデル、一般スタッフが依頼者の「家族役」を演じる出張サービスのことだ。結婚式やイベントの他、長年疎遠になった親族との“再会”シーン、さらには葬儀の場面まで、“都合のいい家族”を仮想的に用意することで、依頼者の心の穴を埋めたり、社会的体裁を整えたりすることを目的としている(出典:Yahoo!ニュース)。
サービス業者はホームページやSNSで「誕生日に会いに来てほしい祖母役」「会社の上司役」など多彩なプランを用意。依頼者は要望に応じた役柄や設定を細かく指定し、当日は指定場所に“家族”が訪問。演出内容には台本が用意され、演技経験者が感情を込めた振る舞い、会話、写真撮影などを行う。
こうした背景から、“見せかけの家族”を確保して社会的孤立感を和らげたり、「常識的な体裁」を整えたりする需要が生まれた。
擬似家族サービスの原点は、中国や韓国の「代行家族」。中国では2010年代から「陪伴」(ペイバン)と呼ばれる高齢者向けに孫役を派遣するサービスが登場。韓国では「ペット代行送迎」「演技結婚式」など、役者による“家族演出”がビジネス化された。
日本でも2000年代後半から少人数のベンチャー企業が参入し、現在では数十社がネットで自社プランを販売している。
レンタル家族サービスには、以下のようなポジティブな側面と問題点がある:
意義 | 問題点 |
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ある30代女性は、親の離婚で家族行事を避ける生活が続いたが、妹の結婚式で「母親役」を依頼。「笑顔で祝福してくれる姿を見て、涙が止まらなかった」という。一方、高齢の男性は「葬儀で息子役」を利用したが、後に心に虚しさを感じ、実際の家族との関係修復を決意したという。
これらは一例に過ぎず、心理的効果には個人差が大きい。サービス依存が進むと「仮想家族」以外の人間関係を築く意欲を喪失する恐れも指摘されている。
「レンタル家族」は、現代日本が抱える孤独・疎外感を映し出す鏡でもある。サービスは一時的に心の渇きを癒す手段となり得るが、虚構的な安心に依存し続けることは新たな孤立を生むリスクも孕む。大切なのは、「仮想」の絆を人生の糧としつつ、自身の人間関係を再構築する手がかりとして活用することだ。今後は業界の規制整備と利用者自らの自己理解が進むことで、レンタル家族が真に個人の成長を促すツールへと進化する可能性がある。一方、社会全体としては、孤独を抱える人々を支援する福祉制度や地域コミュニティの活性化が急務であり、「レンタル家族」を超える本物のつながりを育む環境整備が求められている。
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